第37話 一攫千金

「すっげぇなこれ!!!」


 私たちはあのまま二人を手伝うことにしたのだが、二人はなんと素掘りを行っていたのである。

 さすがに効率が悪すぎると思ったので採掘キットを貸し出したところ、その超効率に彼らは驚いていた。

 あれほど態度に棘をみせていたリンディスさんも黙って私の道具を使っている。


「でしょう。というか、私はライルたちが素掘りをしてたことに驚きだわ」

「素掘り……? そうか。ところで、掘り当てたらどうするつもりなんだ?」

「え? そんなの入るに決まってるじゃない」

「は、入る? すぐに入るのか!? まだ何もないぞ!」

「いや、まあアイテムは揃ってるし、そのほかに準備すべきこともないと思うし、いいんじゃないかしら?」

「……お前って女だよな? 痴女なのか?」

「はぁ!? なんでいきなりそんな話になるの! 掘り当てたらすぐに入るべきでしょ!」

「い、いやだって、囲いもなければ貯めるための構造づくりも全然だぞ?」

「囲い? 構造?」

「ああ。温泉にするための囲いだ」

「へ? おん、せん……?」


 その瞬間、頭が真っ白になり、手が止まってしまう。


「あ、ああ。一体なんだと思ってたんだ。この辺りには古くから水脈があると言われていて、火山の麓だから運がよければ温泉になるはずだ。俺らはそれを掘り当てて温泉旅館経営で一攫千金を狙ってたんだが」

「あー……。そ、そう、なん、だ……。ち、ちなみに洞窟が掘り当てられたりすることは――」

「あるわけねーだろ。穴を掘って洞窟が出てくるなんて聞いたことがねーぜ」

「ですよねー……。ち、ちなみにこの辺りで魔力結晶が産出したなんて話も……」

「聞いたことねぇなぁ」


 私は膝から崩れ落ちてしまう。

 だよね。

 五百年も経ってるんだもん。

 仮に魔力結晶の鉱脈があったとしても、普通は誰かがもう掘り当ててるよね……。


「ど、どした?」

「いや、うん。なんでもないの。ちょっといろいろメンタルが壊れかけただけ……」


 いやいや、でもまだ魔力結晶の鉱脈がないと言い切れるわけじゃない。

 このまま掘り続けてれば――


「出たぞー!!!!」


 そう思った矢先、向こうの方で掘っていたリンディスの叫び声が聞こえてきた。

 そちらに視線を向けると、恐らくは熱湯なのであろう、湯気をモクモクと上げながらお湯が溢れ出てきている。


「ホントにあったし……」

「おお! でかしたぞリディ!」

「ああ! やったなライル! これで俺らも冒険者稼業から引退だ! 温泉旅館でぼろ儲けだぜ!」


 なんて具合に抱き合っていた。

 しばらく喜びを噛みしめたあと、こちらへやってくる。


「トロポークさん、それとダイフクさん、ありがとう。それと、ギルドでは失礼なことを言って悪かった。二人のことを誤解していたようだ」

「あ、う、うん別にいいの。もう気にしてないから」

「そ、それで、その……お、温泉に入るのか? ふ、二人とも、その、べ、別嬪だし、け、決して下心とかがあるわけじゃないんだが、は、裸の付き合いなんて言葉もあるわけだし、お、俺らも一緒に入ってもいいなら、その、一緒に入りたいのだが……」

「入るわけないでしょう。何言ってんの」

「ええ!? さっきと言ってること違うじゃん!」


 なんて馬鹿な会話をしていた瞬間、違和感に気付いた


 ――縦揺れ?!


 大福ちゃんも瞬時に警戒態勢となるも次の瞬間、



 地面が大きく揺れた。

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