大人の短編ストーリー

ありもと優

第1話 濡れたパンティストッキング




 


1

私はアレが嫌いだ。

 パンティストッキング。

 肌にめり込む仕様が、どうも好きじゃない。

 付き合っていた男が脚フェチで、ガーターベルトをつけたことはある。その男のセックスは強めで私タイプだった。でもストッキングがやっぱり気持ち良くなかったから、男の魅力は半減した。




 でも、ある日ー


 ある番組を見た。


 パンティストッキングを作っている会社の番組だ。制作チームは、ほぼ男性。

 肌に直接触れる、あんなに緻密な糸編みについて、男性社員たちが懸命に、力を入れて思案しているーーー



 私はパンティストッキングへの理解を変えた。早速、靴下屋に行き、考えあぐねた挙句に番組で紹介されていたメーカーの高級黒色ストッキングを購入した。



 家に帰り、せっせとパンティストッキングを試着する。

 「うん。悪くない。肌触りもすごくいい」








2


「あれ?ストッキング履いてる?めずらしい」



週に1回、火曜日に会う男は、私のスカートのスリットに素早く手を入れて太ももを撫でた。



「いつもの素肌もいいけど…やっぱりストッキングはエロいな……」


「エロいのは、あなたよ。このストッキングの発案は、男性たちなのよ」


「へぇ。そうなんだ。見る目ある男たちだな」


「制作過程を番組でやっていたけど、すごく真剣にみんなでストッキングを何枚も囲んで話し合っていたわ」


「やっぱり君はエロいよ。その中にいい男がいたんだろ」


男は、私の太ももの内側を丹念に指でなぞりながら小さく笑った。


「まあね。いままでストッキングに抵抗があったけれど、開眼したわ」


「開眼!」


スカートから手をのけて、男は私をベッドに押し倒した。


 「あのさぁ…‥たぶん君、パンティ身につけてないでしょ?」


「いやだった?」


「いやではないが、こちらは興奮するから気をつけて」


そう言った男の顔が私の唇に近づいた。ゆっくりキスをする。

 そして男は、するりとした身のこなし方で、スカートの下を丹念に愛撫しはじめた。











3

 男は情事が終わった後、残りの少しの時間を眠りに費やしていた。

 



 私は、簡単にシャワーを浴びた。

 手にはパンティストッキングを持っていた。



 シャワーの湯で、その生地を丸めた。


 私は、ゆっくり、それを絞った。


 最後の雫が落ちるまで、ぎっちりと絞った。



 快楽の愉悦にされたおもちゃよ。

 あなたは、そんなものではない。

 パンティストッキングを身につける心地よさを味わうには、女性でないといけないわけではない。

 私は、これは、もう履かない。

 だけど………



 シャワーを後にして、洗面所のゴミ箱に濡れたパンティストッキングを捨てた。




 身支度を直してから、サッとメモを書いた。男の眠るベッド脇のテーブルに、それを置いた。

 〜ありがとう。さようなら〜




私は部屋を出た。

 これから、一人で飲みに行こう。

 

 男にパンティストッキングの上から撫でられるのは、ずいぶん気持ちよかった。

 でも、私は、そっち側になって、試したい。

 スリルを堪能する冒険者側に、私はなりたい。

 そんなことを考えながらセックスした。





 いまから、かわいい女の子(あるいは男の子)を見つけて、永い夜を楽しもう。



 新しい、パンティストッキングも買わなきゃね。



                <了>


 







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