憑依少女の魔族解放譚
甘星
いざ世界旅行
第1話 憑依、そして魔族化
切なげなピアノの音が館内に木霊する、たくさんの人々が沢山の人々に拍手を送り…別れを惜しむ声、これからの未来に想いを馳せる声…様々な音が満ちていた
「先輩…私たち…皆さんとの日々を一生忘れません!」
「ぅぅ…私たち…進学、就職される皆さん応援しています!」
そう、いまわたしは…いや私達は卒業式の真っ最中なのだ、式が一通り終わると多くの人に見送られながらわたしは白が基調の美しい館内を後にする
「先輩の魔法芸術ほんとに憧れでした!これからも応援してます!」
「えへへ〜、ありがとね!」
「もう、イフィティ?顔がゆるゆるだよ?」
「いつもこんな感じじゃん、今更気にしたら負けだよ」
「ふっふーん、私ってば天才だからね〜、でもみんなもとってもすごいよ!」
わたしはイフィティ、イがとっても多い名前の高校生、総合魔法中学校から飛び級進学した芸術科の学生だ…いや、今から卒業するのだから卒業生になる、今は在校生から想い想いの品を受け取っている最中だ
「…イフィティさんで間違い無いでしょうか?」
「ふぇ?はい!私がイフィティですよ!どうされましたか?」
なにやら黒いフードを被った少女が話しかけてきた
「私もあなたのファンでして…良ければこれを…」
「これは…魔法書?ありがとうございます!大切に保管しますね!」
「いや読んで欲しい…あ、いや、読んでくれると嬉しいです」
「あ、確かに本は読むものだもんね!わかりました!」
そんなこんなでわたしは卒業式を完璧に終えて学生寮に戻ってきた
「…ふぅ、さて、貰った荷物を整理しよっかな〜、それにしても…」
わたしは貰った品の山を見る…私が人気なのは嬉しいことだがこれはいくらなんでも貰いすぎた、収納魔法に入り切るといいが…
「うーん…まぁとりあえずは整理していこっかな」
そうして私はプレゼントを分類をつけて分けていく
「…うん、これでだいぶわかりやすいね!」
装備品、アクセサリー、保存食、化粧品、日用品、本、魔法具…様々ある
「それしにても多いなぁ…あ、そういえば…」
わたしはあの時黒フードさんから貰った本を手に取る、なにやら歪に歪んでおり感じたことの無い不思議な力の気配も感じた
「…なんだかいかにもって感じの本だね…でもこういう怪しいものってそれはそれで魅力的…ちょっとだけ見ちゃおっかな…」
本をめくる、するとなにやら凄まじい勢いで赤黒い煙か何かが私を包み込んだ…不気味な力を感じる…間違いない、これは魔力だ
「えっ…えぇ!?なにこれぇ!」
その魔力は赤黒い霧や液のようになって私にまとわりついて…私の体に染み込んできた
「うっ…なにこれ…気持ち悪い…」
凄まじい不快感だった、私が何か別のものに塗りつぶされていくような感覚、そんな感覚に晒されていると唐突に私の体が信じられないほどに熱を持ち始めた
「あ゛っつい…うぐ…うう…」
目、頭、腰…様々なところが熱くてたまらない、それになんだか何かが出てくるような感じがする…
「も…もう…無理…」
耐えられない苦痛にわたしはその場に倒れてしまった、だんだんと意識が薄れていく…
(私の…夢…)
そう考えたところで私の意識は完全に途絶えてしまった
(…んん…何が起きて…あぁ、そうだ私は…)
私は目を覚ました、いつの間にか寝ていたのだろうか、本に囲まれわたしは床で倒れている、時刻はすっかり夜といった雰囲気で部屋の時計は深夜3時を刺していた
『目が覚めたか小娘』
「えっ!?誰?」
いつの間にか隣でふよふよ浮かんでいた人魂のようなものから聞きなれない声が聞こえてきた、なんだか複数の人物の声が合わさっていて不気味な雰囲気を醸し出している
『我らに名はないが…貴様は幸運にも魔神となる資格を得た…貴様の周りから世は混沌へと導かれるだろう…』
「……んん?ごめんちょっとよくわかんないんだけど…どういうこと?」
唐突にわたしは意味不明なことを言われ困惑を隠せない、その上名前が無いうえ姿も不定形…ほんとに分からないことだらけだ
『そうだな…説明するよりもまずは自覚を持ってもらうとしようか、鏡を見てみるがいい』
「鏡?わかったよ」
言われるままとりあえず全身鏡の前に立つ…するとそこに映ったのは…私に少し似た人外美少女だった、捻れた黒い角が4本頭から生え髪の色は赤のメッシュの入った銀髪、目は黒白目に赤い瞳、歯と爪は鋭く尖り耳は長くまるでエルフのよう…そしてなにやら背中からコウモリのような翼まで生えていた
「…えっ、誰!?というかすごく可愛い…」
不気味な威圧感を持っていたもののその容姿は絶世の美少女だった…なんというか惹き込まれるような美しさだ
『それが今の貴様だ…喜べ、貴様は魔族となったのだ』
「えぇっ!?ま、魔族!?」
『ふふふ…喜ばしいだろう?貴様はこの世界において最凶の種となって…』
「魔族って…あの5000年前滅んだっていう伝説の存在だよね?」
『は?』
これが私たちの運命的な出逢い…この出逢いが私の今後を大きく変えることになるとはこの時の私は全く考えもしなかった
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