第1話 使用例

『くくく……その程度の攻撃で我の体に傷をつけられるとでも?緩いわっ!!」

「っっっ!!!」


 魔王が笑いながら右手を振るうと竜巻が発生。受け身に失敗し、無防備な体が強く地面に打ち付けられた。

 衝撃で聖剣が手から滑り落ち、高い音を響かせる。

 すでに仲間たちは満身創痍。自分もさっきの一撃で骨の何本かを持っていかれた。実力差が桁違いだ!

 

『くくく……今回の勇者パーティもそこまで強くはないな。それならば勇者、まずは貴様から殺してやろう』


 魔王は空中から魔剣を取り出すと、うつ伏せで倒れている俺の首筋に刃を当てた。

 

『死ね』


 冷たい一言と同時に魔剣が俺の首を貫く——はずだった。


「よっと。少し邪魔させてもらうぞ?」

『な、なんだ貴様はっ!!』


 うつ伏せの状態から視線を少し動かす。よく見ると、魔王の魔剣はギリギリのところで鉄の斧に止められていた。

 そして、魔王の一撃を止めた者を俺は知っていた。


「あんたは……最初の村にいた木こり……?」

『き、木こりだとっ!?』


 魔王が動揺した。魔剣が少しづつ押されていく中、木こりは話し始める。


「俺の仕事は木を切る事だ。だが、闇雲に切り倒しているわけじゃない。元気な若い木からは狙いを外す。まだ若いやつには夢があるからな。俺の代わりに森を守ってもらうんだよ」

『貴様っ!!その体のどこからこんな力が出てくるのだっ——』


 木こりのおじさんが斧を振るい、魔剣が宙を舞う。隙が生まれた魔王の体には斬撃の痕が三つ。目で追うことすら不可能。

 一瞬でズタボロになった魔王が四つん這いの姿勢になる。


「勇者、お前はまだ若い。勇者の使命は魔王を倒す事じゃない。未来の笑顔を守る事だ。そこは間違えるなよ?魔王は少し長生きしすぎだ。そろそろ俺が伐採してやるよ」

『馬鹿な……馬鹿なぁぁっっ!!!』


 齢数千年の魔王の首が今、伐採された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る