勇者、凱旋する

 魔王を倒し、城下町へと戻ってきた俺たちを人々が出迎えてくれた。


「勇者『あ』ばんざい!」

「あたらしい英雄の誕生よ!」

「見てくれ、空があんなに明るい。全部あんた達のおかげだ」


 などと口々に祝福してくれるのだが、何せ人数が少ない。全部で五人――とは言わないが、オリンピックの凱旋パレードと比較すると何百分の一だよってレベルだ。いやまあオリンピックのメダリストと比べてもしょうがないんだけれども。


「ねえ、勇者」

「何だよ、そんな不機嫌そうな顔。いや、お前はいつもこうだっ――ぐぶぉ!」

 余計な一言はいつも災いを呼ぶ。俺は顔に強烈な一撃を食らって悶絶した。


「あたしはお宝たくさんゲットして嬉しいよ~。いくらになるかなぁ」

 これほど賢者という職業が似合わない女のことは放っておいて、俺は赤く腫れた頬を自分で回復させながらいつも不機嫌な剣士に話の続きを促した。


「どうして魔王を倒したのに出迎えがこんなにショボいのよ」

 やはりこいつも同じ感想だったか。俺も実は毎回そう思ってたんだ。毎回な。俺を無理やりこの城下町から旅立たせた母親すら出迎えに来てないんとはどういうことだ。


「そりゃお前……」

 俺はこの世界のすべてを知っているというほど知っている。もちろん、このあとに何が起こるかも知っているのだが、本当のところは言わずに無難な答えを返してやることにした。


「魔王を倒してすぐさま帰ってきたんだからさ、まだ話が伝わってないんだよ」

 むしろ逆に彼らは何で俺たちが魔王を倒したことを知っているのかと思うのだが、女剣士は俺の答えに納得したようだ。


「それもそうね。さあ、王様のところへ行くわよ。魔王討伐の報告に」

「そうだな」


 そうして、数少ない人々の祝福を受けながら、俺たち四人は連れ立って王様のところへと向かうのであった。

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