■32 なんだ、これ!

空間魔法の魔石を手にし、次元竜との激戦を終えた三人は、再び元の世界に戻っていた。

次元の狭間での戦いは、異次元の歪んだ空間との格闘であり、彼らにとって今までにない挑戦だった

しかし、守田がその力を手に入れたことで、彼らの戦力は一段と強化された。


草原に戻ると、穏やかな風が彼らの体を包み込み、自然の安らぎが心を落ち着かせてくれる。守田は手にした空間魔法の魔石をじっと見つめていた。その紫色の輝きは、まるで彼自身の心を反映するかのように、周囲の空間をかすかに歪める力を持っていた。


「この魔石…」守田はその輝きをじっと見つめ、力を込めると、魔石が一瞬きらりと光り、周囲の空気が揺らめくのを感じた。「やっぱり、これはただの魔石じゃない。空間そのものを操れる…まるでこの世のルールをねじ曲げる力だ。」


零はその様子を見つめ、「俺たちが戦った次元竜の力が、この魔石に封じ込められているんだ。守田、それを使いこなせれば、俺たちにとって大きな武器になる。」と頷いた。


麻美も微笑みながら、「ええ、この魔石を身に着ければ、どんな戦いでも優位に立てるわね。でも、空間を操る力…それは非常に強大な力だから、慎重に扱ってね。」と優しく諭した。


守田はその言葉に頷き、慎重にその魔石を自らの装備に組み込んだ。魔石は彼の拳に巻かれた革のバンドにしっかりと取り付けられ、その瞬間、彼の体にかすかな電流のような感覚が走った。空間がゆっくりと歪むような感覚が全身に広がり、まるで世界そのものが彼に応えているかのようだった。


「すごいな…この力、今までのどんな魔法とも違う。空間を感じ取れるような感覚だ…」守田はその力を徐々に理解し始めていた。「試してみるか。」


彼は両手を広げ、ゆっくりと周囲の空気に意識を集中させた。「空間よ、我が意に従え…裂け目を開け!」その言葉と共に、守田の手のひらからかすかな紫色の光が放たれ、小さな裂け目が空中に現れた。裂け目の向こうには、まるで別の場所が広がっているかのような不思議な景色が見えた。


「これが…空間を操る力か!」零は驚きの声を上げた。「まさか、こんなに簡単に空間を裂け目で繋げるなんて…」


麻美も感心し、「これなら、戦場で敵の攻撃をかわしたり、仲間を援護するために使えるわね。まさに空間を支配する力だわ。」と守田の新たな力に目を輝かせていた。


「よし、もう一度だ…!」守田はさらに力を込め、周囲の景色を裂け目の向こうに引き寄せる感覚を得た。その瞬間、彼の意識が周囲の空気を変え、裂け目がさらに広がっていく。まるで周囲の空間が彼の意思に反応するかのように、風が急激に変わり、裂け目の中から異なる景色が見えてきた。


「待って、これはすごい…!」零は感嘆の声を漏らした。彼の目には、瞬時に映し出された異世界の光景が広がっていた。


「でも、あまり無理をしないで!その力はまだ使い慣れてないだろうから!」麻美が警告すると、守田は笑いながら頷いた。


「空間を操るのは今までの戦いとはまた違う感覚だ。ただ、俺が何かを起こそうとすると、周囲の力が動いているのがわかる。」彼は少し自信に満ちた声で言った。


しかし、周囲の空気が再びざわめき始め、裂け目から異常な気配が漂ってきた。突然、裂け目から現れたのは、巨大な魔物だった。その姿は、彼らがこれまでに戦った敵とは明らかに異なっていた。


「なんだ、これ!」零が叫び、麻美と守田も身構えた。新たな敵の登場に驚き、緊張感が高まる。魔物は裂け目から這い出てきて、威圧感を持って彼らに迫ってくる。


「あの魔物をどうにかしないと!」麻美が叫ぶ。


守田は魔石の力を意識し、動揺しないよう心を落ち着けた。「よし、今度はこの力を試す時だ。みんな、支え合って戦おう!」


三人は、魔物との新たな戦いに向けて心を一つにし、再び立ち上がる。守田は自らの手に宿る空間魔法の力を信じ、仲間と共にこの新たな試練に立ち向かうことを決意した。彼らの冒険は、再び始まろうとしていた。





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