第3話 15才の儀式。
あれから月日は流れ…僕は15歳になっていた。
以前、考えを巡らせていた【商業化計画】は見事に身を結んだ。
色々な大臣を上手く説得と理解してもらった上で計画を進め、両親や兄にバレないように口止めまでして……。
ついに……他国との【貿易】を実現した!
それに伴い、技術者の派遣や生産職の派遣なども行いオープンな取り引きをした。
他国との交渉で互いに利になることから世界各国からのラスタード帝国への関心が広まっていた。
大臣らの活躍は評価され、【名誉勲章】を授かるくらいには皇帝も評価しているらしい。
まぁ、大臣達は僕をチラ見しながらあぶら汗をかいていたけれど…元に手伝ってくれたのは事実…
(もらえる物はしっかりもらっとくと良い!)
結果、僕の顔色を伺う大臣が増えてしまったけど……別にこと
15歳になるとある『特別な儀式』に参加しなくてはいけない。
それは『スキル付与式』と呼ばれ、15歳になった若者がそれぞれにランダムにスキルが一つずつ手にできる特別な日なのだ。
「ノル王子…動かないで!」
「だって…こんな
「ダメですよ。時間が無いのですから…ノル王子の大事な式なのですよ?」
この式によって僕の人生が決まると言っても過言ではないだろう。
何故ならばラスタード帝国は力の絶対信仰を唱い、強者として攻撃的なスキルを引く王族がほとんどだからだ。
血筋なのかたまたまなのか……攻撃型のスキルを手にする事が決まっていたとしても何が来るかで皇帝としての地位が確定してしまうのが嫌だ。
「分かっているさ……やりたくないだけ。」
「しっかりなさって!ノル王子が皇帝となればあなた様が望む政策をし、民を導いてくださればこの国は安泰です。」
ルシアは本当に僕にプレッシャーを掛けるのがお上手なんだから……マジで胃がキリキリして来た…
「早く部屋に戻りたい……」
「いや、まだ部屋ですよ!?」
(これは一大事な予感ですね……)
普段は紺色のベストと白のシャツと紺色のズボンで普段着として愛用しているのだが、今回のは全身が赤い衣装でメチャクチャ目立つ。
「今日だけの辛抱ですよ!」
「はぁ……分かったよ。」
それから支度は順調に進み、着慣れない上着が赤、ズボンが黒の洒落た感じに仕上がっていた。
最初の全身赤は形式状では上着は赤でズボンは何色でも良い事を知っていたから阻止できて……本当に助かった。
(記憶力に感謝……)
「全身赤もお似合いでしたよ?」
「陽気な雰囲気が嫌なの!まだ、黒があるだけで気持ちがホッとする……」
ルシアと会話しているとドアの方からノックする音がすると兵士の声が高らかに聞こえて来た。
「ノル様!皇帝ザリオン・ラスタード様がお待ちです!急ぎ皇帝の間へお越しください。」
「分かった。知らせてくれてありがとう!」
「はっ!失礼出します。」
「ふぅ……では、行ってくる!」
「はい、ノル様。」
僕はひとり皇帝であり、父…ザリオンが待つ神聖な場所……『皇帝の間』に歩みを進めた。
父と会うのは赤子の時以来だから……まぁ、初めてって事にしておこう…それよりも、皇帝ザリオンを噂に聞けば残虐や無慈悲と言ったイメージをよく聞くけど、果たして息子にもそんな感じなのだろうか……少し緊張してきた。
「ノル様…」
「ノル様だ…」
皆が僕に
(こう言う視線は嫌いなんだよ…気持ち悪い。)
「はぁ……」
僕はため息を吐くと気付けば『皇帝の間』の扉の前に着いていた。
扉の前には二人の門兵が槍をクロスさせて構えていた。
僕が近寄るとクロスを解いて槍を真っ直ぐに構え直すと大きな声で到着を知らせた。
「ノル・ラスタード第二王子殿下のご到着です!」
見事なまでに息があった二人のシンクロぶりに僕は心の中で称賛を送った。
扉がゆっくりと開くと中には数十人の重役が僕の到着を待っていた。
その中でも異彩を放つ存在感が一人いた。
「ふぅ……」
小さく息を吐くと気合いを入れ直し、一歩ずつ前に進み……皇帝ザリオンの膝下まで来ると僕は父に頭を垂れて片膝を下ろした。
「ノル・ラスタード。只今、到着しました。」
「よく来たな…ノルよ。大義である。」
隣に居る美人で着飾った女性は母様かな?その隣で睨みを利かせているのは間違いない…兄だ。
「はっ!この様な場を設けて頂いた事に感謝を。」
「ふははっ!立派になったな!」
(この人……笑うんだ!)って思っていると奥の方からヨボヨボのお爺さんが近づいて来た。
「この者はスキル付与士のグラドだ。15歳になったお前にスキルを確定させる存在だ。」
「なるほど…よろしくお願いします。」
これからスキルが分かり、全てが変わる。
「ノル王子よ…こちらの魔水晶に手を…かざして目を閉じてくだされ……。」
そこには紫色のゴツゴツした水晶が置かれていて僕は言われるがままにその魔水晶に手のひらを乗せると目を閉じた。
「では、これよりスキル付与の儀を執り行う。」
辺りに光が溢れ出すと皇帝の間にいる全てに同じ光に包まれてしまった。
そして目を開くと真っ白な空間に僕は迷い込んでいたのだった。
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