作戦⓸ライバル登場!ライバルを倒せ!

第17話

体育祭も終わり、残すイベントは期末試験のみだ。

期末試験もいつもなら憂鬱だが、今回は違う。

昨日の夜に、ラインが来たのだ。


“期末試験が近づいてきたので、明日から一緒に勉強しませんか”


早速今日の放課後から図書室で勉強だ。

奏汰かなたは、まことと別れると鼻歌交じりで教室に入る。


「おはよう、市川」

小春こはるが元気よく声をかけてきた。

梨央りおと話していたようだ。

体育祭の後、梨央にはしっかり謝ったらしく、そこから少し仲良くなったらしい。


「おはよう、市川くん」

小春にならって、梨央も小さな声だが挨拶をしてくれた。


「おはよう、大久保さん」

「ちょっと私は無視!?」

「おはよ、藤沢」


「ふん、そういや、今日転校生がくるらしいで」


「転校生?」


「そう。しかもうちのクラスらしいで」


「相変わらずよう知ってるな」


「私の耳は地獄耳やから」

小春はふざけて耳を自慢気に奏汰に見せつけてくる。


「それ別にええことちゃうやろ」

そんなことを言っているとチャイムが鳴って、担任が入ってきた。


席に着くと、ぼんやりと窓の外をみる。

梅雨も明けて少しずつ暑さが増している。


「はい、じゃあ今日は転校生がいるので紹介します」


がらりと扉が開き、長身のイケメンが入って来た。

女子たちが息をのんでいるのがわかる。

男子たちはため息をついている。


「じゃあ、自己紹介お願い」


藤堂とうどう藤志朗とうしろうです。宜しくお願い致します」


藤志朗が深々と頭を下げると、担任に言われた席に着く。

「藤堂くんは今までアメリカで過ごされていたので、日本の高校のことでわからないことがたくさんあると思います。みんなで教えてあげてください」

藤志朗はよろしくと白い歯を見せて笑った。



「この時期にうちに転校してくるって変わってるよなぁ」


お昼ご飯を食べながら、誠は女子に囲まれている藤志朗を見ている。


「まぁな。なんかアメリカにいたらしいで」

「ふーん、いけすかん奴や」

誠は、不服そうにぐっと睨みつけた。

「まだ話したこともないんやから、そう言うなよ」

そう言って、奏汰も藤志朗を眺めていると、藤志朗がゆっくり立ち上がり、歩き始める。


(おい、お前まさか―)

奏汰が思わず立ち上がった時、藤志朗が立ち止まった。


「大久保梨央さん、放課後に校舎を案内してくれないかい?」


本を読んでいる梨央は、声をかけられて本からゆっくり視線をうつした。


「放課後は用事があるので無理です」


きっぱり言うと、本に再び視線を戻した。

藤志朗は断られたことが受け入れられないのか、何も言わずそのまま突っ立ている。

そのうちに他の女の子に声をかけられて、その場から離れていった。


「さすがやな。って、奏汰・・・なんでお前ニヤニヤしてんねん」


「別に何でもない」


奏汰はそう言いながら、昨日のラインを思い出していた。


あっという間に放課後になり、奏汰は図書室へ向かった。

いつもの場所で梨央が本を読んでいる。


「大久保さん」


声をかけると少し微笑んで、荷物を避けて隣の席を空けてくれる。


「今日からまたよろしくお願いします」


奏汰が頭を下げると、「任せてください」と梨央が微笑んだ。


前回と同様に梨央が計画を立て、その通り勉強していく。

おんぶにだっこで恥ずかしい気もするが、学年1位の勉強法は確実だ。


「大久保さん、ここがわからんのやけど」

「ん?どこ?」


そう言いながら、梨央がノートをのぞき込む。

梨央との距離が近くてドキドキが止まらない。

これがあと2週間あるのか~。心臓もつかな、なんて思っていたら、男が声をかけてきた。


「やぁ、大久保さん」

2人が顔を上げると、男が立っている。

「藤堂くん」

「藤堂」


「今日の用事というのは試験勉強なわけだね?大久保さんは見た目が美しいだけでなく、勉強も出来るんだね」

藤堂はまるで奏汰なんて見えていないかのように、梨央の正面に座った。


「僕も一緒に勉強しよう」


そしてそのまま図々しくも鞄から教材を取り出し、勉強し始めた。

その上静かに勉強しているならまだしも、奏汰が「ここがわからないんだけど」と梨央に聞くと、「君、そんなこともわからないのかい?」そう言って藤堂が解説してくる。

図書室でも梨央とあまり話せず、帰り道でもぴったりと張り付いてきて、梨央に話しかけ続けていた。


家に帰ると、ベッドにばたりと横になった。

「疲れたぁ・・・」


藤堂藤志朗。

イケメンで高身長。家が裕福で、頭も優秀のようだった。

しかも、大久保梨央を気にいっている。


自分自身と比べると、勝てる要素が一つもない。

世界の崩壊を食い止めるためにも負けるわけにはいかないが、不安しかない。

奏汰がため息をついていると、またパソコンが急に立ち上がった。


「・・・またか」


パソコンに何やら文字が表示されている。

「どうせライバルに勝利せよとかちゃうん?」


恐る恐る起き上がってパソコンに近寄ると、「ライバルをぶちのめせ」と表示されている。

「なんか未来の俺、妙に攻撃的やな。嫉妬でもしてんのか?」

そう言った瞬間、パソコンの電源が切れた。


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