第45話 ハーフオークは伝説の武器を手にしながら敗走する

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爺が市役所へ渋々案内してくれた。


この都市には有力者の選挙で選ばれた市長がいるが、

爺はその市長がいるという会議室へ了解を得ないまま、ずかずかと入っていった。


そこでは市長、軍の幹部、ギルド長なんかが、ミスリル・ゴーレムの対策を練っているところだった。

「おう、バルトロメジ、どうした?珍しいな、ここにくるとは・・・それは黒旋風か!」


気安くバルトロメジの爺を迎えた市長だったが、

俺が軽々と黒旋風を持ち運んでいるのを見て、あんぐりと口を開けていた。


市長は爺の古くからの友人で、もちろん黒旋風のことをちゃんと知っていた。

というより、昔、持ち上げようと挑戦して悔し涙を流したらしい。

ふふん!


それから、市の幹部に活を入れられ気を取り直すと、俺たちに状況を教えてくれた。

20日前、突然、ミスリル・ゴーレムが現れ、

坑道に入ってすぐにある鉱石仮置き場を占拠したそうだ。

ここを占拠されるとこれまで採掘した鉱石は勿論取り出せないし、

新しく掘りにも行けないとのことだった。

だから、兵士と冒険者が何度か排除に向かったが、全く相手にならず、

返り討ちにあったそうだ。


20日経って、手持ちの鉱石が無くなった工房がいくつも出てきて、

街はめちゃくちゃ困っているらしい。

で、今は、どうやって鉱石仮置き場から誘導して、ミスリルゴーレムを別の場所に

移すかを検討している所だったが、全くいい案が出ない状況だったらしい。


爺が俺をイヤそうに指さした。

「コイツに、ミスリル・ゴーレムを退治させよう。」

「わかった。行ってこい。」

市長は何の疑念を挟むことなく、二つ返事で了解してくれた。


軽い!軽すぎる!ホントにいいのか?


ゴーレムは感情がないから、いくらでも挑戦していいってことらしい。

「親父、ちょっと待ってくれ。」

冒険者っぽいドワーフが不平の声をあげた。


市長の息子?がクリクリとした目を細めて、俺に詰め寄ってきた。

「お前ら冒険者か?ランクは?」

「F(初心者)だ。」

「Fだと!俺たちC(都市内最高)ランクでもダメだったんだぞ!死にに行くようなもんだ!」


「黙れ。こいつは黒旋風を使いこなしているんだ。ランクなんか関係ないわ。」

爺が市長の息子?の難癖を一蹴してくれた。

「負けても別に問題ないから行ってこい。まあ、気をつけてな。」

市長が全く期待していない言葉を吐きやがった。

ミスリルゴーレムを倒して、もう一度、口をあんぐりさせてやるぜ!



爺の案内で、俺たち『ハーフムーン』は鉱山へ向かった。

なぜだか、市長の息子?がついてきて、ディーに盛んに話しかけていた。

「ねえ、名前はなんていうの?」

「ディーデレックや。」

「オレはスワボミルって言うんだ。市長の息子でこの街最強パーティの一員なんだぜ。」

「へ~、そうなんや。凄いな~(棒読み)」

「ミスリル・ゴーレムは危険だから、オレが守ってやるよ!」

「いや、お爺ちゃんの大盾があるから大丈夫や。」

「がはは!そうだ、ディーデレックは儂の大盾があるから、お前に守ってもらう必要なぞないぞ!」

ディーとスワボミルの間に爺が乱入して、スワボミルとにらみ合っていた。



歩くこと2時間、山の中腹にぽっかりと大きな穴、坑道が開いていた。

坑道の幅は5メートル、高さ2.5メートルくらいだった。


「おい、これじゃ黒旋風を思いっきり振れないじゃないか!」

「そんなこと知らん。だが、ミスリル・ゴーレムを倒せなければ、黒旋風を返してもらう。」

文句を言ったら爺はニヤリと笑った。くそっ。嵌めやがったな!


「リュー兄ィ、どうするの☆」

心配してれくれるディアナに笑顔を見せた。

「黒旋風は俺のモンだ。絶対に返さないから、行くしかないだろ。」


坑道の端に光る魔石が所々に置かれていて、明るさに不足はなかった。

坑道に入ってゆっくりと前に進むと、ひんやりと、しっとりとした空気が体に巻き付いて来た。


向こうに明るい部屋が見え、銀色に輝く人影が見えた。

ミスリル・ゴーレムだ!俺より遥かにデカい!


事前に聞いていたとおり、ミスリル・ゴーレムは左右順番に拳ほどの石を軽く投げてきた!

軽く投げたハズなのに、凄まじいスピードだ!

当たったら酷い目に遭うぞ!


一つ目を間一髪避けて、二つ目は黒旋風を盾にして防いだ。

かなりの衝撃があったが、その石は砕け散った。


「こら、ニイヤン。躱したらワイらが危ないやん!」

後ろにいたディーに叱られてしまった!

必死で避けたのに理不尽じゃない?


「もっと後ろに下がっていろ!」

「いやや!ニイヤンの活躍を近くで見たいんや!」

前門の虎、後門の狼ってこういうことかっ!※違います。


ミスリル・ゴーレムは跪き、石を一つずつ、拾って投げつけてきた。

「避けるぞ!」

また、1つは避けて、1つは黒旋風で防いだが、ミスリル・ゴーレムは次々と石を投げつけてきた!


ミスリル・ゴーレムは1、2で拾って、3、4で投げつけてくる!

くそっ!投げつけるペースが速すぎる。


石は鉱石みたいで、その部屋の中に山積みとなっていて、

絶対にネタ切れになりそうにない。

アカ~ン!


「撤退するぞ!」

そう叫んで、俺は投石を防ぎながら下がっていった。チックショー!


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