第49話 ハーフオークは妹とデートする②

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「ニイヤン、どこ連れて行ってくれるねん?」

「ディーのお父さんの友達を訪ねて、お父さんの子どもの頃の話を聞こうと思う。」

「ええやん!それ、ええやん!」

「痛いって!」

嬉しそうなディーは俺の背中を全力でバンバンと叩いた。


まず、最初はこの街に来た初日、爺の大盾に気付いた鍛冶屋ルドヴィークだ。


ルドヴィークは遠い目をしてから、目じりを下げて話し出した。

「ドラホミールとはずっとライバルでな。

鼻たれの頃はかけっこや力比べで勝負していたよ。

ガキの頃はどっちがガキ大将になるかだな。


鍛冶屋の弟子になってからは、どっちが先に免許皆伝になるか勝負して、

それからは毎年、どっちがいい武器作るか勝負したよ。

ああ、もちろん、飲み比べも何度も何度もしたぞ。」


ルドヴィークが楽しそうに語り続けると、

ディーはへ~とか、ほ~とか言いながら聞いていた。


「勝負ばっかりやな。どっちが勝ったんや?」

「勝ったり負けたりだ。それがライバルってもんだろ?」


ルドヴィークはニヤリと笑うと声を潜めた。

「実はな、儂の嫁はドラホミールに惚れていたんだ。嫁には内緒だぞ?」

「ほほ~。」

「だから、アマンダ(※ディーの母)がドラホミールと知り合ってくれたから、

儂は結婚できたんだ。」


「ワイのお母はんのおかげやな。」

「そうだ。ドラホミールの奴、アマンダにすっかり惚れ込んで、

結婚したいってバルトロメジの爺に伝えたら、

爺のやつ、「ドワーフ以外と結婚するなら、儂を倒してみろ」って喧嘩しやがって。」


「どっちが勝ったん?」

「バルトロメジの爺は今でもドワーフ最強だぞ?

負けたドラホミールに言ってやったんだ。もう一遍、挑戦しろって。

結婚に本気なら、2度目なら、バルトロメジの爺は手を抜いてくれるだろうからな。

そんなことはドラホミールも分かっていたんだろうけど、

意地っ張りだからワザと負けてもらうのに我慢できなかったんだな。

誰にも行き先を告げずに家出しやがった。

くそっ。なんで、俺にも教えてくれなかったんだ!

・・・ホントに、頑固なヤツ。」

ルドヴィークは後悔していることを窺わせた。


そして、首を2度振って、また話し出した。

「アマンダのことは知っているのか?」

「そういや、昔のことはあんまり聞いてへんわ。」

「アマンダはな、王都の商会の護衛だったんだ。

護衛でこの街に来た時に、最高の武器が欲しくて、

最高の鍛冶屋っていうことでバルトロメジの爺に会いに来たんだ。

でも、爺がドラホミールに丸投げして、知り合ったんだぜ。」


「そうやったんや!お母はん、護衛をやってたんか!知らんかったわ!」

「そうか。出会いは最悪だったぞ!

アマンダはドラホミールが下手くそだって思っているし、

ドラホミールは女だから弱いだろって思っていて、

お互い、口には出さなかったけど、態度で思いっきり出していたからな。

だけど最高の剣が欲しいって、いっぱい喧嘩腰で話し合っていたら、

仲良くなっていたんだよ。がはは!


あとは、ガキのころだけど、ドラホミールの奴、・・・・・・・・」


「ルドヴィークさん、おーきにな。」

「おう。儂も久しぶりにドラホミールのこと思い出して嬉しかったわ。」


その後も、ドラホミールの友達3人から、楽しい話を聞かせてもらった。

ディーはどの話もフンフンって楽しそうに聞いていた。

「ニイヤン、おーきにな!

