さてと、では料理をはじめますか。と新しい家の中で、白いエプロンをつけている愛は腕まくりをしてキッチンでお昼ご飯の料理を始める。(今日も忙しい)

 なんとか無事に子供は生まれた。

 女の子だった。(私ににて、とても可愛い女の子だ。創にはあまり似ていないように思えた。創は自分ににていると言い張っていたけど)

 名前はさと。

 私の宝物だ。(もちろん、創にとっても宝物だった)

 子育てをしながらの生活はあっという間で、創は大学院で二年の修士課程を終えて博士課程に進んだ。(研究者への道を突き進んでいた)

 愛はその間、ずっと子育てをしていた。(すっごく大変だったけど、充実はしていたし、とてもいい経験だった)

 創も子育てや家のことをよく手伝ってくれた。創はさとと一緒にいる時間が一番楽しそうだった。(私といるよりも楽しそうだった)

 さとはすくすくと成長して、今年で三歳になった。(いや、早いものだ。本当に)

「お母さん。なに作ってるの?」とくいくいと愛のゆったりとしたズボンを引っ張ってさとが言った。

「具だくさんのカレーライス」と野菜をざくざくと切りながら愛は言った。(カレーライスは愛の得意料理だった)

 するとさとはすごく喜んだ。

 愛はそんなさとのあたまを優しくなでる。(うんうん。かわいいやつだ)

 創はあいかわらず真面目に勉強ばかりしていた。(今は研究といったほうがいいのかな?)自分だけの世界を探求していくことがとても面白いようだった。(たまに夕食のあととかに研究の話をしてくれるけど、専門的過ぎてよく理解できなかった。あまり面白い話ではなかったけど、研究の話しているときの創を見るのは好きだった)

 さとはいつも「兄弟がほしい」と言っているが、今のところその予定はなかった。創はもう一人子供が欲しいみたいだけど、さて、どうしようかな? と愛は思っていた。(一人っ子だと、少しさとがかわいそうだとは思った)

 愛はもうそんなに若くはない。今年で三十七歳になるのだから。(まだ二十七歳の創がうらやましいと思った。今の創は私と創が出会ったときの私よりも若いのだ)

 でも愛にとってはさとがこうして元気で生まれてきてくれただけで、よかった。本当に幸せだった。

 お腹がいっぱいになってすやすやとだらしない顔で眠っているさとはまるで本物の天使のようにかわいかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る