第65話
そんな、私を他所に会場は談笑や歓声に包まれている。
「ちょっと外の空気吸ってくる。」
と言って私は会場の外に出た。
今まで、自分から何かをすることもなかったし
誰かと何かを成し遂げることもなかった
文化祭の間、いろんな景色を見たせいで、今まで無縁だった"アオハル"みたいなものを感じてしまっている。
1人で頭の中を整理していると
「君を探してたんだよ!」
見知らぬ男の人に声をかけられた。
見知らぬ人のはずだけど、どこかで見たことがあるような不思議な感覚に襲われたけど
"君"と呼ぶあたり凛の知り合いでもない初対面の人だろう。
「どちら様でしょうか?」
と尋ねると
「さっきのショーを見て君にモデルになってほしくて。」
と差し出された名刺には
カメラマン 江藤大智
と書かれていた。
そもそも推定20代後半のこの人は怪しい人ではないのか
見定めるように見ていたせいか
「初対面でこんなこと言われると怪しいよね?
カメラマンって言っても自社ブランドばっか撮ってて無名に等しいし。
でも妹が今日のショーは絶対観に来た方がいいって言ってて、その意味がわかったんだ。
そりゃあ、人気俳優の霧島くんは言うことないくらいのモデルだったけど君たち4人は素人なんて信じられないくらいトリを飾るにふさわしいステージをみせてくれた。特に君から放たれるオーラがすごかったよ。」
なんて褒めちぎる江藤さん。
「それはきっとこの衣装が素晴らしいからですよ。」
紗奈が作ってくれたこのドレスでなければそんなことなかったはずだ。
そんな私に
「それを聞いたらますます君をモデルにしたくなるね。
そのドレスは誰もが着こなせるものではないし、何より妹が君のために作ったものだからね。」
「妹って」
と思いもしなかった発言に私が驚いていると
「いつもお世話になってるみたいだね。紗奈が。」
と優しく微笑んだ。
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