第28話 暗黒の予兆

オルフェウス領域での平和交渉が成功し、宗介と浅倉の努力によって銀河は一時的な安定を取り戻していた。銀河秩序評議会は地球防衛軍の働きに深く感謝し、地球は評議会内での地位をさらに高めた。だが、そんな静かな日々が続く中、銀河の外縁から不穏な報告が届いた。


「宗介、評議会からの緊急通信だ。未知の艦隊が銀河の境界付近に現れ、周辺星系に異常なエネルギーを放出しているらしい」


浅倉が緊張した声で告げると、宗介もすぐに報告を確認した。その艦隊は既存のどの勢力とも一致せず、銀河の中では未知の技術を持つ謎の勢力だった。


「未知の艦隊か……それが銀河にとって新たな脅威にならないといいんだが」


宗介はすぐに行動を開始し、評議会から派遣された他の部隊と共に調査のため、未知の艦隊が出現した星系に向かった。地球防衛軍の精鋭部隊も共に出撃し、警戒を高めながら未知の艦隊との接触に備えた。


やがて、彼らの探査船が星系に到着し、そこには無数の巨大な艦船が浮かんでいるのが見えた。それらの艦船は漆黒の金属で覆われ、まるで闇そのもののように星々の光を飲み込んでいた。宗介と浅倉はその異様な姿に驚きつつも、冷静さを保ち、通信を試みた。


「こちらは地球防衛軍の宗介だ。我々は平和的な意図を持って接触を試みている。あなた方の目的を知りたい」


数秒の沈黙が続いた後、巨大艦隊の中心部から冷たい機械的な声が通信に返ってきた。


「我々は、滅びの執行者エクスティンクター……銀河の未来を見極めるためにここに来た。我々の目的は単一にして明確――銀河が進むべき道を選別することである」


その声には感情が感じられず、まるで銀河そのものを冷酷に見下ろしているかのような圧力が宗介たちに伝わってきた。宗介は慎重に言葉を選び、彼らの意図をさらに探ろうとした。


「銀河の進むべき道?それはどういう意味だ?」


エクスティンクターの冷淡な声が再び響いた。


「銀河の文明は増えすぎ、発展により自らの終焉を招こうとしている。我々の役目は、その中から選ばれた文明だけを残し、他を排除することにある。これは銀河にとって不可欠な浄化だ」


宗介と浅倉はその言葉に愕然とした。エクスティンクターは、自らの基準で「ふさわしい」文明を選別し、その他を滅ぼすという冷酷な意図を抱いていることが明らかだった。この脅威は、彼らがこれまで対峙してきたものとはまったく異なる次元の危機だった。


「そんなこと、許されるわけがない!全ての生命には生きる権利がある。あなた方のような自己中心的な存在に、銀河の未来を決めさせるわけにはいかない!」


宗介の声には強い怒りが滲んでいたが、エクスティンクターは一切動じることなく、無情な言葉を続けた。


「我々は既に判断を下した。地球もまた、我々の基準にそぐわない存在と判断した。故に、排除対象である」


その瞬間、エクスティンクターの艦隊が動き出し、宗介たちに対して攻撃を仕掛けてきた。艦船からは強力なエネルギーが放出され、星系全体がまるで飲み込まれるかのように闇に包まれていった。


「皆、戦闘態勢に入れ!地球を守るため、奴らの攻撃を止めるんだ!」


宗介の指示で、地球防衛軍の精鋭たちは即座に戦闘準備を整え、エクスティンクターの艦隊に立ち向かった。激しいエネルギー砲撃が交わされ、宇宙空間は閃光に包まれた。しかし、エクスティンクターの艦船は強力なシールドを展開し、地球防衛軍の攻撃を次々と跳ね返していった。


「なんて強さだ……これでは、全く歯が立たない!」


浅倉が焦りの声を上げる。エクスティンクターの戦力は圧倒的で、まるで底知れぬ力を持っているかのように見えた。宗介も冷や汗を流しつつ、戦局を冷静に分析し、打開策を模索した。


「奴らのシールドには隙があるはずだ。何か方法を見つけ出さなければ……」


その時、評議会から通信が入り、銀河全体の戦力を結集してエクスティンクターに対抗するための連携が提案された。銀河のあらゆる文明が手を取り合い、この共通の脅威に立ち向かうべきだというのだ。


「宗介、これはもはや地球だけの戦いではない。銀河全体の未来がかかっている!」


評議会の提案を受け入れ、宗介と浅倉は銀河中の同盟軍と協力し、エクスティンクターに対抗する戦略を立て始めた。各星系の戦力が次々と集まり、銀河全体を守るための一大連合が結成された。


やがて、銀河連合の艦隊がエクスティンクターの艦隊に対峙し、宇宙空間で壮絶な戦闘が繰り広げられた。連合の力を結集してシールドの隙をつき、次第にエクスティンクターの艦船にダメージを与えていく。しかし、エクスティンクターもまた次々と新たな艦船を送り込み、戦力を補充し続けていた。


「くそっ、終わりが見えない……」


連携する銀河連合のメンバーも次々と疲労していく中、宗介は新たな覚悟を胸に秘めた。


「浅倉、銀河のため、最後の一撃を仕掛ける。俺たちがこの闇を断ち切らなければ、銀河の未来はない!」


浅倉も力強く頷き、宗介と共に機体のエネルギーを全て一点に集中させた。銀河連合のメンバーもそれに続き、全艦が最大のエネルギーを放出してエクスティンクターの中心部へと照準を合わせた。


「今だ……みんな、一斉に撃て!」


銀河中の力を結集した一斉攻撃がエクスティンクターの艦隊に命中し、闇の艦隊が次々と爆発を起こしながら消滅していった。ついに、エクスティンクターの主力が崩壊し、銀河は再び静寂を取り戻した。


戦いが終わった後、宗介と浅倉は無数の星々を見上げながら、銀河全体の力が一つになって勝利を掴んだことに深い感動を覚えていた。


「浅倉、俺たちが守ったのは地球だけじゃない。この銀河全体の命と未来だったんだ」


浅倉も微笑みながら答えた。


「そうだな。どれだけ困難な戦いでも、俺たちがいる限り、銀河の平和は守られる」


こうして宗介と浅倉は、銀河の全ての生命と共に、平和の未来を築くための新たな決意を胸に抱いた。


銀河を守る者たちの使命は続く――彼らの希望の光は、果てしない星空を永遠に照らし続けるだろう。

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