ひ弱な彼が最強のボディガードになって帰ってきました。

やと

第1話 出会い

高校一年の夏、蒸し暑さがうざったい暑苦しさを感じながら電車に乗って学校に向かう。


そんな時悲劇が起きる。


満員電車で人がぎっしり、そんな中いつも通り吊り革につかまってもう片方の手でスマホを見ていると後ろからお尻を触られる感覚がした。恐怖のあまり声が出ずに何もできなかったただ涙が出て震えて早くこの時間が過ぎるのを待っていると隣りのから声が聞こえた。


「ちょっとなにやってるんですか?」


声のする方を見ると同い年くらいの男の子が後ろの痴漢野郎の手をがっしり掴んで止めてくれていた


「何って私は何も」


「言い逃れはできませんよ、さっきこの子を触るの見てたし写真も撮りました」


「え?」


痴漢野郎はよく見ると中年の男性で男の子がスマホを見せていてそこには私を触ろうとしている瞬間が写っていた、それを見て恐怖に怯えている。


実は男の子も少し震えていた。


「違う私は」


それでも逃れようとするおじさんを男の子は逃がさず段々と周りの人達の視線も集まり他の人も声をかけてくれる。


「そこまで証拠あるのに逃げれないぞ」


「大丈夫?」


「はい、なんとか」


スーツを着た女の人にも心配してもらい安心した


「次の駅で降りましょうか」


「はい」


おじさんは大人しくなった。


「貴方も降りましょう」


「はい」




次の駅で三人で降りて駅長室に行き一通り話を聞いてくれ男の子は証拠の写真を提出して部屋を出た


「ありがとうございました」


「いえ、それじゃあ」


私は若干電車に乗るのが怖くなったが学校へ行かないといけない、そんな考えが頭を巡っていた時に母からラインが入った。


「さくら、電話で気いたけど大丈夫?」


「なんとか」


「学校行ける?」


「行きたいけど、電車で行くのはちょっと怖いかも」


「今どこ?」


私は駅名を言った。


「じゃあ今から車で人向かわせるから駅降りて駅前で待ってて」


「分かった」


こんな時でも家族は来てはくれない。


男の子の名前聞き忘れた、でも駅員さんに見せた学生証が何となく私の持っている学生証と似ていたのもあるし制服も似ていたのでもしかしたら同じ学校なのかもしれない。そんな期待を持って学校に向かう。




少し時間が経って家の使用人が車で来てくれた。


「さくら様大丈夫でしたか?」


「うん」


「さくら様に手を出した奴とは既に他の人と話をしていますのでさくら様はご安心下さい」


「分かった。お母さん達は?」


「お仕事です」


「そっか」


家の親は何よりも仕事が大切で今までの学校行事に参加した事はないそれどころか三者面談にも家の使用人を向かわせるくらいだった。父と母とはもう暫く面と向かって話しをしてないまあ両親の仕事のお陰で何不自由なく生活が出来ているのは事実なのだが何故だか寂しく感じてしまう。




「もう着くから此処で降ろして」


「かしこまりました、ではお帰りの際も此処でいいでしょうか?」


「うん。よろしくお願いいたします」


「いってらっしゃいませ」


「行ってきます」


今時車で通学させてもらうなんて恥ずかしい先生まだいいとして友達に見られたりなんてしたらなんて言われるか


学校に着くと正門に先生が立っていた。登校時間はもう既に過ぎているのでこの時間に此処を通るのは私しかいない。


「おお安藤おはよう、大丈夫か?」


「はい、なんか巻き込まれちゃって」


「連絡来た時は驚いたぞ」


「まあ電車の怖さを知った良い経験になりました」


「そうか、後で皆にも注意喚起しとくから」


「はい」


「にしてもよく学校これたな」


「まあ学生ですから」


「無理はするなよ」


「分かりました」




教室に入ると授業が始まっていた。


静かに自分の席に座りそのまま授業を受けた。


今でも痴漢の事を思い出すと寒気がする、そんな不安定な状態でも時間は進んで行く。だがいつまでも気にすると他に気が回らなくなってしまうのでなんとか他の事を考えて授業が終わる。


