地雷ちゃんと忍び君

即興

最初の出会い

「止めるでござる!!」


私の目の前に現れたのは、現代にいないはずの”忍者”だった___


「何だてめぇ!!」

私を路地裏に連れ込んだ男が、そいつに向かって行った。

ずっと掴まれ続けた肩から重みがなくなり、その場にへたり込む。

逆光で見えずらいが、二人の男が取っ組み合っているのが見える。

「その子に何をする気でござるか!」

「おめぇには関係ねぇよ!!くそコスプレ野郎!!」

男は忍者の恰好をした奴に殴り掛かろうとした。しかし・・・

「遅いでござる」

いつの間にか男の背後に回り込んだそいつは、男を固いコンクリートに思いっきり背負い投げた。

ドッという鈍い音があたりに響いた。その音だけで、屈強な男も骨がやられたであろうと予想ができた。

華奢な体でよくあんな力が出るな、と感心していたらそいつはこっちに近づいてきた

「大丈夫でござるか?」

「に・・・忍者・・・?」



「立てるでござるか?」

「別に平気」

伸ばされてきた手を無視して、私はよろよろと立ち上がった。

「・・・ありがとう」

一応お礼は言っておく。けど、警戒していない訳じゃない。だって明らかに不審者じゃない。コスプレ忍者なんて。

「怪我がなくて何よりでござる!」

顔にマスクがしてあるが、目から笑っているのが分かった。

悪い人ではなさそうだけど、怪しい。

「じゃあ、あたし帰るから」

「あ、あの!!」

「・・・何?」

「実は泊まれる宿を探しているのでござる。どこか良い場所はござらんか?」

あぁ何だそういう事。ある程度予想はついていたけどさ。ハッキリ言えばいいのに。

「ホ別イチゴね」

「”ホ別イチゴ”・・・という宿でござるか?」

「はぁ?ふざけてる?ヤるなら金取るから」

「ヤ、ヤる?!何をやるでござるか?!」

こいつ、おちょっくてる?

それとも本当に知らないだけ?

「あんたここに何しに来たの?」

「修行でござる!!」

修行?意味わかんない。これ以上関わるの面倒くさい。どうせ田舎から来たばっかりの奴でしょ。


・・・あ。

私は重要なことを思い出した。お金がないんだった。

さっき男に路地裏に連れていかれた時、取っ組み合いになってその拍子に財布落としたんだった。

どうしよう。

辺りを見渡すが、それらしき物は見当たらない。

「・・・探し物でござるか?」

「財布。さっきそこに倒れてる男と喧嘩している時に落としたの」

「それは大変でござる!拙者も助太刀致す!」

「良いよ別に。普通のホテルならそこ右曲がったらあるから、帰りなよ」

「それは助かったでござる!なら、財布を見つけた後そこに泊まるとしよう!」

「・・・時間かかるかもだし、無理しなくていいよ」

「拙者、探し物は得意でござるよ。忍法!!探索サーチ・アイの術!!」

「だっさ」


「見つけたでござる!」

そういうとシュッと飛び回り、路地裏のゴミ箱の後ろに隠れた。

「こちらでござろう?」

そいつが立ち上がり、手に何かを持ってこちらに戻ってきた。

「あ、私の・・・」

「よかったでござる!」


これが、こいつとの最初の出会いだった。

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