第39話 ディスコルディアの鐘は鳴った
洞窟の奥深く、『
通常のアリの女王は、普通のアリの約3倍の大きさだ。
兵隊アリが人の上腕ほど、約30センチであるとすれば、女王アリはその3倍、つまり約2メートル前後なのだが…
しかし、目の前にいるこの『
その体は4メートル近くに達していた。
この巨大な洞窟の空間ですら、その圧倒的な存在感に圧倒されるほどだった。
広く開けた洞窟でさえ、その巨体の前では狭く感じらる。
そこは、空気が張り詰めるような緊張感が漂っていた。
その中で、招かざる客の到来で女王アリは怒りを露わにしていた。
巨大な顎がギチギチと不快な音を立て、威嚇するように動く。
その周囲の兵隊アリたちもまた、同じ音を響かせ、無礼な侵略者であるレイたちに襲いかかる準備を整えていた。
特に毒餌で仲間を倒されたことを感じ取っているのか、兵隊アリたちの怒りは尋常ではない。
彼らの攻撃には、強い憤りと報復の意志がこもっているように見えた。
しかし、これはあくまでレイたちの主観であり、それが正確かどうかは定かではない。
だが、少なくとも、全員がその異常な殺気を肌で感じ取っていた。
今、この洞窟内で女王アリに立ち向かっているのは『
『
彼らは迷路のような洞窟の外れに導かれており、引き返してここに到達するまでには、まだ時間がかかるだろう。
「他パーティは…まだか…仕方ない…やるぞっ!」
「「「おうっ!」」」
『
その声を聞いていた『
「おいおい、アイツら、露払いしてくれるとよ」
「いいねぇ~。それじゃあ、こっちは『女王』様に挨拶といくかっ! おまえらぁ! 気ぃ抜くんじゃねぇぞ! 今までのアリとは桁が違う。それに…向こうがどれくらい持ってくれるか分からないしな…はは」
このパーティのリーダー、アベルが軽口を叩く。
「ちげぇねぇ。わははは」
「そんじゃ、いっちょ、派手に行きますかっ!」
『
酸は周囲に広がり、床や壁をじわじわと溶かしていく。
「やっべ、やっべ! 酸が厄介すぎる!」
アベルが苦笑いを浮かべながら叫ぶ。
アベルのパーティは女王アリに集中して攻撃を仕掛けていた。
剣や魔法が繰り出されるたび、女王の体にはわずかに傷がつくものの、その巨大な体に覆われた酸が防壁のように働いていた。
剣を振るたびに、アベルは酸を避けなければならず、その攻撃は徐々に鈍くなっていた。
「効かねぇ…!」
盾を構えたガレンがギシリと呻き、体勢を整えようとする。
そんな中、突然、女王の怒声が響き渡ると同時に、兵隊アリがアベルたちに向かって突撃を開始した。
その動きには怒りと忠誠が感じられた。
弓使いが矢を放ち、ヒーラーが魔法で小規模な回復を施しつつも、次々と襲いかかる兵隊アリの勢いに押されていく。
「ガレックのやつ…んな雑魚を放っておいて、こっち手伝ってのっ! つーか、雑魚をこっちに寄越すなよっ!」
アベルが苛立ちを抑えながら叫んだ。
その声に呼応するかのように、ガレックのパーティも女王の吐き出す酸に巻き込まれ、被害を受け始めた。剣士たちが避けきれず、酸が鎧を溶かし始め、呑んだくれのヒーラーが倒れかけた。
「おい! 吐き出させるなって言ってるだろ!」
ガレックがアベルに向かって怒鳴った。
アベルがにやりと笑う。
「そんなの無理に決まってんだろ。お前らが酸を防ぐ方法考えてくれよ!」
ガレックは呆れ顔で剣を構え直し、前進する。
「くそっ、やるしかないな…」
兵隊アリと女王の酸攻撃に挟まれ、両パーティは徐々に疲弊しながらも、一瞬の連携の隙を見つけようと奮闘していた。
「危険だから、レイはもっと下がっていろ」
剣呑とした戦闘の中、がレックがレイを気遣い後退させようと指示を出し、レイもそれに従い後ろに下がろうとした瞬間、頭に鉱石の名前が浮かんできた。
アーカライト結晶:太古の魔力が地中深く染み込み、石灰岩が変化して形成された特殊な魔石。圧縮された石灰由来の成分を持ち、強い酸性環境下で魔力が触媒となり、化学反応を促進する。この反応により、短時間ながら熱やガスを放出する効果が得られる。ただし、酸性物質と反応する際には、予測外の強い化学変化を引き起こす可能性があるため、特に注意が必要。反応の範囲は局所的で持続性は低いものの、適切に利用する必要がある。ただし、予測外の反応を引き起こすリスクもあるため、取り扱いには細心の注意を要する。
…と
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