不思議な距離感のお客さん!

崔 梨遙(再)

1話完結:1300字

 僕が30代の前半の頃、毎年、数十万の小さな取り引きをするお客様がいました。僕は金額が少なくてもフォローを欠かさないので、やがて、採用責任者と或る程度は親しく接することができるようになりました。その採用責任者は、僕よりも十歳以上年上の女性でした。それで、年に1度か2度、洒落たレストランで食事をしながら打ち合わせをするのですが、取り引き金額が少ないので接待費は出ませんでした。ですので、僕は自腹を切って打ち合わせをしていました。本人はアラフィフだと言ってましたが、まあ、実年齢よりは若く見える、魅力のある女性でした。


 で、夕食をとりながら話をするのですが、話の内容は至って真面目。7~8割は仕事の話でした。そして2割か3割、プライベートな雑談。その責任者の女性は、元々は大企業のOLだったらしいです。ところが、30歳を迎える頃に母親が高級クラブを経営することになり、母親と娘、2人を主軸に店を運営していたということでした。ですが、水商売っぽい雰囲気はありません。むしろいつも毅然としていて、更に凜としていてかっこいいんです。母親が歳をとって、店を閉めて、それから今の会社の社長にスカウトされたとのことです。彼女の研修は厳しいです。研修風景を見たことがありますが、接客の仕事のプロだっただけあって厳しいです。ですが、教育される人間にとっては、プロの接客を学べるので良い機会だったと思います。研修や教育だけではなく、人を見る目も厳しかったと思います。ですが、厳しさの中に暖かさがあって、面倒見がいいのでスタッフから人気がありました。スタッフの相談に乗ることも多かったようです。特に若手の相談。


 パーフェクトレディ! と、僕は思っていました。


 そのパーフェクトレディと毎年お取引があり、毎年1~2回飲みに行くのですが、僕には、『何故、飲みに行くのか?』わかりませんでした。彼女が僕を狙っていたとは思えません。僕に惹かれていないことは雰囲気でも会話でもわかります。僕の方は、決まった彼女がいなかったので、いつでもOKだったのだが……。


 会社でも話せるような内容も多く、どうして毎年飲みに行ったのか? 僕にはわかりません。接待だったので全力で彼女が楽しめるように頑張っていましたが、あれは打ち合わせだったのでしょうか? デートだったのでしょうか? いまだにわからないんです。一度、そこら辺をハッキリさせたくて少し斬り込んだ話をしたことがあったのですが、昔の元彼の話で返されました。その時に思いました。ああ、彼女はまだ元彼を愛しているのだ、と。



 皆様は、この打ち合わせ、なんだったのか? わかりますでしょうか? 僕には女心はわかりません。教えてください。長年の謎なんです。



 ちなみに、僕は仕事モードに入ると恋愛スイッチがオフになりますので、お客さんと恋愛したことはありません。社内恋愛も無いです。どちらかが会社をやめてからお付き合いした、ということはあるのですが。







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