第35話
「霧島くんも来たことですし、今日は通し練習します。」
みんな台詞は完全に覚えていてシーン別に練習はしていたけれど通しは初めてだ。
中村先輩がカメラを回しはじめた。
初めて観る霧島先輩の演技。
本当に本の中から出てきたような王子様。
初めて合わせるのに、実力派俳優だけあって霧島先輩の演技は素晴らしくて
同じシーンの時は、先輩の演技に飲み込まれそうになってしまった。
「はい、カット!
皆さん、なかなか素晴らしかったです。
エースの霧島くんが入るとやっぱり違いますね。
休憩のあとみんなで観ましょう。」
部長の言う通り、霧島くんがいることで舞台の空気が一気に変わった。
スランプに陥りかけていた私にはいい刺激になった。
水分補給をしていると
「不破さん、初心者と思えないくらい演技うまいね。」
突然話しかけてきた霧島先輩。
さらには、
「ほんとよ。不破さんには才能があるからもっと経験を積めば一流になれるわ。演劇部に入ってみない?」
なんて言う佐田先輩。
だけど
「不破さんは、跡取りなのですから、演劇を一流にする暇なんてありませんよ。
今回出演していただけるだけで光栄です。」
意外にも、助け船を出してくれたのは私を演劇に勧誘してきた中村先輩だった。
「学園祭が終わるまで一生懸命頑張るのでお願いします。」
そう言うと
「こちらこそよろしくね。」
と佐田先輩が少し寂しそうに笑った。
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