気付いたらもうお昼になってお弁当を出したら友達が話しかけてきた。


「いつも思うけどそのお弁当誰が作ってるの?」


「お母さんだよ」


この子は高倉舞いつも一緒にいる友達だ


「そうなんだ、私もお母さんに作ってほしいよ」


「舞はお手伝いさんだっけ」


「うん、なんか愛があった方がいいんだけど一生懸命作ってくれるし文句は言えないけど」


まあそう言う私もお母さんにお弁当作ってくれたのは一回だけだし私も家の掃除だったりしてくれるお手伝いさんに作ってもらってるけど今の冷え切った家の事情なんか人に話せないだってそんな事をしたら親に迷惑がかかる。


「皆そうなのかな?」


「そうじゃない?だって此処の学校金持ちが通う所だし」


「そっか」


親が作ってくれない方が多いなんておかしな学校だけど周りを見たらパンや学食で済ませる子もいるみたいだ


「まあどうせ金持ち学校に通ってるならF4くらいいてほしいけどね」


「そんな漫画みたいなイケメンいないよ」


「でもドラマやったし未来のイケメン俳優がいるかもしれない」


「現実みなよ」


「それを言うな」


「でもそんな事言ってるって彼氏にばれたら大変でしょ?」


「まあなんか言われたら夢くらい見させろって言い返してやる」


「ふふ」


思わず笑ってしまった。天性の明るさがあるのが舞のいい所だ


「そう言ば痴漢大丈夫だった?」


「まあ、なんとか」


「明日から一緒に行こうか?」


「大丈夫だよ」


「そう?どうせなら一緒に学校休んで何処か旅行でも行く?」


「それは舞がさぼりたいだけでしょ?」


「ばれたか」


「大丈夫だよ、明日もちゃんと学校に行くから」


「それならいいけど、こんな時にさくらにも彼氏いればいいけどね。誰かいないの?」


「好きな人は今はいないかな」


「ほしくないの?」


「ほしいけど、焦るほどじゃないかな」


「なんかそう言う心の余裕良いな」


「そう?」


「うん、なんだか大人って感じ」


「舞は入学早々に彼氏作ったからね」


「まあ華の高校生活に彩りがないと嫌じゃん」


「そういうもの?」


「そういうもんです」


「そっか、颯太くんだっけ?今はどうなの?」


「どうもないよ喧嘩しちゃって、今日は喋ってない」


「喧嘩したの?」


「うん」


「原因は?」


「颯太が他の女の子と一緒にいたのを写真で美香から送られて来た」


美香も友達なのだがいたずらにそんな写真を送ってくる人じゃない


「浮気?」


「そうなのかもしれないし本人に聞いてもはぐらかされて昨日電話で我慢できなくなっちゃってぶちぎれ」


「あらら、そりゃ災難だったね。でも別れはしないんだ」


「うん、まだ理由は言えないけどちゃんと話すって言われて」


「大変なんだね」


「本当だよ」


男の子の話で思い出したけど助けてくれた男の子この学校じゃないのかな、ふとそんな事を思い出したので舞に聞いてみる事にした、舞まら男の友達もいるし何か知ってるかもしれない。


