第21話 元恋人は寝取られる
『ブルースカイ』に加わって、2度、ダンジョンに潜った。
『ブルースカイ』はダンジョンに特化した戦い方をしていて、
2人1組で魔法と剣を組み合わせて、1匹の魔物を確実に仕留めていた。
これまではアルナウトのみ、1人で戦っていて、80階近くでは勝つものの苦戦していたらしい。
その間に1度だけ、ハイオーガと出会わせた。
「今回だけは戦うぞ。ダミアンの敵討ちだ。俺が仕留めるから援護してくれ!」
「「「「「了解!」」」」」
6人とも剣でハイオーガに向かっていった。
アルナウト以外は関節や目、鼻、口を狙って嫌がらせすると、アルナウトはまず、右腕を狙っていた。
1度、2度、3度、同じ個所を攻撃して、その右腕を切り落とした!
凄い!
ハイオーガの食らえば死っていう攻撃を避けながら、全く同じ場所を攻撃するなんて!
慎重に戦ったから、みんなかすり傷一つなかったけど、倒すまで凄く時間がかかってしまった。
やっぱり、ハイオーガは『三ツ星』では無理で、あの時、私が『ブルースカイ』を探しに行ったのが正解だったんだ。
私がずっと抱えていた後悔が少し軽くなった気がした。
『ブルースカイ』として、ダンジョン攻略をやってみて思ったのは、アルナウトが圧倒的に強いこと。そして、その隣で剣を振るうのが新鮮で、凄く楽しいことだった。
『三ツ星』では、私とダミアンが同じ強さで、リュークは少し弱かったから。
また、私はハイオーガに心を折られた直後だったから、強い人が傍にいることで凄く落ち着けたんだ。
また、視野が広くて、戦闘中に私たちに出した指示は常に最善だった。
それだけでなく、彼は私たちをよく見てくれていて、私たちの疲れ具合をちゃんと把握していた。
そう、アルナウトは私たちにとって理想のリーダーで、私たちをひっぱり、守って、そして導いてくれた。
リュークにない自信や野心、ダミアンになかった落ち着き、そして二人を超える強さが私を引き付けてやまなかった。
ダンジョンから戻った次の日は休みで、一日中、リュークと一緒にいた。
リュークはまだ、ダミアンを失った悲しみを抱えたままだった。
でも、私はリュークを慰めるどころか、話しかけることすら出来なくなってしまった。
逆に、そんな私をリュークは何度も慰めてくれた。
「エステルが『ブルースカイ』を連れて来てくれたから、僕は助かったんだよ。
本当にありがとう。」
「ダミアンは守れなかった。だけど、エステルは絶対に守って見せるから。
『ブルースカイ』から戻ってきたとき、ずっと強くなった僕を見せるからね。
だから、ずっと一緒にいようね。」
でも、気付いてしまったんだ。
私は、リュークといると、自分が嫌いになってしまうって。
リュークとダミアンを見捨てて逃げ出した私。
ダミアンが亡くなってしまったのに、リュークが生きていると知って、ほんの一瞬だけど、死んでいて欲しかったと思った私。
これまで、ずっと、ずっと、リュークとダミアンは私を助けてくれたのに!
そのうえ、アルナウトに強く惹かれている私・・・ホントに最低だ、私は・・・
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4度目に『ブルースカイ』とダンジョンに潜って、83階まで突破した。
ずっとアルナウトの隣で戦ってみて、その強さに激しく憧れた。
「エステルが隣で戦ってくれるからメチャクチャ楽になったよ。」
お世辞に決まっているアルナウトの言葉に、胸がときめいていた。
街へ戻ってくると『ブルースカイ』の6人で宴会をすることになって、アルナウトの左隣に座らされた!いつも、その日の恋人が座る席に!
私は遠慮するフリをしたけれど、心の中は嬉しさでいっぱいだった。
みんなで楽しく飲み食いして、みんなに勧められるままワインを飲んで、久しぶりに気分が凄く高揚していた。
私はフワフワしたままアルナウトに優しくエスコートされ、ドキドキしながらアルナウトの部屋に入った。
私と向き合うと、アルナウトは真剣な瞳で私を見つめた。
「エステル。君はもう、リュークの傍へ戻るな。不幸な者どうしが寄り添っていても、不幸になるだけだ。」
私の体はもう、甘い欲望に満たされていた。
アルナウト、早く!
急にアルナウトは欲望に塗れたイヤらしい表情を浮かべ、荒い息を吐いた。
「いや、取り繕うのは止めよう。
俺はお前が欲しい。俺のモノになれ。ずっと俺の傍にいろ!」
アルナウトは私を抱きしめ、ベッドに押し倒すと、荒々しく服をはぎ取り、私の体を貪り始めた。
私は彼にしがみつくと、リュークを裏切った罪悪感が凄まじい快楽に変換され、大きな浅ましい喘ぎ声を上げ続けた。
そんな私をアルナウトは一晩かけて自分のモノに上書きしていった。
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窓の外が明るくなってきて、スズメのチュンチュン鳴く声が聞こえてきた。
「エステル、朝だよ。起きて訓練しよう。」
リュークの優しい声が聞こえた。
「疲れているの。今日くらいはいいでしょう?」
目を閉じたまま甘えるとリュークは困ったような声を出した。
「三人で、毎日しようって決めただろ?エステル、さあ、起きて。」
疲れ切っているのに、リュークったら真面目なんだから!
目を開くと知らない天井が見えた。
酔いはすっかり醒めて、リュークを裏切った罪悪感が恐ろしい勢いで押し寄せてきた。
「リューク!」
どうしよう!
リュークと別れるにしても、こんな、こんな最低のやり方なんて!
どうして、私は後悔することしかしないのだろうか・・・
まだ眠っているアルナウトを残して、私は部屋をそっと抜け出した。
「どこに行くの、エステル。」
玄関へ向かっているとカロリーンに捕まってしまった。
「リュークに、リュークに謝りに行くの!」
「ダメよ。もうエステルは彼に会ってはダメ。
二人とも、不幸せになるだけよ。
それにもう、貴女は『ブルースカイ』のメンバーなのよ。
私たちが絶対に、貴女を守るから、ずっとここにいなさい。」
「でも・・・」
「ハーレムパーティである『ブルースカイ』に加わるってことはどうなることか、
彼も分かっていたハズよ。だから、貴女は何も気にしなくていいの。」
「そんな・・・」
「大丈夫。私たちが絶対に、貴女を守るから。」
混乱しっぱなしの私はその甘い言葉に載せられてしまった。
また、後悔すると分かっているのに・・・」
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