第33話 ピオナリウス[開拓者]
さて、なんだかんだでオレやエリナたちはワイワイやっているように見えるが、実際はそんなことはない。表面上は賑やかでも、この場所にはもっと深刻な現実が潜んでいる。
『
残った子供たちは "無能者" と見なされ、荷物持ちや農作業、道具の整理・修繕といった雑務をやらされる運命にある。時には冒険者たちの荷物を持って外部に派遣されることもあり、オレもその一人だ。
オレがここに来てから、仲間の半数以上が姿を消した。死んだ者もいれば、逃げ出した者もいたが、逃げたところで生き延びられる保証などどこにもない。そう思うと、彼らの行く末も想像できてしまう。
今もここに残っているのは、ほんの一握り。
オレやエリナ、リュウ、カイルは、運が良かった方だと言えるだろう。
だが、生き残っているのは子供たちだけではない。ここにいる大人たちも、かつては同じように集められた者たちで、辛うじて生き延びてきた人々だ。
彼らもまた、この場所で同じ運命を歩んできた仲間と言える。
全てが、どこか狂っている。
だからこそ、普通の常識なんて通用しない。
こんな世界で、オレ一人が叫んでも何も変わらない。
だったら、生き延びる方法を考えるしかない。
そうして、なんとか今まで生き延びてきた。
だが、これからも同じように生き残れる保証はない。
それでも、少しでも長く生き残るために努力はしなければならない。
幸い、オレにはまだこの能力がある。
この狂った世界で、この能力のおかげで何度も助かったし、エリナも救うことができた。
だからこそ、オレはこの能力を大切に使っていくつもりだ。
そして、また不幸な子供たちが、ここに集められてくる…
その一人が『スナ子』なのだ…が…
「レイ…なんとかして…」
エリナはスナ子を助けた時から、ずっと懐かれていた。
どこへいくのにも、一緒についてきていた。
大人たちが何度か引き離そうとしたが、そのたびにスナ子は泣き叫びながら必死で抵抗する。
捕まえるのも一苦労で、素早く逃げ回る姿に、大人たちも諦めてしまった。
結局、エリナにスナ子の世話を任せることになったのだ。
しかし、エリナは心底困っていた。
トイレの中にまでついてこようとするほどである。
「それは面倒だな…」
オレは一言つぶやいた。
「ひっどーい! 本当に助けてよ、レイ!」
「いや、どうしろってんだよ…」
そう言いながら、スナ子に近づいてみると…
「ふしゃー!」
猛烈に威嚇される。
「すまん、エリナ…あきらめろ」
「そんなぁ…」
がっかりしたエリナは肩を落とし、少し落ち込んでいた。
「でも、そんな状態じゃ、仕事にならないだろ?」
そうオレが尋ねると、エリナは首を振った。
「わたしが作業してるときは、『おとなしくしてて!』って言うと、素直に待ってるんだよ」
「へぇ、それは意外にいい子じゃないか」
「…レイ、それ本当に思ってる? 見てよ、これ…」
エリナの言葉を聞いてスナ子を見ると、エリナの腕に顔をすりすりと擦り付けている。
「休憩時間になると、いつもこうなの。指示には従ってくれるし、それはありがたいんだけど…四六時中これだとさすがにね…」
エリナがそう言っている間にも、スナ子は彼女の顔をペロッと舐め始めた。
「ちょ、やめてっ! スナ子!」
その光景に、オレは思わず微笑んでしまった。
何ともほのぼのとした瞬間だった。
「…オレいくな…まぁ、がんばれ」
と、告げると、エリナは何か憤激していたが…
そのまま、すごすごと逃げたのだった。
その数日後―――
あの『
『
ギルドからの応答は早く、数パーティが名乗りを上げた。
その中には、再び『
オレは喜んでその指名を受けた。
再びあの強者たち、特にガレックさんに会えることを考えると、胸が高鳴った。
しかし…そんな中で、オレには一つ大きな課題があった。
それは、短剣のことだ。
鉱石は手に入れている。
だが、それをどうやって短剣に組み込むべきかが全く分からない。
頭の中に浮かんだのは、あの時見た文字。
それを見て「ヌリウムを真ん中にして、他の鉱石を挟み込むように配置する」というアイデアだ。
たぶん、ヌリウムが安定化に寄与するなら、他の鉱石も攻撃力を高めるために必要だろう。
けれども…その短剣のどこにそれを付ければいいのだろう?
短剣の柄頭から付けるのがいいとは思うが、そのための分解方法が分からない。
下手に分解しようとして、壊してしまったら本末転倒だ…
それを考えると、気が重くなる。
「ああ…もやもやするぅぅぅ」
思わず言葉に出してしまった。
誰かに相談すればいいのだろうか?
だが、誰に? エリナ? リュウ? それともカイル?
いや、彼らに技術的なことを聞くのは場違いだ。
完全に詰んだ…
オレはどうしても、もどかしさを拭い去れない。
「あああ…もやもやする!」
思わず大声で叫んでしまった。
その時、ふとガレックさんの顔が浮かんだ。
そうだ…彼なら、何か知っているかもしれない。
技術にも詳しいし、頼れる人物だ。
彼に相談してみるのはどうだろう?
その考えに救われた気分になり、ガレックさんに会えることが、さらに楽しみになってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます