川田家の三姉妹
G3M
第1話 訪問
風本隆行はアラフォーの経営コンサルタントで、三年前に引っ越してきた六畳一間のアパートを気に入って住み続けていた。学生向けの賃貸住宅だが、一人で住むには十分だし、近所づきあいがなくて気楽である。
日曜日の昼前まで寝床でごろごろして過ごし、腹が減ってきたので晩飯の残り物をブランチに食べた。それから横になってぼんやりと天井を眺めていると呼び鈴が鳴った。ドアを開けると、きちんとした身なりの老人の男女が立っている。
隆行がドアを閉めようとすると、男がドアを抑えて、「頼むから話を聞いてくれ」と言って頭を下げた。隣の女が、泣きそうな顔をして隆行の顔を見つめた。
この二人は、三年前に別れた隆行の元妻の両親の川田康夫と洋子だ。
「何の用ですか?」と隆行はぶっきらぼうに言った。
「頼むから由美に会ってほしい」と康夫。
「いやですよ」と隆行。
「自殺未遂をして病院に入院しているんだ」と康夫。
「なんでぼくが会わなければならんのですか?」と隆行。
「由美がどうしても君に会いたいと言っているんだ」と康夫。
「断ります。帰ってください」と隆行。
「誤解だったんだ。由美は今でも君のことが好きだと言っている」と康夫。
「ぼくは彼女のことが嫌いですよ」と言って隆行はドアを閉めてガチャリと鍵をかけた。
老夫婦はしばらくドアを叩いたり、隆行に呼びかけたりしていたが、しばらくすると静かになった。
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