第15話 ディーデレックは助けてくれた人にイキってしもた

ワイの名はディーデレック、15歳になったばっかりの可愛い女子や。

ドワーフのお父はんと、人のお母はんのハーフ。


お父はんはドワーフの国で鍛冶師の家に生まれ、鍛冶師の修行をしている時、お母はんに出会ったんや。

人との結婚を認めてくれないお爺にキレたお父はんはお母はんと駆け落ちして、この領都にやってきて、ワイが生まれたんや。


親子3人で楽しう暮していたんやけど、お母はんは3年前、お産で赤ちゃんと一緒に亡くなってしもうた。

そしたら、お父はんはそれまでの豪快な性格が影を潜めてもた。


お母はんが亡くなって、生活が暗くなってもたんやけど、いいこともあったわ。


1年半前やけど、この領都で生まれた希望の星、『三ツ星』の三人が武器を買いに来たんや。

ダミアン様、エステル様はその美貌と若さと自信でホンマ、光り輝いていたわ。

ダミアン様は長剣を、エステル様はサーベルを欲しがってた。

「もう少ししたら、王都にいけるんだ。だから、三人とも武器を新調しようと思ってね。俺は最高の長剣が欲しい。」

「どんな魔物でも斬れるサーベルはあるかな?」


「がっはっは!小僧のくせに、大きく出よるわ!」

お父はんはこの二人を気に入って、隠していた最高の長剣とサーベルを取り出して来た。

「どや!これなら、お前らの腕次第で何でも斬れるで。」


「だったら、ドラゴンでもたたっ斬れるってことだな!」

「ふふふ。凄くなじむわ。ホントに何でも斬れそう!」

長剣を高く掲げたダミアン様、サーベルを愛おしそうに撫でるエステル様、

眼福、眼福、ご馳走さん!


ワイも冒険者になって、この2人と一緒に戦いたい!

そう思ったワイは、ドワーフに向いている盾とメイスの練習を少しずつ始めたんや。


そんな中、1年少し経って、お父はんは嵌められて借金を背負わされてしもうた。

お金の関係は、お母はんが全部やっていて、お父はんは技術バカやったからな。

ワイは、お母はんが亡くなってもうてから店のこと、手伝うていたんやけど、

店の商品はマフィアの妨害のせいもあって全然、売れへんかった。


差し押さえの日が目の前に来てもうたんで、

お爺からパクって来た大盾、お父はんがワイのために作ってくれた片手メイス、

お父はんの最高傑作のひとつでお母はんの形見でもあるサーベル(曲刀)を知り合いの商会に隠しといた。


そんな中、慣れへん、難しいことを言われ、精神的に参ってもたお父はんは、また運悪く流行り病に罹って亡くなってしもうたんや。


ほんで、お葬式なんかでバタバタしていたら、マフィアどもが情け容赦なく取り立てに来やがったんや。

「金を返すか、奴隷になるか、選べ!」

お父はんが亡くなる前、「武器より、ディーの方が大切やから、いざとなったらどんなモノでも売っぱらうんやで・・・」

って言ってたことを思い出していた。


どないしようかと迷ってた時に現れたんがハーフオークやったんや!

そういえば、ダミアン様とエステル様が武器を買いに来た時、後ろにおったわ、コイツ。お父はんの作った、ぶっちぎりで一番、硬くて重いメイスを買って普通に振り回して喜んどったわ。


そういや、少し前に、ハーフオークがこの街に帰ってきたって聞いてたわ。

ほんで、ダミアン様とエステル様はって食いついたのに、帰ってきてへんって聞いて落ち込んだんやったわ。


「借用書を出せ。娘さん、読んでみろ。」

独りでそんな関係ないこと考えとったら、突然、ハーフオークに話しかけられた!


「は、はい。・・・返済が滞った時は、店と販売品を差し押さえる。(大金貨8枚相当)」

「娘さん、俺たち3人は孤児院出身の冒険者パーティだ。俺たちに雇われないか?

そうしたら、大金貨5枚出してやるけど、どうする?」

ハーフオークはワイを見つめて、優しく笑った。ハーフオークなりに。

ちょっと不気味に思うてもたわ。

言わんとくけど。


「こんな顔の大男だけど、ホントに優しいよ☆」

隣に凄い美少女がおる!うん?ハーフオークの後ろにも美少女が!


いや、そんなんより、

マフィアどもの奴隷となって娼婦となるか、

ハーフオークの性奴隷となるか、究極の選択や!