「そう言えばさ今日痴漢された時に助けてくれた男の子がいたんだ」


「そうなの?」


「うん」


「どんな子?」


「同じくらいの顔つきで制服も似てて生徒手帳も同じ感じだった」


「もしかしてこの学校だったりして」


「なんだか急いでたっぽくて名前聞けなかったしお礼くらい言いたかったな」


そういうと舞は少し黙って私をじっと見つめてくる


「なに?」


「その目は恋をしている乙女の目だ」


「何言ってんの馬鹿じゃないの」


そう言うと舞は楽しそうに笑顔になってしまった。こうなってはもう止まらない。


「じゃあ恋する乙女の手伝いでもしますか」


「いいって、それに舞は颯太君の事どうにかしなよ」


「いいの、さくら彼氏できた事ないし私が恋のキューピットになる」


「はー」


「そうと決まったら情報を集めます」


そう言って何処かに行ってしまった


「そんなんじゃないんだけどな」


一言言っても足早に消えてしまった舞に届くことはない。




午後の授業が始める時には舞は教室に戻って来てはいたけど後ろの席なのを利用してずっとスマホを弄っていた。


そうして授業も6限まで終わり帰りの時間に担任の先生である高橋先生から全員に一枚のプリントが配れた


「再来週から三者面談始まるから各自親と日にちと時間確認するように。駄目なら言ってくれこっちで組みなおすから」


「はーい」


「それじゃ皆お疲れ、寄り道すんなよ。それから安藤は職員室に来て」


「分かりました」




言われた通りに職員室に行ってドアを開いた


「失礼します、一年四組の安藤です。高橋先生いらしゃいますか?」


そう言うと忙しそうに書類を見ていた高橋先生がこっちを見た


「おう、ちょっと待って」


高橋先生は私と反対側に行って女の先生と一緒に私の所に来た


「じゃあちょっとついてきて」


「分かりました」


少し歩いて職員室から何個か離れた部屋に通される、そこで三人で椅子に座り高橋先生が口を開く。


「じゃあ始めようか」


「安藤さん」


「はい?」


「そんなに緊張しなくていいのよ、悪い事聞きこうとしてるんじゃないから」


この先生は隣りの三組の担任をしている田代先生だ。


悪い事なんてした覚えはないけどもしかしたら何かしたんじゃないかって少し緊張してるのがばれてしまった。


「安心しろ痴漢の事だ」


「ああ、なにか進展あったんですか?」


「まあ親御さんにも連絡したらもう解決してたよ」


「そうなんですか」


まあ車で運転してくれた使用人さんが話はつけてるって言ってたし分かっていた事実ではある


「なんか、話によると安藤の親が社長と会長してるADグループの持ってる会社の社員だったらしく直ぐにそれがばれて対処したって言ってた」


「それってクビって事ですか?」


「それならまだいいけどね」


会話に田代先生も入ってきた


「どういう事ですか?」


「そりゃ、あの天下のADグループの人だからクビで済むわけはなかろう」


「そうね、最悪裁判で刑務所に入れられて社会復帰は難しいと思うわ」


「そんな大事に」


「お前がそんな他人ずらでどうするんだ」


「だって他でどんどん事が進んでいくのはもう慣れてますし」


「あのな」


高橋先生が呆れた様子で言葉を言いうのを田代先生が止めた


「まあまあ本人がこう言うのもありますし」


「田代先生こう言うは」


「分かってます、でも安藤さん聞いて」


「はい」


「自分の意図しない所で事が進むのは世の中沢山あります、でもその中に自分と言う存在がいる事は忘れてはいけませんよ。それに貴方がされた事は極めて下劣で許されていいものではありませんだから自分が被害者と言う自覚を持ちなさい。そう言う事に鈍感になってはいけませんよそうなってしまったら自分が負っている心の傷に鈍感になってしまう」


「分かりました」


「じゃあこれから少し時間がある時にお話しでもしましょう」


「え?」


「此処に田代先生を呼んだのは女性同士じゃないと分からない事もあるって事で呼んだんだ」


「いや、私はそこまで気にしてないし」


「それでもいいの、めんどくさいならこれでいいけどさっきも言った通り安藤さんの心の何処かで眠っているかもしれない傷があるかもしれないから。今回の事件だけじゃくて他の事も聞かせて。ほら、私のこれからの教師生活の勉強としてもね」


