創はそのまま大学院に進んだ。どうやら将来は研究者になるようだった。大学、大学院の学費は創の両親が払ってくれていたので、お金は二人の生活費くらいしかかからなかったのだけど、愛の貯金だけでは生活できないので、愛は仕事をすることにした。(準備もしたし、資格もとったし、めちゃくちゃやる気もあった)

 だけどそのときに予想していないことが起こった。

 愛が妊娠したのだ。

 妊娠がわかって、お互いの両親とも相談して、愛は仕事はせずにこのまま家事をしながら子供を産むことにした。

 子供を妊娠して創は本当に嬉しそうに喜んでくれた。(今までで一番嬉しそうだった)

 だけど愛はあんまり嬉しくなかった。実感が持てなかったのかもしれないし、なんだか流されるように結婚をして、妊娠してしまったので、自分の中で喜ぶ準備ができていなかったのかもしれない。とにかく嬉しくなかったわけではないのだけど、創みたいに無邪気にはしゃいだりすることはできなかった。(不安もいっぱいあった。私は創よりも十歳も年上だし)

 だけどお腹が大きくなってくると愛情が湧いてきた。愛は自分のお腹の中にいる子供(新しい命)のことをとても愛おしいと思うことができるようになった。(ちょっと安心した。私は冷たいお母さんなのかと思ってしまった)

 創はとても愛に親切にしてくれた。(いつも以上に過保護なくらいに優しかった)なんだかすこしずつ創はお父さんになる準備をしているみたいに見えて微笑ましかった。(だけどあいかわらず創は子供のままだったけどね)

 この子が生まれたら我が家には子供が二人になってしまう。面倒臭いな。と思いながら、愛は笑った。寝っ転がりながら、大きなお腹を二人で一緒に触っているとお腹の子が動いて私をけった。

 その衝撃を感じて「けったね。この子」と愛を見てとっても嬉しそうな子供っぽい顔で創は言った。

 実際に産むわけではないからあいかわらず呑気なものだな、と「うん。そうだね」と優しい顔で言いながら、そんな創を見て愛は思った。

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