第6話 毛玉取り器・・・
2、3年前のことだったと思う。
テレビを見ているとき、通信販売のコマーシャルが始まった。内容は、手動の毛玉取り器の紹介だった。アイスクリームバーのような形をしたスティック状の毛玉取り器だった。
私は、ボーっとそのコマーシャルを見ながら、「あぁ、うちにもあるなぁ、子供の頃、服に毛玉が付いていると、母がその毛玉取り器を使って服を綺麗にしてくれたなぁ」と思いながら昔を思い出していた。
そう、「うちにもある」のである。それも私の子供の頃から。いや、私がものがごろつく頃にはあったので、もしかしたら私の生まれる前からあったのではないだろうか。
そう考えると、だんだんとボケた頭がハッキリしてくる。21世紀も二十有余年を過ぎた今、少なく見積もっても40年前にはあったものが、ほぼ変わらぬ形でテレビで紹介されている。電動の毛玉取り器や、変わった形をしている手動毛玉取り器があるなかで、昔からうちにあるものとほぼ変わりない形の毛玉取り器が紹介されているのである。
私は思った「何と進歩のないことか!」。
様々なものが進化し便利になっていく時代に、テレビの通信販売の番組で紹介されているのが、「40年以上前から形の変わらない毛玉取り器」、もっと他に紹介できるものがあるだろうと思った。
しかし、少し冷静になってみるとこうも考えられる、「このアイスクリームのバーの形をしたスティック状の手動毛玉取り器は完成された形なのではないか、服を着た状態でも脱いだ状態でも使用でき、電動毛玉取り器のように刃で切らないので過剰に服が痛むこともない理想的な形なのではないか」と。
そう思うと、この長年形を変えない手動毛玉取り器がまるでシーラカンスのように思えた。
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