呪いのカラオケ

じゃせんちゃん

「ねぇ、知ってる?呪いのカラオケ」

「あー、なんか聞いた事ある、確か『見た事も聞いた事もないメーカーのカラオケマシーンで、それで歌うと危ない』ってヤツでしょ?」


「私も聞いた事あるよその噂、なんでも『超ヤバいぐらい出る』らしいよ」


男がバイトに向かう途中で、女子高生達の話が耳に入ってくる。


よくあるオカルト話だと思っていたが、自分がコレからバイトに向かうカラオケBOXに常に貸し出されない個室がある事を思い出す。


そんなまさか、と男は思いつつも店に着くとバイトの先輩にそれとなく尋ねてみた。


「あの一番奥の個室っていつも空いてますよね?店長からもあの個室には客を入れるなって言われてますけど何かあるんですか?」


「あの個室の事か?俺も良く知らないんだけど、何か機械が壊れているから使えないらしいぞ」


「それにしては変じゃないですか?機械が壊れてるならメーカー呼ぶなりして修理するとか、新しい機械に入れ替えるとかすれば良いのに」


「そんな事俺に言われても知らないよ、とりあえず俺は上がるから後はよろしくな、って言っても平日の深夜でこんな寂れたカラオケに歌いに来る客はいないと思うけど」



そう言いながら先輩は帰り、男は1人でいつもの作業に取り掛かる。


様々な雑務を済ませて客の来ない受付に座り暇を持て余しながら壁にかけてある時計を眺めながらひたすら時間が過ぎるのを待つ男。


相変わらず暇すぎる。


こんなに客が来ないのにどうしてこの店は潰れないのだろうと疑問に思いながらスマホをつついていたが、あの噂話がどうしても頭から離れない。


「どうせ他にやる事も無いし、あの個室を覗いてみようか」


男は鍵束を手に例の個室へ向かう。


この店の一番奥にある個室は受付からは死角になっており、まるでワザと隠してある様にも思えてしまう。


鍵を差し込み回すと、


ガチャリ


思ったより素直にロックは外れ扉が開く。


ソファーや机に溜まり積もった埃が本当に長い間使われていなかった事を物語っている部屋の片隅に『使用禁止』と書かれた紙がまるで封印のお札の様に貼られているカラオケマシーンが鎮座している事に男は気がついた。


「うわぁマジかよ、しかも本当に見たことも聞いたことも無いメーカーだな」


埃を払いつつカラオケマシーンを調べてみるとぱっと見は壊れている様には見えず、実際に電源ボタンを押すと起動し始めた。


マイクのスイッチをオンにすると、


キィーーーーーーーン!!


と耳をつんざく様なハウリングを起こしたがそれ意外は特におかしな事が起きる訳でもなく、画面には選曲リストが表示されているだけだった。


「まぁ所詮はただの噂話か、何か無駄にビビって損したぜ、せっかくだし一曲歌ってみるか」


かなり昔に流行った曲ばかりが並ぶ選曲リストから男は適当に入力すると、古い機械の為か『読み込み中』の表示とともに無音の間が続く。


そして曲のタイトルが画面いっぱいに表示されると同時にまるで部屋全体を揺るがす様な激しい衝撃が男を襲い、男は何が起きたのか理解する間も無く意識を失った。









どれくらいの時間が経ったのだろうか、男が目を覚ましたのは静かなベットの上だった。


ここはどこだ?一体何が起きたんだ?


男が身体を起こすと、白衣を着た医者らしき人物が無音で何度も口をパクパクと動かしている。




「ねぇ、知ってる?呪いのカラオケ」


「知ってる、見たことも聞いたことも無いメーカーのカラオケマシーンのヤツでしょ?」


「アレって機械に設計ミスがあって、アレで歌うと超ヤバい『オンリョウ』に襲われて耳が聞こえなくなっちゃうらしいよ」

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呪いのカラオケ じゃせんちゃん @tya_tya_010

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