幼なじみ恋人を最強ハーレムパーティのリーダーに寝取られた俺だが、 妹ハーレムで作ったパーティで、真の最強パーティの座を寝取ってやった。
南北足利
領都再起編
第1話 ハーフオークは幼なじみ恋人にこっぴどく捨てられた
夕暮れが迫って、僕は家路を急いでいた。
ようやく、エステルが帰ってくる!
瀕死で、右足を欠損していた僕の体を完璧に治した超級ポーションの代金の代わりに、エステルは、1か月も『ブルースカイ』に臨時メンバーとして加わっていた。
僕も勘を取り戻すために一人でダンジョンに籠っていたこともあって、この10日間ほどは恋人なのに、エステルと全く会えなかったんだ。
僕は期待に胸を膨らませながら、そして微かな不安を無理やり押しつぶしながら、
ドアを開いた。
「ただいま!」
僕の声は空虚な部屋に吸い込まれた。
僕たちの部屋の中は灯が点いていない、薄暗いままで、エステルはいなかった。
それどころか、エステルの荷物がすべて無くなっている!
「エステル!」
僕は悲鳴を上げて、『ブルースカイ』の根城へ向かって駆けだした。
エステルはダミアンが亡くなってしばらくは落ち込んでいたけれど、
『ブルースカイ』に加わって、何度かダンジョンを歩いたら
初めて自分より強いメンバーと戦ったって嬉しそうに話してくれた。
そして、『ブルースカイ』のエースであるアルナウトのことを強い!凄い!
って上気した顔で褒めたたえていた。
嫉妬まみれの僕の心の中なんて気にすることなく・・・
そのうえ、この10日間ほどは、エステルと出会うどころか、エステルが部屋に戻った形跡すらなかったんだ・・・
「エステル!」
ダミアンが亡くなってしまったから『三ツ星』はもう終わりで、僕にはもう、
君しかいないんだ!
クラン『ブルースカイ』の建物のドアの前にたどりついたけど、怖くてドアを開くことを逡巡していた。
聞き耳を立ててみると、部屋の中は喜びの声に満ちているみたいだった。
「こんばんは。」
恐怖に押さえつけられながらも、勇気を振り絞ってドアを開いてみたら、僕の目は正面のただ一点に釘付けとなった。
エステルが『ブルースカイ』のシンボルであるブルーのスカーフを、アルナウトに首に巻かれて、幸せそうな笑顔を浮かべていた!
「エステル・・・」
「リューク・・・」
エステルは僕に気付くと、幸せそうな笑顔が一転して、泣きそうな顔になってしまった!
恋人の僕と目が合ったから?
そんな!エステル!
「もう、遅いんだよ。」
右横から馬鹿にするような男の声が聞こえた。
エステルは俯いてしまうと、その彼女の肩をアルナウトがぐっと抱きしめ、優しく囁いた。
「大丈夫だ、エステル。俺がついているよ。」
「せっかく楽しんでいたのに、やっぱり、ハーフオークは空気を読めないんだな。」
「人の心が分からないのよ。」
「魔物だから無理ね。期待する方が間違っているわ。」
左横から女たちの冷ややかな声が聞こえた。
だけど、僕の目はエステルしか見えなかった。
僕を見て悲しそうな表情を浮かべたエステルしか・・・
「君には悪いが、エステルは俺たち、『ブルースカイ』に入ることに決めたんだ。
『三ツ星』はダミアンがいないからもう無理だろ?」
アルナウトが優しい口調で俺を諭した。頑是ない子どもを諭すように・・・
「嘘だ!エステルは僕とずっと一緒にいるんだ!二人で誓いあったんだ!」
信じられなくて叫んだしまった僕はエステルを見つめたけれど、エステルは僕から目を逸らしてしまった。
「・・・エステル、本当なのかい?」
答えを聞きたくない僕の声はひどく震えていた。
「・・・黙って出て行ってごめんなさい。リューク、私は『ブルースカイ』に加入するわ。」
エステルは辛そうに、言葉を絞り出した。
「なんで・・・」
「大歓迎よ、エステル!」
「ようこそ、エステル!」
左横から女たちの嬉しそうな声が聞こえた。
そして、『ブルースカイ』のシンボルのブルーのスカーフをみんな嬉しそうに振り回していた。
「エステルの力は僕たちのようなAランクパーティに相応しい。君には無理だけどね、リューク。」
続いてアルナウトが言葉を発したけど、僕の目はただただ、エステルを見つめていた。悲しそうなエステルを・・・
「・・・わかったよ、エステル。
ダミアンが亡くなったから、もう『三ツ星』は終わってしまった。
だけど、お願いだよ!僕を傍に置いてよ!ずっと一緒にいようって誓ったじゃないか!愛しているんだ!