お父はん、お母はんの知らん話や、知ってる話でも違う角度からやったから

面白かったわ。」


「そうか、この街に来てよかったな。」

「ホンマやあ。でも、ニイヤンと出会わへんかったら、来んかったと思うわ。

ホンマにおーきにな。」

「いや、俺の方こそ、ディーに助けてもらっているよ。

・・・ディーデレック、これをもらって欲しい。」

「なんや、ニイヤン。君の瞳に乾杯かいな!」

ディーは照れくささを誤魔化そうとしていた。


「ディーデレックの燃える瞳と同じ色のルビーのネックレスだ。

運動能力アップの特性付だよ。」

ディーは瞳をキラキラさせてルビーのネックレスを見つめていた。

「ニイ・・・リューク、着けてくれる?」

うおぉぉぉぉぉぉぉ~!


ディーがボケもツッコミも封印して、色っぽさ全開だあぁぁぁぁぁぁぁ!


しゃがんで丁寧にネックレスを着けた。

着け終わると、ディーが抱き着いて来た~!

そして、

「リューク、好き。」

囁かれた~!

うおぉぉぉぉぉぉぉ~!


ここは変身だ!この場面でこそ、難聴系主人公に変身だぁ~!

ディーの背中をポンポンと叩いた。


「腹減ったから、お婆ちゃんの晩御飯、食べに帰ろうか。」

ディーは大人しく体を離してくれた。だけど・・・




「死ねや、ボケ~!」

「ぎゃ~!」

顔を真っ赤に染めたディーのキックが俺のケツにさく裂して、悶絶してしまった・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「トリクシー、どこか行きたい所ある?」

「私、オープンカフェでお茶がしたいわ。」


この街唯一のおしゃれなオープンカフェに向かった。

「男女が二人っきりで出かけることをデートと言って、

デートするのは恋人同士って聞いたわ。私と兄さんはついに恋人になったのね!」

「・・・デートかもしれないけど、恋人じゃないよ、ゴメンね。

ディアナ、アレッタ、ディーともデートしただろう?」


「ハーレムという、男が複数の女を恋人や妻にするケースがあるって知ってるわ。

まさしく、私たちのことじゃない!」

「あわわ!いや、見かけは似てるんだけど、そうじゃない!

だって、俺たちは兄と妹じゃないか!」

「むうぅ!もう、ハーレムでもいいのに・・・」


「あっ、あのお店だよね!」

「そう!たくさん恋人達がいるね!楽しみだわ!」


紅茶とケーキが目の前に用意されると、トリクシーのマシンガントークが始まった!

「この街は楽しいわね。ドワーフのみんなは優しいし。

毎日、たくさんお酒を飲むことだけはちょっとって思うけど。

でも、本当にみんな優しいわ。

それにしてもドワーフの男の人の顔ってみんな同じに見えるの。

兄さんはどう?同じに見えるよね?

少し残念なのは、肌の色が浅黒い人がいないことね。

見つけたら絶対に友達になろうと探しているんだけど。

お友達と言ったら、ドワーフの女の子の友達が出来たのよ。

・・・・・・・・・・・・・」


口を挟む暇がなかったので、うんうんうんうんと肯き続けた。

「というワケで、本当に兄さんと出会ってよかったわ。

兄さん、ありがとう。」

〆られたのは日が暮れそうな時だった。


「こちらこそだよ。スタンピードの時も、シャティヨンの時も、

ベアトリクスがいなかったら、死んでいたかもしれない。

ありがとう。お礼にこれを受け取って欲しい。」


差し出したのはサファイアのネックレス。

「ベアトリクスの瞳、碧にするか、緑にするか悩んで、

ワンドの宝石と合わせることにしたよ。

サファイアのネックレス、受け取って欲しい。」


「ありがとう、兄さん!こんなに素敵なプレゼント、初めてよ。

私の初めては兄さんがたくさんくれるね。」

その表現は誤解されるから、止めてもらえません?


「着けてくれますか?」

トリクシーは長い髪をかき揚げて、うなじを見せてくれた!

初めて見るトリクシーのうなじにドキドキが止まらな~い!

トリクシーはぶら下がったサファイアを見て微笑んでいた。

「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ。」

怖いんだけど!


「・・・さあ、帰ろうか。」

「はい、兄さん!」

トリクシーは腕を組んできた!


「腕を組むなら、一番、背が高い私ですよね!」

トリクシーはここにいないディアナ、アレッタ、ディーに

対してマウントを取って来たのだった。

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