03
第29話
あれから何日かして、部長直々に人魚姫の台本を受け取った。
人魚姫は私が唯一持っている絵本。
大切にしまってある。
部屋で台本に目を通していると
紅茶を運んできた石倉さんが
「お嬢様、出演されるのですか?」
と尋ねてきた。
「えぇ。意外でしょ?
父の了承も得ています。」
「お嬢様のことだから、きっと主役なのでしょうね。
私もお暇をいただいて観に行きたいくらいです。」
きっと不破家の人間は観に行くなんてことを許さないだろう。
そういえば、と思い
「王子様役が霧島翔先輩なのですが、石倉さんはご存知ですか?
人気俳優らしいので、足を引っ張らないように頑張らないといけません。」
と言うと
「霧島翔ですか!!超がつく程有名ですよ!!
それに、不破家の経営するホテルのCMにも出演されています。そんな方と共演されるなんて孝臣さまもきっと評価してくれます。」
といつも落ち着いている石倉さんにしては珍しく少し興奮気味。
確かに、私じゃなくて"あの子"であれば評価どころでなく喜んでくれたかもしれない。
母親に至っては必ず観にきただろう。
生憎、私も観に来てほしいなんてこれっぽっちも思わないからお互い様だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます