勇者、オシャレな店で買い物をする
「ふう、死ぬかと思ったぜ」
「まあ、一度死んでるけどね。誰かさんのせいで」
「主にお前だろう! あとこいつだ!」
爆弾で一度全滅したあと、改めて爆弾を入手し直して洞窟を抜け、中央大陸に出た。
最初にたどり着いたのは中央大陸でも指折りの歴史を誇る古都。オシャレな都として知られる場所なので、世の女の子達の憧れでもある。
憧れである……はず、なのだが……。
「うーん、さすがに高級店ともなるとセキュリティ半端ないなあ。あ! でもあそこ、うまくやれば忍び込めるんじゃないかな……」
「おい、この泥棒をなんとかしろ」
店に入るや否や、銀髪のシーフが目を輝かせて内部を物色している。
一見、女の子の憧れでもあるきらきらした大都会に目を輝かせているように見えるが、そうではない。この女、この店に今晩忍び込んで盗みを働く算段を立てているのだ。誰かこいつを縛っておいてくれ。
「あたし泥棒じゃないってー。もう勇者くん、ちゃんと覚えてよね。あたしはシ・イ・フ♡」
かわいらしく言っても全く心に響かない。
「それで? この店に何の用なのよ。むさ苦しい男二人がおしゃれな店の景観を乱して、他のお客さんなくなっちゃったじゃない」
むさ苦しい男なのには同意だが、客がいないのは俺たちのせいではないと思いたい。それにしてもこの戦士、デカい。どの建物もそうだが、入るときはもちろん、中でも首を曲げないと立っていられないほど大きいのだ。
「ちょっと必要なものがあってな。っと、これだ。これをひとつくれ」
そう、今俺たちは古都のメインストリートに店を構えるオシャレな甘味処に来ている。この街に相応しくオシャレに言えばスイーツの店だ。
そこで俺はケーキをひと切れ購入した。RTA中の俺がスイーツを買うなんて奇妙に思えるだろ? 実は……おっと、この先はネタバレになるから、あとで使うときに教えてやろう。
「買うべきものは買った。行くぞ」
買い物を済ませた俺は、古都を後にしようとした。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ」
女どもが粟を食ったように追いかけてくる。戦士は相変わらず無口でのっしのっしとその後ろを歩いてくる。どうでもいいが、こいつと歩いていると俺が小さくなったような気分になる。断じて俺はチビなんかじゃない! あとハゲてもいない!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます