第25話
Vtuber達による下剋上企画は完全に失敗したと言って良いだろう。
理由は簡単、下剋上を狙ったVtuber達は下剋上先のVtuber達の護衛たるアキとシェリフのコンビに全滅させられ、下剋上された側のVtuberはテンチョーとトドマンにより全滅した。アキとシェリフは彼らが全滅した時点で降伏した。
「作戦は成功した」
そして、そんなテンチョーは下剋上企画の反省会と称した企画に呼ばれそう断言した。参加した、と言うか巻き込まれたVtuberと下剋上を成したと言うには余りにも無様な結末を残した者達と彼或いは彼女達の企業が公式に用意した場である。
「でも、挑んだ人達全滅しましたよ?」
司会は相変わらず轟マジメだ。沖常紺も司会になっていた。
「ええ。でもそれは勘定に入ってるわ。ほら、作戦命令書の彼我損害想定って項目読んで頂戴」
テンチョーは画面を操作して数百ページもある作戦書にある彼我戦力相対比と言う項目を開きそこにある“彼我損害の想定”と言う項目にしっかりと“Vtuberやプロゲーマー達の全滅”としっかりと明記されていた。しかも想定内のかなり上の項目である前提の項目に書いてあるのだ。
因みにその後にある損害許容限度、つまりはここまでなら作戦は成功させるさせる為に許せる最大限の損害にモリゾウの戦闘復帰不可、最低値は伊周の戦闘復帰不可である。
そして、その損害許容限度にすら掛かっていないのがVtuber達の全滅だ。コメント欄はもちろんその場にいる全Vtuber達は驚きまくっていた。
「でもまあ、マガト達は良くやったと思うわよ。
モリゾウの戦力を極限まで漸減に成功して、更には1時間も足止めに成功した訳だし」
テンチョーが珍しくベタ褒めだった。
「そうなので?」
「ええ、そうよ」
テンチョーが後ろでKS-23ショットガンで盛り上がっているモリゾウとトドマンを見る。
「アンタ等、銃で盛り上がる前にこの番組に参加しなさい!
お金貰ってるでしょ!」
テンチョーに怒られた2人は心底めんど臭そうな顔を隠さずに向ける。もっとも顔は無いので目の色が青系のマイナス感情を表す色に変わるだけだ。
説明しろと言われたモリゾウはめんどくさそうに話し始める。
「そもそも、作戦の成否と企画の成否は全く乖離してるぞ。
お前等の企画が転けようが成功しようが作戦の達成条件に盛り込んで無いだろ。
つーか、テンチョーがこの作戦命令書だして命令下達や戦闘指導をした段階でお前等側は誰も何も質問しなかったじゃねーか」
モリゾウがアホタレと中指を立て、瞬時にモザイクをかけられた。
「モリゾウさん!そう言う動作はダメですって!」
司会の轟マジメが慌てて告げる。
「すげー!一瞬でモザイクなった」
モリゾウは別の手でも中指を立て、それを素早く動かしたりして遊び出す。
「因みにAI判定で自動処理しますし、国別によって指や手の形を判断するので国によってはその手は見えます」
轟マジメは子供かと呆れた顔で補足するとトドマンがショッカーサインを出し、テンチョーがオッケーサインを作る。
「イギリス人これモザイク掛けられてるの?」
「フランス人とブラジル人見えてる?」
2人もウェーイとふざけ出す。
3人のコメント欄には見える見えない報告が上がる。
「あーマジか!
パソコンの設定で変わるんだー……あ、フランスにして言語もフランス語になって戻せなくなってるアホいた」
モリゾウが笑いながら馬鹿だなーとオッケーサインで煽り出した。
「話が進まないねぇー」
「愉快な人達、ユニーク」
そして、下剋上された側のVtuber達が苦笑しながら話し出す。
「まーこの奇襲作戦の作戦計画書はファニーキルカムズのチャンネルにURL上げてるから興味あればそこからダウンロードして読んで。
過去の企画で作った作戦もあるからチャンネル登録とメンバー登録すると安く買えるわよ。
それ以外は一本数千円にしてるわ」
此処ぞとばかりにテンチョーが宣伝し始めた。
「あの、どうしたら銃が上手く使えますか?」
「え?練習だろう。
練習しろ練習。ムーミン谷のゴルゴだって練習だって言ったんだ」
モリゾウの隣にいたVtuberの質問にモリゾウは当たり前の事しか言わなかった。
「と、言うかガンナーはどうやってこのゲームに使えば良いと思う?
ファニーキルカムズの意見を聞かせて」
ゲーム配信を中心としUTSをメイン配信しているVtuber、獅子尾舞子が質問をする。
「君はガンナー実装される際のPV見た?」
トドマンが苦笑しながら尋ねた。
「あ、ああ。もちろん」
「あれがこのゲームにおいて一番正しい運用だよ。運営がそう想定して、ああやって手本を見せた。
君達はそれをしっかりと、忠実に守れば良い」
トドマンは丁寧に語る。
「初心者におすすめの銃ってあるんですか?」
獅子尾舞子がガンナーの話題続きで質問をする。獅子尾舞子の質問に3人はお互いを見合う。
「そらお前、アサルトライフルだろ。ってか、AK。AK-74を崇めろ」
「いやいやモリゾウ君、機関銃だよ。何言ってるんだい?特にM60。M60を置いて至高の銃なんか無いよ」
「馬鹿ねアンタ達、アンタ達と書いて愚かと読むぐらいに馬鹿。
マークスマンライフルが最強だから。強いて言うならMk.14EBR。スプリングフィールドの最終進化よ」
3人がウフフと笑いながらお互いの愛銃を勧め出す。
「マジメに言うとなんですか?」
「「「拳銃」」」
3人が口を揃えて答えた。驚く程に息がぴったりだ。
「初心者におすすめの拳銃はありますか?」
「「「ない」」」
再び3人が口を揃えて断言した。
「好きなの使え」
「リボルバーでもオートマチックでも」
「ぶっちゃけ、ソードオフバレルのショットガンやストック付けた拳銃でもなんでも良い」
「照星と照門の距離、銃身と照準器のパララックス、CoOに置いてこの三つが飛んで行く弾が当たるがどうかが決まるんだ」
「初心者は拳銃で慣らすのよ。
そこからサブマシンガンやショットガンで当て勘育てて、アサルトライフルとかに行くのよ。
まー拳銃極めるとシェリフとかガンスリンガーみたいな芸当が出来るようになるわ」
テンチョーが笑いながら一丁の拳銃を抜く。
H&K社のHK45Tだ。堅実な設計と軍人好みの拡張性の高さに頑丈さで、更には精度にお墨付きまである。
「私の愛銃ー」
トドマンがそれを見るとコルトのM45A1を取り出した。M1911の現代進化版がM45だ。2人とも45口径の拳銃かつ拡張性があり、そして、自動拳銃である。因みにモリゾウはオートマグ3だ。理由は簡単、デザートイーグルが出るまで現状最も威力の高い自動拳銃だからである。
「デザートイーグルは出てないのですか?」
「俺も探してるんだよなー
検討は付いてるからあとは実証するだけ」
「マジですか?
良ければデザートイーグル出すの協力するんで今度コラボしてくれません?」
「良いけど、お前銃使えんの?」
「一応CoOもやってるので、ステータスとかちょっと弄ればいけます」
「ほな、ええかー」
獅子尾舞子はモリゾウとのコラボをとんとん拍子で決めてしまった。
「モリゾウ君はディーグル好きだねぇ」
「当たり前じゃ無いですか。
ディーグルカッコいいし最高っすよ」
モリゾウが最高と右手を掲げる。
「てか、ディーグルならトドさんも好きそうなのに」
モリゾウの言葉にテンチョーが笑ってその理由を説明する。
「トドも昔はDE使ってたわよ。
でも、あれは何処だったかしら?」
「中東です。
あそこで金の拾って、そこからミャンマーです」
「あー!そうそう!
ミャンマー!ジャムり散らかしてたわ!」
ウヒャヒャとテンチョーが大爆笑し、モリゾウがリアルの話なんか聞いてない!と中指を立てた。
「何の話ですか?」
「お前で言う中の人の事だよ」
モリゾウが獅子尾舞子に告げると獅子尾舞子は何かを察したのかなるほどと頷いた。
「此処ゲームだからジャムわねーもーん!
ビバ50口径!」
モリゾウが即席のデザートイーグルを讃える歌を歌い出す。
実に聞くに耐えない音痴で、周りは爆笑する。
「何だこの聞くに耐えないクソ音痴!?
