第2話 ハーフオークは思い出す
早速、たくさんの☆いただき、ありがとうございます。
フォロー、コメントもありがとうございます。
妹ちゃんたちは3話から登場。
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王都から逃げ出し、育てられたメレンドルフ辺境伯領に向かって、一人歩いていた。
なんでエステルに捨てられたのか?
どうしたら、僕はエステルと未来を共にできたのか?
なんで?どうしたら?
ダミアン!教えてくれ!
辺境伯領に入ったのだが、日が暮れたので森の中で休むことにした。どうせ、眠れやしないけど。
魔物がいる森の中で、一人で夜を過ごすなんて自殺行為だけど、恐怖や心配なんて全くなかった。自殺するのが何だか面倒で生きているだけで、魔物に殺されても別にいいやって投げやりな気持ちだった。
焚火をじっと見つめていると、色褪せてしまった過去が押し寄せてきた。
僕の名はリューク。たぶん18歳。
たぶん、18歳っていうのは、僕は首が座っていない赤ん坊の頃、
メレンドルフ辺境伯の領都の孤児院の前に捨てられていたからだ。
身長は2メートル近くの巨人で、僕より背の高い人に出会ったことはまだない。
肌はこの国で誰一人としていない浅黒さで、黒髪はチリチリで、豚鼻なもんだから、
子どものころから「ハーフオーク」と馬鹿にされ続けてきた。
辺境伯領の孤児院で僕は育てられたけど、そこには同じような境遇のエステルとダミアンがいた。エステルとダミアンは僕とずっと仲良くしてくれて、僕がイジメられればいつもかばってくれた。
それだけじゃなく、「リュークの力は凄いよ!」とか、「リュークは優しいね。」っていつも褒めてくれた。
14歳になって、僕たち3人は冒険者パーティ『三ツ星』を結成した。
孤児の僕たちには、それ以外に成りあがれる手段なんてなかったし、
そのころは、自分たちなら何でもできる!最強になれる!って思っていたからね。
体は小さいものの、圧倒的な素早さをもつ、戦士のダミアン。
火魔法が得意なエステル。
そして、大きな盾でエステルを守る僕。
本当に僕たちには才能があったみたいで、異例の早さで僕たちはCランクに上がった。そして、1年前、王都に進出してダンジョン攻略を始めたんだ。
ダンジョン。危険な地下迷宮で、魔物がたくさん湧いてでて、時には宝物が落ちている冒険者憧れの地。その最奥にはダンジョンコアがあって、それを手に入れれば、金も、名誉も、貴族の位だって、全て手に入るんだ。
まあ、100階以上にあるらしいけど・・・
この王都にあるダンジョンには誰でも入れるワケではなく、Cランク以上でさらに選ばれたパーティしか入れないんだ。
僕たちはその資格を得たので30日近くかけて王都まで出て行ったんだ。
僕たちは順調にダンジョンを攻略していき、18歳になってしばらくして、Bランクへ昇格した。
ダミアン。僕たち『三ツ星』のリーダーで僕の親友。
金髪碧眼のイケメンで、素早い動きで敵を切り裂く小柄な戦士。
エステル。『三ツ星』の最大火力で、僕にはもったいない恋人で、大切な宝物。
金髪碧眼のすらりとした美女で、火魔法に加え、華麗な剣技で敵を切り裂く。
そして、僕、リューク。
巨人に相応しい大盾で、敵の攻撃を防いで、ダミアンとエステルが上手く攻撃できるようにしている縁の下の力持ち。
ちょうど50日前のあの最悪の日、僕たちは初めて62階を歩いていた。
そこは薄暗い通路で、ダミアンが先頭にたって慎重に歩いていた。
「ぐぉぉぉ・・・」
地響きのような恐ろしい声が聞こえてきた!
「ハイオーガ・・・」
向こうの角を曲がって姿を現したのは、2メートルある僕よりはるかにデカイ、
ハイオーガだった。
奴は、僕たちを見つけて、舌なめずりしていた。
ハイオーガ。60階以上に現れる角がある巨人で、体がめちゃくちゃ固い上に、魔法がほぼ効かないらしい。
ただ、足が遅いうえに、ほぼ1匹で現れるから逃げるのは簡単らしい。
ちなみに、Aランクパーティでも面倒なので逃げ出すらしい。
「逃げるぞ。」
ダミアンの言葉で僕たちは走って逃げだし、簡単にハイオーガを撒くことができたけど、来た通路と違う通路に踏み込んでしまっていた。
ヒュン!ヒュン!
突然、ダミアンに向かって前方、左右から矢が発射された!
罠か!
キン!キン!
「ぐっ!」
ダミアンが剣で矢を2本叩き落としたが、彼の右腹に1本、左肩に1本、突き刺さっていた!
「ダミアン!」
さらに、レッドキャップが5匹、通路の向こうから現れ、僕たちに襲い掛かってきた!
僕は飛びかかってきたレッドキャップの鉤爪を大盾で防いで、メイスで叩き潰した。
「ファイヤーバレット!」
エステルの素早い火魔法で1匹が燃え上がった!
「ぎゃっ!」
「ぐふぅ。」
ダミアンが1匹を斬ったものの、その鉤爪で顔を切り裂かれてしまった!
