第40話 ハーフオークはクーデターに巻き込まれる

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朝日が昇ってきたので、ケイスの村に向かっていると、向こうから慌てた様子の二人がやって来た。


「父ちゃん、母ちゃん!」

ケイスとリィーダが走り出し、黒髪の男と真っ白い髪の女に抱き着いた!両親か!

「リィーダ!無事だったか!ケイスも無事でよかった!」

お父さん、お母さんがリィーダとケイスを抱きしめて、号泣していた。


俺たちはそれを見てリィーダを守りきった満足感と、両親から愛されている羨ましさを感じていた。


両親に簡単に事情を説明すると、めちゃくちゃ感謝されてしまった。

両親は、昨日の夕方、ケイスがいないことに気付いて、こっちへ探しに来ようとしたらしいが、村長に厳しく止められたそうだ。


村へ向かって一緒に戻っていくが、ケイスとリィーダは両親にべったりとくっついて嬉しそうに歩いていた。ディアナはそれを見て、嬉しそうに微笑んだり、羨ましそうにしていた。


10分ほど歩くと、森の中に畑が見えてきて、その向こうに村が見えてきた。

村の広場では、村人たちが集まってざわざわしていた。

大人は30人くらいいるだろうか。


「リィーダは無事だったよ!」

「おおっ、そりゃ、良かったな!」

リィーダが戻って来て、みんなホッとしたようだったのだが、

「な、なぜ、リィーダが戻って来たんだ!」

一人の狷介そうな老人だけが激怒した!


「すいません。俺たち『ハーフムーン』っていうパーティなんですけど、

昨日の晩、ケイスに出会って、事情を聞きました。

それで、シャティヨン様に魔石を差し出して、

生贄を許して欲しいとお願いしてみたのですが、

リィーダだけでなく、この4人の妹たち、魔石、全て寄越せと言われまして、

やむを得ず戦ってしまい、シャティヨン様を殺してしまいました。」


「「「「「おおっ!」」」」

「ま、まさか、シャティヨン様が・・・」

老人は信じられなくて茫然としていたが、その他の人たちは明らかに喜色を浮かべていた。


「これがその証拠の魔石です。」

「おおっ!凄く大きくて、光輝いているぞ!」

「ああ、こんな凄い魔石、見たことないぞ・・・」

「ホントにシャティヨンは死んだんだ!」

「やったぞ!」


喜ぶ村人たちを一顧だにせず、老人は俺を睨み、怒鳴りつけてきた。

「勝手なことをなぜした!儂らはシャティヨン様の元、平和に暮らしていたんだぞ!」


「・・・子どもを生贄にささげてな。」

俺がそう吐き捨てると、周りの村人たちが殺気だって老人を囲んだ。

「そうだ!村長は俺たちの子どもをずっと、生贄にしろっていうのか!」

「アンタは子どもがいないから、奪われる痛みを知らないんだ!」

「アイツが神だったとしても、疫病神じゃないか!」

「あいつが死んで喜んでいないのは村長だけだぞ!」

「もう、こんな村長なら、代わるべきだ!」

「「「「そうだ!そうだ!」」」


突然、クーデターが起こって、村長交代劇を見ることになってしまった!

NO.2の人が新村長になると、改めて俺たちは感謝され、歓迎された。

「君たちのおかげで、もうシャティヨンに子どもを奪われずにすむ!

本当にありがとう!」


村人たちから感謝された俺たち嬉しくなって、

ため込んでいた猪、鹿、ウサギの肉を取り出して、焼肉パーティを開催した。

たくさんの人から、「仇を討ってくれてありがとう。」とか、

「娘を生贄に捧げずにすんだ、ありがとう。」ってお礼を言われたよ。

その間、ディアナはケイスとその家族とずっと楽しそうにしていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


次の日の朝。

リィーダとケイスがディアナに抱き着いて別れを惜しんでいた。

「ディアナ、またここに来てね!」

「うん☆必ず来るよ☆」


リィーダとケイスが後ろに下がると、その両親がリィーダとケイスの肩を抱いて、

家族そろっていい笑顔で、俺たちと視線を交わした。

「ありがとう。リィーダとケイスを助けてくれて。気を付けて旅をしてくれよ。」

「見送ってくれて、ありがとう。それじゃ、行ってきます。」


「あっ、ちょっと・・・」

出発しようとしたら、ディアナがモジモジしていた!珍しい!

ディアナはリィーダとケイスの両親の前におずおずと進んだ。

「あの!少しだけでいいんで、アタシを抱きしめてくれませんか。」

!!!


ケイスとリィーダの両親は優しく肯いた。

「もちろん、いいよ。こっちへおいで。いつでもここに帰っておいで。」

「ディアナ、リィーダとケイスのお姉ちゃん。

ホントにありがとう、元気でね。いつまでも待っているからね。」

「ありがとう・・・」

二人に優しく抱きしめられて、ディアナは嬉し涙をこぼしていた。


ここに来て、本当によかったって思ったよ。

ディアナにもう一つ、故郷が出来たんだから。

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