僕はエステルがいないと駄目なんだ!」
僕は恥も外聞も関係なく、涙をこぼしながらエステルに哀願した。
「うわっ、だっさ!」
「キモッ!」
「ヒモになりたいんだって!あんなにデカイ体のくせに!」
「心が、脳みそが、小さいんだよ!」
「誓ったってガキの約束だろ?」
「そもそも魔物が誓って意味あるのかよ!」
「そりゃ、そうだ!」
「「「「ぎゃはははは!!!!」」」」
四方からの嘲る言葉が僕の大きな体に突き刺さっていた。
だけど。
僕はエステルさえいれば、大丈夫だから。
エステルは僕がずっと守るんだから。
そうだろ?
僕を悲しそうに見つめ続けるエステルに手を伸ばした。
「お願いだ、エステル!」
綺麗な碧い目から涙が1滴こぼれ、エステルは首をフルフルとふった。
「・・・ごめんなさい。もう、私は貴方より、アルナウトを愛しているの。
ごめんなさい、リューク。
・・・お願い、これをエルマ先生に直接渡してほしい。」
エステルが革袋を机の上に置いた。
縛られていない革袋の口が開くと、その中に大金貨(約50万円)が何枚かと、
僕がプレゼントした安物の指輪と首飾りが入っているのが見えた!
はっとしてエステルを見てみると、その左手薬指には大きな青い宝石付の指輪がつけられていて、その首にはやっぱり大きな青い宝石が輝いていた。
もうすでに!完璧に!アルナウトのものになっていたんだ!
大金貨をエルマ先生に直接渡してっていうことは、僕にこの王都から出ていけって
言ってるんだ!
「ああっ・・・」
僕の口から絶望が吐き出された。
「・・・リューク、一度だけ、チャンスをあげるよ。俺と戦うんだ。
強い方がエステルと組むんだ。
もし、リュークが俺に勝ったら、エステルは俺のパーティには入れないよ。」
「優しいな、アルナウトは!」
「ハーフオークが勝てるワケないじゃん!」
余裕たっぷりなアルナウトの言葉に盛り上がる女ども。
でも、チャンスだ。
このチャンスを生かすんだ。絶対に!
「僕と戦ってくれ、アルナウト。」
僕の言葉を聞いて、エステルの顔が青ざめた。
そして、隣のアルナウトの腕を強くつかんだ。
「アルナウト、お願い。リュークをこれ以上、傷つけないで!」
・・・ああ、エステル、もう僕を信じてくれないのか?
「大丈夫さ、エステル。力の差を見せつけるだけだよ。」
アルナウトのご機嫌な声が響くと、部屋の中はさらに盛り上がっていた。
「さっすが、アルナウト、かっこいい!」
裏庭にある訓練場で、お互い、刃引きの剣を手にして、僕はアルナウトと向き合った。アルナウトは余裕の笑みを浮かべて、僕を手招きした。
「さあ、かかってきなよ、リューク。」
チラッと見てみると、エステルは心配そうにアルナウトを見つめていた。
『お前は優しすぎるんだ、リューク。
怒るんだよ!怒れ!鬼になったら、絶対、お前は無敵だよ。』
死んでしまったダミアンから何度も受けたアドバイスを思い出した。
絶対に、エステルを取り戻してみせる!
