11:Dungeon Streaming─最後の配信─ [残酷描写あり]
『臣人のみんな~、こんめるる~☆ 今日はみんなからリクエストもらってた封印の迷宮に挑戦する見ててねー!』
>めるる!
>おつー
>今週はダンジョン配信なんだ
>初ライブおめでと!見にいくお
>封印の迷宮厳しいから無理しないで
『おつありー! そうそう今日はね、ちょっと難しめのダンジョンで配信してくよ! いけるとこまでいってみま~す。あんまり強かったらすぐ帰るけど、みんなから強い武器とか装備貰ってるもんね! もしあっさりクリアしても許してね~?
あ、そうそうそう! 今度ヤブシ公会堂で、びな
「めるる今日も可愛い~」
今日は、わたしが推している
かつて、人の文明を疎んじた神が世界を滅ぼしてから数百年の間に、この世界にいくつも誕生した
共通点は、中には人知を超えた怪物たちが棲んでいることと、奥深くにはかつて人類の保有していた
誰が始めたかはわからないけど、いつしかそれは探索を専門とする人々だけでなく一攫千金を夢見る多重債務者、普通の肝試しに飽きた子どもたち、そして名前を売りたい配信者など、本当にたくさんの人たちが挑戦するイベントになっていた。
めるるのようにある程度人気の配信者だと、スパチャ感覚でダンジョン探索に役立つ物品が贈られたりもしている。斯くいうわたしも、割ると辺り一帯が眩しくなって怪物の目を眩ませられるっていう閃光瓶を贈っている。
>概要欄の武器がワイの給料何ヵ月か分で草
>見た感じ盾とか俺の年収以上やん
>給料いくらだ
>ほんとすぐ引き返しなよ
>月2万かなドヤァ
>生涯年収かよww
めるるは、そういうコメントのひとつひとつにこまめに反応しなからダンジョンを進んでいく。かなり深いところまで潜っているみたいだけど、運よく怪物に出会うことなく進めているみたいだ。
>怪物出ないな
>今のうちにもっと潜っちゃえ
>ランタン持ってるめるるかわよ
>さっきの話もうちょいして
>疲れたら休もう
『ありがとう~! じゃあ、さっきの続きなんだけど、こないだ、めるるとアースちゃんでお買い物デートしたから、後でそのときの』
ガアァアァアア!!!!
『え、ぎゃっ』
>!?
>うっさ!
>鼓膜が!!
>カメラ落ちたぞ!
>めるるどした
>めるる生きてるか
>怪物か!?
>めるる返事してー!
>めるる!めるる!
『え、なに、うわ、わっ、えっ、』
画面の中では混乱しためるるが、その華奢な身体には不釣り合いな大きな剣を持とうとして……『わ、重っ!?』あ、落とした!
『えっと、えっとえっと、こういうときは……っ』
明らかに不自然な角度に曲がった手首にも気付かず、閃光瓶を……あ、そんな直視したままじゃ、
バリィィィン!!!
その瞬間、辺りが眩しい光に包まれる。画面越しで見ていても一瞬目を逸らさなきゃならないくらいなのに、めるるったらあんなに直視して……!
『あぇ、えぇ、ちょっと何も見えない! 痛い、痛いよ、目ぇ痛い、痛い! 痛い!!』
目を押さえるめるる。怪物にだってめるるの姿は見えていないけど、あれだけ叫んでいたら十分わかってしまうだろう。
そして、ようやく姿の明らかになった怪物──斧を持った巨大な馬頭の、4本腕の人間みたいなそいつが、めるるに襲いかかる!
ぐちゃっ
『あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!』
ぶぅん、どしゃっ!
『い゛き゛っ゛……! い゛た゛……あ゛っ、』
腕が、斧が、足が。
次々にめるるを襲う。
重たい装備が逃げる足を鈍らせて。たくさんの
>やばい
>めるる怪我してんじゃん
>死ぬぞこれ
>誰か助けろよ
>閃光瓶戦犯だろ
>おいおいおい
>めるる!
>逃げろめるる!
コメントが流れる間も筆舌に尽くしがたい蹂躙は続き、肉片を撒き散らしながら、めるるは。
『い゛や゛だ……し、にたぐないよ……、じにだぐないよ゛…… やっと、夢が……やっとアイドルに……っ、やだぁ゛……』
悲しい、もちろん悲しい。
推しが死ぬのは、悲しい。
でも、なんでだろう。
涙ながらに夢を語るめるるは、本当に輝いていて。
私は、涙ながらに打っていた。
>めるるはもう、みんなのアイドルだよ
届いたかな、私の最初で最後のファンレター。
その日の配信は、伝説になったという。
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