ハーフオークの傍にいる美少女二人は、ハーフオークを信頼しとるみたい。

お父はんを嵌めたマフィアどもの奴隷よりはマシか・・・

「おーきに。オニイサンたちのお世話になるわ。よろしゅうな。」

マフィアが困ってたみたいで、ざまぁって思うたわ!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


連れて帰られたところは古くて小さい家やけど、綺麗に片付けられとった。

噂で聞いたイカ臭さもないし、かなりほっとしたわ。


みんなでもういっぺん、自己紹介をした後、ハーフオ・・・リュークが訊いてきた。

「悪いけど、ディーには働いてもらう必要がある。どんな仕事に就きたいんだ?」

「冒険者になるつもりやったから、アンタらのパーティに加わってもええで。

でも、アンタらが強ないと別のパーティに移るで。

ちなみに、ワイは盾とメイスが得意なんや、ほんで、回復魔法が使えるで。しょぼいけどな。」


三人には助けてもうたけど、会ったばっかりで信用なんかできん。

怖いけど、強気にでるんや!


「おおぉ☆リュー兄ィ、回復魔法だって☆」

「凄いな!」

「そやろ!」

「でも、またカブってるにゃ!」

「??何がカブっとん?」


「アタシとアレッタが斥候カブリ、リュー兄ィとディーは盾とメイスカブリ☆」

「盾とメイス、両方カブってんのん?まあ、ニイヤンはメチャクチャ大柄やし、当然か。」

ずっとニコニコしているリュークは、ワイの反応に肯いた。


「そうだな。もしよかったら、持ってきた大盾とサーベル、メイスをよく見せてくれないか?」

「ええで。でも、絶対にあげへんで。見せるだけや。」

ワイはもったいぶりながら、大盾をリュークに手渡して、サーベルとメイスをテーブルの上にそっと置いた。


ニイヤンは大盾を自在に操りながら笑とった。

「この大盾、凄いな!」


「なかなかの目利きやな、ニイヤン。

大盾は名人と言われたお爺の作った盾の中で最高傑作らしいわ。

お父はんがお母はんと結婚したいって言うたら、アカン言われたから腹立って、駆け落ちするときにパクってきたらしいわ。」

「おいおい・・・」


「どれくらいするの☆」

「さあ?大盾は大金貨200枚(1億円)や!ってふっかけるのを見たけど。」

「大金貨200枚っ☆」

「そやっ。まあ、売りたくないからのハッタリや思うけどな!」


リュークは大盾をそっと壁に立てかけた。ハーフオークのくせに、人の宝物を大切に扱えるやん!


「重っ!」

アレッタがメイスを必死で持ち上げていた。

「重いやろ?これ、お父はんがワイのために作ってくれたメイスなんや。」

「凄く硬そうだな・・・」

「おう、ニイヤン、分かっとうやないか!カッチカチやで!」


すぐに限界が来たアレッタがそうっと机の上にメイスを戻すと、今度はディアナがサーベルを手にした。

「これ、抜いてもいいよね☆」

ディアナが鞘からサーベルを抜くと軽く反り返っとる、片刃の美しい波紋がキラリと光った。

ディアナはほうってため息をついてから、感嘆した。

「綺麗☆」

アンタも絵になるやん!剣を持つ姿、ホンマ、綺麗やったわ。

美女に名剣、ホンマにご馳走様やわ!


「普通の長剣と比べたら短めで、ちょっと薄いんや。お父はんオリジナルのサーベルや。(※日本刀です!)

ワイのお母はん、冒険者やったらしいんやけど、なんや、お父はんに我儘言いまくってできたのが、これらしいわ。

つまり、お父はんとお母はんの形見、つ~わけや。


ちなみに、エステル様のサーベルは斬ることに特化したやつやで。

エステル様には格安で売ったったけど、普通、大金貨5枚では買えへんよ。

だから、悪いけどアンタらには何もあげへんで。借りは絶対返すけどな。」


しもた!

得意になって、借主に対してエラそうにベラベラ話してもうた。

ハーフオークのやつ、イラついてへんやろか?

下半身がイラついたとか言いださへんやろか?


「そうか、凄く大事なものなんだな。大切にするといいよ。

じゃあ、一度、お試しでディーもパーティに入ってくれ。

それから、しばらくマフィアどもに気をつけよう。一人でウロウロするんじゃないぞ。」

よかったわ!ハーフオークは紳士やった!油断できひんけど。


「ディー、よろしくね☆」

「・・・よろしく。」

ディアナが馴れ馴れしく、アレッタが人見知りしながら、ワイをパーティメンバーに認めてくれた。


ワイ、こいつ等にホンマに借金抱えとんやろか?

めっちゃイキってしもたけど、みんな、凄いねっていうカンジなんやけど、どうなっとん?


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

《内緒話》

ディーデレック⇒ディーデリックの方が正解で、何より男の名前やった!

気付いたのが10万字以上書いた後やって、その時にはもうディーデレックしか

しっくりこうへんかったから、そのままやねん!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る