「それならいいですけど」


「それじゃ、今日はこの辺にしとくか」


私達は部屋から出た。


「じゃあ何かあったら安藤さんから言ってくれても構わないからね」


「はい、ありがとうございます」


「はい、気を付けて帰ってね。さようなら」


「さようなら」


私は教室に荷物を取りに行く途中で田代先生に感謝をしていた。


今時忙しく一人一人に目をかけるのも大変だろうになんだか親切な先生だったなとなんだか優しさを具現化したような先生だった。




教室に入ると、舞が待っていた。


「さくらどこ行ってたの?」


「ちょっと高橋先生と話してて」


「そうなの?」


「それより分かったかも」


「何が?」


「さくらを助けてくれた男の子」


「本当?」


「うん、もし同じ学校ならの話しだけど」


「どんな子?」


「河上心太って子で一年五組だって」


「そうなんだ」


「残念ながら写真とかなくてライン聞こうとしたら皆知らないって言ってて凄く静かであまり印象に残るようなタイプって感じじゃないみたい、でも」


「でも?」


「凄く足が速いらしい」


「そんなに溜めて言う事じゃないでしょ」


「それが五十メートル六秒ジャストらしいよ」


「まじ?」


「まじ」


「陸上部とか?」


「いや、部活には入ってなかったみたいだし学校終わると直ぐに帰っちゃうらしくてクラスの誰もよくは知らないみたい」


「ミステリアスな人なんだね」


「うん、詳しく分からなくてごめんね」


「いや、いいよそんな」


「なんだか悔しい」


「でも顔は覚えてるし同じ学校ならお昼休みとか教室に覗けば分かるよう」


「それが出来ないのよ」


「なんで?」


「河上君海外に留学しに行くって今日の朝に一言言ってそのまま帰っちゃったらしいのよ」


「そうなの?何処に行ったの?」


「アメリカだって」


「へー」


「随分他人事ね」


「だって助けてくれた男の子かどうかも分からないし」


「もしかしたらって可能性だってあるでしょ?私の恋のキューピット作戦が」


「まだそんな事言ってたの」


「もう帰るよ」


「うん」


「舞いる?」


教室のドアから男の人の声がしたので見てみると颯太君だった、さっきまであんなに楽しそうにしてたのに一気に機嫌が悪くなる


「なに?」


「これ」


「なにこれ」


颯太君が手渡したのは丁寧に梱包されて中に見てみると少しお高めなハンドクリームだった。


「ほら今日付き合って三ヶ月だから」


「一緒にいた女の人は誰?」


「姉ちゃんだよ」


「そうなの?」


「うん」


「言ってくれれば良かったのに」


「家にで会った時に直接会わせたかったんだよ」


段々と幸せムードになってきたのでここいらで退散しようとした


「じゃあ後はお二人で」


「ああ、安藤さんもなんだか巻き込んじゃってごめんね」


「いやいや私は話し気いただけだから、仲直りできてよかったね」


「うん」


「じゃあまた明日」


「じゃあね」




私は行きに運転してくれた使用人さんに連絡して学校と少し離れた所に迎えに来てくれるように言った


駅に行く途中で段々人が多くなると苦しくなって男の人が擦れ違うだけで動悸がするようになって苦しいそして息が早くなった所で動けなくなってしまった。


そして倒れる瞬間に誰かに支えられながら近くのベンチに座った。


「大丈夫?」


「はい」


「これ、まだ口付けてないから飲んで」


「ありがとうございます」


水を渡されて少し落ち着いた。


「うん。顔色も戻ったね、じゃあ俺急いでるからまたね」


ぼんやりとした中今の男の人は朝助けてくれた男の子に少しだけ似ていた。




それから直ぐに使用人さんに連絡して来てもらうようにしてもらった。


「さくら様、大丈夫ですか?」


「うん、でも外ではあんまりでかい声で様って言わないで」


「申し訳ありません、では病院に行きましょう」


「大丈夫だよ」


「いけません、もし何かあれば大事になる前に対処しませんと」


「分かったよ」


「では近くに車を停めていますので。歩けますか?」


「うん」




そうして病院に向かった。


でも外傷はなく朝の出来事がフラッシュバックしてのストレスだった。


入院など言われたが学校に行きたいので断ったらこんな状態でだめだと言われ数週間自宅で安静にする事になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ひ弱な彼が最強のボディガードになって帰ってきました。 やと @yato225

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画