今すぐ辞めろ!その音楽に対する冒涜を!」
そして、1人のVtuberが両耳を押さえてぬぉぉと唸っていた。Vtuber界の歌姫の1人、天空キララである。出すPV動画はどれもミリオン再生になり、今や一般の音楽業界にもその名前と歌を聞かない事はないレベルの歌姫であり、そしてかなりのゲーマーかつ毒舌でも有名だ。
「音楽に対する冒涜って」
テンチョーは大爆笑しはじめた。
「歌ってのはこう歌うんだ!」
そして、天空キララはモリゾウのクソみたいな歌をアレンジしたメドレーと歌詞の置き換えで歌い出す。
「うわ、すげー良い声」
「モリゾウのクソみたいな歌をミリオン再生連発してる歌手が歌ってるわ」
「歌詞の内容の酷さが歌唱力の上手さでカバーされてる……」
ギリードゥ3匹はすげーと呆れ返り、天空キララはとりあえず歌い終わった。
「何このクソみたいな歌詞。
あとデザートイーグル私も欲しいから出す企画私も読んでよ」
「モリゾウ君、僕もサポートするよ」
天空キララの言葉にトドマンがすかさず答えた。
「いっすよー?
つーか歌姫がデザートイーグル振り回すの?」
「キララちゃん、かなりバイオレンスだにゃ。
すーぐ人殺すし、いつもみゃーが見てないと暴れ出すにゃ」
天空キララの隣にいた猫耳の付いた巫女みたいな和服を着たVtuber、猫森ねねこがモリゾウに教えてくれた。
「ねこち!余計な事いうな!」
「助けてコケマン!!」
キララが拳を振り上げると猫森ねこみがぎゃーと悲鳴を上げながらモリゾウの背後に隠れる。
コメント欄はモリゾウ殺すと言う直球の嫉妬からキラネココンビに絡まれて羨ましいと言う素直な感想が溢れかえっておりモリゾウは頷いた。
「じゃあこのねこち?と一緒なら良いぞ。
この2人のファンでもある俺のメンバー登録者、全員今から俺に感謝のモンエナ代200円払えな」
モリゾウのチャット欄は一瞬で200円の課金が流れ出した。
「それ、参加したらデザートイーグル貰えるんですか?」
「正確に言えば、デザートイーグルを出す為のやり方を模索するだけだ。
詳しくはそのコラボん時にやるけど、出たとしても俺がその銃直接渡して終わりでも良いし、出し方わかったから自分で出すでも良い。
戦闘するかもだけど、多分かなり地味かつ作業ゲー確定してるから配信よりか、編集した動画後日流す可能性がある。
テンチョーとトドさん、其々がM16とMG42まで辿り着いた純粋作業時間教えて」
モリゾウがテンチョーとトドマンに話を振ると2人は両手を開いてひーふーみーと指折り数え出す。
「M16までは高レベル帯のプレイヤー狩りまくってたから時間で言えば6時間で行けたわ」
「僕も」
2人の言葉にモリゾウがVtuber達に振り返る。
「この前参加してたプロプレイヤー達の数百人とか数千人を相手に6時間だからな。
自分の技量考えろよ。俺も出来るってかやってたけどこの人らレベル1のステータスのままそれやってのけたからな。
ヨユーヨユーで言ったら絶対死ぬぞ」
猫森ねねこがよゆーじゃんウハハと笑っていたのでモリゾウが釘を刺した。
「まーボス連続して殺しに行けば良いんじゃない?
この前のワイバーンとか?」
「拳銃だけで殺せるのはシェリフとガンスリンガーだけですって。
彼奴等に拳銃使わせたテンチョーより上じゃないですか」
テンチョーの言葉にトドマンが呆れ返った声色で告げる。
「そうだ!
その2人に守られてたわ!」
天空キララが思い出したように告げた。
因みに言うと天空キララは結構最後の方まで残っていたが、追い付いてきたテンチョーに背後から後頭部を狙撃されてお亡くなりになった。
テンチョーは忘れている。
「リボルバー使いのエルフコンビでしょ?」
獅子尾舞子が笑いながら告げる。
「そう!
凄いのよ!100メートルくらい先の敵を西部劇のガンマンみたいに一瞬でヘッドショットしたり、こう、弾を地面とか木に当てて逸らせて当てたり」
「あー!あれ!
木の裏に隠れたりしてたのに何か背後から撃たれた奴だ!」
別のVtuber達がチートだ!と叫びながらモリゾウ達を見る。
「いや、跳弾でしょ?
シェリフは王道で真正面から捻り潰してくるけど、ガンスリンガーの方は滅茶苦茶よ。
モリゾウが弓でトリックショットしてくるならアキはリボルバーでやって来るのよ」
テンチョーが私も意味わからないわと首を振った。
「現代のボブ・マンデンだね」
「アイツ、マンデンとは真逆だけどね」
3人は身内で笑っていた。
それから色々と質問や結局どうやって動けば良かったのか?等が始まりテンチョーによる戦術独壇講義場になった。
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