世界の光を殺すまで〜悪役令嬢と七人の姉〜

伊島糸雨

プロローグ ―炉節―

悪夢の光


 憎悪に焼けつく炎の群れが、暗闇に沈んだ屋敷を囲む。

 熾祈術リツィオがもたらす灯火の煌めきは、導きの元に断罪を求めて呼吸している。殺せ、殺せ。どこからともなく声が聞こえる。夜に響き影に潜み、在るべき結末のために囁いている。関わりを持ったすべての人たち。彼らもまた一様の激情に顔を歪め、光の濃淡の内に自己と呼ぶべきものを隠している。炎の群れ。その先頭を行く輝きをよく知っている。金色の髪が風に解ける。掲げられた光芒術アイオレールはあらゆる正義の代弁者として、狩るべき悪へと微笑んでいる。

「アルベリス・ユーティライエ。悪魔の子――」

 悲鳴は虚空に掻き消える。逃れ得ない運命を諭すように、凍てつく死の感触が、燃える心臓を掴んでいる。

 テレスタシア・ノキア。

 彼女が真に人の光ならば、魔女こそ悪に違いない。

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