優等生ちゃん日記

筆屋富初/Hituya Huhatu

「は?」


 真っ白なキャンバス……のようにただ白いだけの空間へ、突然やってこさせられた少女、『優等生ちゃん』。


「え、いやいや……冗談でしょ? 何もないじゃん」


 そこは、白い部屋ですらない。壁も何もない。ただ膨大な白の広がる空間。

 そこに存在する概念は、『白い』ということ、そして、『優等生ちゃんがいる』ということだけ。


「こんなの、何したらいいのよ……L〇Lしたいんだけど。配信しながら……創作したいんだけど……歌いたいんだけど……推しの話したいんだけど……」


 キョロキョロとあたりを見渡す。


「これあれか? "精神と時の部屋"か?」


 某作品の概念をふと思い出して、そう口にする。


「え? ナニコレマジで。オリジナルやれってこと? いいって、いいって……だって、僕、二次創作したいだけだよ。 僕で二次創作するのが楽しいんじゃん。 僕が公式になっちゃダメだろ」


 チラチラと、誰かの顔をうかがうように目線が泳ぐ。


「公式って、クオリティ高くて、評価されてさ……グッツ化して、ファンがいて……二次創作するオタクは、公式の陰で隠れて生きてるんだよな。表に出たいって思ってないよ。思ってない。石の下の人間だもん」


 はき捨てるようにそう呟く。


「でも、時々石の下から出てきて、作品をだしたりして……でも、僕の作品を評価してくれる人がいると、『怖い!』ってなって、石の下に帰っちゃうんだよね」


 白髪は目を伏せる。


「アングラの創作をしてたいよな。あんまりこれ、いうべきじゃないかもしれないけど。実在する人物の二次創作とか特にタブー扱いされてるじゃん。ああいうの……狭い世界だからこそ息ができるんだよね。……しかもその中でも、特に僕しか書いてないようなものばかり書いてて、『ああ、僕ってマジで石の下の虫じゃん』ってなる」


「ねぇ、これ聞いてておもろい? 僕が一人でしゃべってるだけじゃん……誰かいないの?」


 そんな声もむなしく、一面の白は、ただ『白い』であり続ける。


「だれも助けてくれない……孤独だ……」




「死のうかな」

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