「ダミアン!」
「俺を気にするな!」
ダミアンが膝をつきながら叫んだ。
続いてダミアンに襲い掛かろうとするレッドキャップを、僕は怒りを体から溢れさせながら、大盾で弾き飛ばした。
だけど、別のレッドキャップが僕の右足に飛びかかってきて、膝裏に鋭い鉤爪をぶち込んできた。
「ぐわぁ!」
「リューク!」
悲鳴をあげたエステルだが、僕を傷つけたレッドキャップを華麗に切り裂いてくれた。
「先にダミアンを!」
全てのレッドキャップが動かなくなって、エステルはダミアンに駆け寄った。
足を引きずりながら僕もダミアンに近寄っていく。
「毒だ!」
「ポーション!」
僕はダミアンに刺さっている毒矢を慎重に抜いた。
エステルは、ダミアンの右腹と左肩、そして顔にポーションをかけた。
ポーションは中級の奴だったから、毒は消えたものの、傷は大きすぎてあまり治っていなかった。
「ダミアン・・・」
「ありがとう。俺は大丈夫だ。悪いけど、撤退するぞ。」
「うん。リューク、足にポーションを。低級でゴメンね。」
半泣きのエステルが僕の膝裏にポーションを掛けてくれたおかげで、小走りぐらいは出来そうだ。
「ぐぉぉぉ・・・」
地響きのような恐ろしい声が聞こえてきた!
「ハイオーガ・・・」
向こうの角を曲がって姿を現したのは、撒いたハズのハイオーガだった。
奴は、僕たちを見つけて、舌なめずりしていた。
僕たちが万全でも勝てないかもしれない相手だ。
「ファイヤーランス!」
エステルの最も強力な火魔法がさく裂して、炎がハイオーガの体を包んだ!
「ぐおぉ!」
ハイオーガが怒りの雄たけびをあげると、その体を包んでいた炎が消えてしまった!
殺せなかったどころか、その表皮に軽い火傷があるだけだ!
今まで、ファイヤーランスを食らって、無事な魔物なんて一つもなかったのに。
化け物め!
「そんな・・・」
エステルが絶望の声を漏らした。
腹と肩、顔までやられたダミアン、膝裏をやられた僕。
二人とも満足に走れないので、もう逃げることも出来そうにない・・・
「エステル、逃げろ!」
「俺たちに任せておけ!」
「そんな!みんなで逃げようよ!」
半泣きのエステルは僕とダミアンの腕をぎゅっと掴んだ。
「この足じゃ無理だ。エステルは味方を探してくれ。」
「それまで死なないように、いなしてみせるからさ。」
僕とダミアンはエステルに向かって、ニカッと笑ってみせた。
「すぐに戻るから!」
涙目のエステルが遠ざかってしまうと、僕は寂しくなってしまった。
僕が逃げろっていったのにね。
「リューク、やるぞ!」
「おう!」
勇気を奮い立たせた僕は、襲い掛かってきたハイオーガの金棒をなんとか大盾で受け流した!
だけど、衝撃が大きくて、なんども出来そうにない!
くそっ!
ダミアンが素早く動いて、ハイオーガの右手に思いっきり剣を叩きつけた!
ギン!
だけど、甲高い金属音を出して、剣は弾かれてしまった!
魔法も、物理も効かないのか!
化け物め!
ハイオーガのヘイトを僕に集め、なんとか大盾でその攻撃を防いで、
ハイオーガの隙をついて、ダミアンが色んな部位を攻撃していく。
だけど、効かない!
くそっ!
どうしたら・・・
「リューク、もう少しだけ、頼む!」
「おう!」
僕がハイオーガの振り下ろしを大盾でなんとか食い止めると、ダミアンがジャンプした!
「死ね!」
ダミアンの必殺の突きがハイオーガの右目に突き刺さった!
「ぐわっ!」
だけど、ハイオーガが煩わし気に振った金棒の先端が、
ダミアンに当たってしまうと、ダミアンの右腕はヘンな方向にねじれていた!
「よくもっ!」
僕はメイスをハイオーガの腕に叩き込んだけど、やっぱりハイオーガには効かず、
逆にハイオーガの金棒の攻撃をまともに受けてしまった。
大盾で受け止めたにも関わらず、僕ははじけ飛び、ダンジョンの壁に背中を叩きつけられた。
「ぐぅぅ・・・」
くの字に壊れた大盾を捨てて、なんとか立ち上がった僕が見たのは、
へたりこんでいるダミアンにハイオーガが金棒を振り上げている所だった!
「ダミアン!」
悲鳴をあげた僕を見て、ダミアンは笑った。
「すまん、しくじったわ。」
ぐしゃ!
全く動けなかったダミアンの頭に金棒が容赦なく振り下ろされ、ダミアンの頭が血しぶきをまき散らして無くなってしまった!
「ダミアン!」
絶望の悲鳴を上げた僕を見て、またハイオーガはイヤらしく笑った。
「よくもダミアンを!」
信じられないくらいの怒りが僕の体の中を荒れ狂っていた。
「があっ!」
僕は獣のようにハイオーガに飛びかかり、メイスを力任せに振り下ろすと、ハイオーガが振るった金棒とぶつかって、ビタリと止まった。
「殺してやる!」
互いに武器を全力で振って、相手を叩き潰そうとして、それを躱し、武器で防いでいった。
何合も、何合も。
ようやく見つけた一瞬の隙をついて、僕はハイオーガに向かってジャンプした。
「おらぁ!」
ダミアンが潰してくれたハイオーガの右目の方から横殴りに振ったメイスは
ハイオーガの頭に完璧に当たって、その頭を半分ちぎってやった。
その代わりに、ハイオーガの金棒を恐ろしい勢いでぶつけられた僕の右足は膝から下が無くなっていた。
「ダミアン、やったぞ・・・」
右足が無くなって僕はダンジョンに倒れこみ、疲れ果てた僕は目を開けていることが出来なくなってしまった。
「エステル・・・」
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