僕の大切なものは、もう君だけなんだから。
「うおぉぉぉぉ!」
僕は思いっきり吠えると、怒りに任せてアルナウトに向かって無茶苦茶に剣を振り回した。
「ははは!なんだ、あの剣さばきは!」
「ハーフオークだからな!」
「その割には、力がないんだよな!」
「ほんと、木偶の坊だよ!」
十数合か振り回したけど、アルナウトは軽やかによけ続け、
そして、僕の剣が止まった瞬間、アルナウトの剣が僕の右籠手をビシリと撃った。
「ぐっ!」
僕の手から剣が零れ落ちた。
「アルナウト、カッコいい~!」
『ブルースカイ』の連中がブルーのスカーフを振り回して喜んでいた。
「まったく、危なげがなかったな!」
「出来損ないが相手だからな!」
「雑魚がエステルに付き纏うんじゃないよ!」
「失礼だな!雑魚じゃないよ、魔物だよ!」
「そうだったわ!ぎゃはははは!」
さらに、『ブルースカイ』の連中の言葉が僕を打ちのめした。
「僕がお前たちに何をしたっていうんだ!」
「はあ?ハーフオークが何言ってんだ?」
「魔物のくせに、生かしてもらえるだけでありがたいだろ?」
「お前が生きているだけで不快なんだよ!もう死ねよ!」
僕のたった一つの宝物を奪っておいて、その上、僕の尊厳まで奪うのか!
激情が僕の体の中を荒れ狂い、何かがカチッと上手くハマったのを感じた。
「うおぉぉぉぉ!」
僕はもう一度、咆哮をあげると、アルナウトの笑みを浮かべている顔めがけて、両の拳を交互に、全力で振りぬいていった。
アルナウトの表情から余裕が消えたけれど、僕の拳はかすりもせず、アルナウトは華麗によけ続けた。
だけど、いつか、当ててやる!
そのまま、僕がパンチを出し続けていると、僕の体中を熱い、熱い何かが循環して、そして右拳にその熱が集中した。
「死ねっ!」
僕はアルナウトの顔をぶっつぶすビジョンを見ながら、渾身の右ストレートを放った!
だけど、紙一重でアルナウトに避けられてしまった!
逆に、凄い衝撃が僕の脳みそを揺さぶっていた。
「最後のパンチは中々だったよ・・・」
アルナウトの呟きを聞きながら、僕の目の前が真っ暗になっていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「起きろ!」
背中を蹴られ、その痛みで目が覚めた。
暗闇の中、冷たい土の上にうつぶせになっていた。
「起きろ、ハーフオーク!」
冷めた女の声が聞こえ、また背中を蹴られた。
僕はアルナウトに負けたんだ・・・
さっきの戦いを思い出し、絶望的な気分のまま、なんとか体を起こし、座り込んだ。
「これを持って王都を出ていけ!」
ガチャリ。
さっき、エステルが差し出していた革袋が無造作に僕の目の前に落とされた。
僕は辺りを見回したが、この女以外誰もいなかった。エステルも・・・
この女はたしか、カロリーンっていう、『ブルースカイ』の魔法戦士だ。
エステル・・・
僕を愛していないどころか、もう心配すらしてくれないのか・・・
恋人じゃない。それどころか、幼なじみや、友達でもないってことか・・・
僕なんか、心配する相手じゃないってことか・・・
「うわあああぁぁぁ!」
僕は全てを失ってしまった。
恋人も、親友も、夢も、だ。それどころか、この街のすべてが敵になってしまった。
もう涙が止まらなかった。恥も外聞も関係なかった。
「お前が来るまで、エステルは楽しそうにしていたんだ。
クランのみんなも楽しくしていたのに、お前が来たせいで台無しだよ。
もう二度と、エステルの前に、私たちの前に顔を出すな!」
カロリーンは冷たく言い捨てるとペッと僕の顔につばを吐いて立ち去って行った。
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