貞操逆転世界でハーレム目的でレンタル彼氏始めたらヤバい女しか寄ってこない

みねし

第1話 貞操逆転世界はままならない

「どうしたもんか~」


ボク、ユウミ・カミハラには最近悩み事ができた。

それは貞操逆転世界に転生してもまったくモテてないということ。


「やっぱこの見た目のせいだよね。絶対………」


ベットから身体を起こし姿見近くに移動。

はあ………とセンサーに反応ありと勝手に開く自動ドアよろしくため息が漏れる。


「女の子っぽい外見がここまで裏目に出るなんてぇ」


薄紫色の女性っぽい短髪に藍色の瞳、ほっそりとした体つき。

転生する前より細くなったような声まで完璧に女の子寄りだけどしっかりとした男。アニメも小説もまあ嗜んでるし下品な下ネタで盛り上がるのも大好きな一般男性だ。


「髪の色も目の色も絶対転生させた人の好みだよね………」


おかげで転生する前(前世って言った方がいいのかな?)より女の子っぽさが余計引き立ってる気がする。


「転生させてくれたのはありがたいけどこれ一周回ってイジワルしてない?」


というかこんな見た目で転生させるくらいならいっそう女の子にして百合百合な世界に飛ばした方がどっちもお得だったんじゃ?


「ハーレム作り放題ってはしゃいでいたボクの感動返して欲しい」


ボクは人一倍ハーレムに憧れがある。

理由は当然この見た目のせいだ。

女の子みたいな見た目でロクに友達もできないボクにはマンガやアニメの中の主人公がすごく男らしく見えた。

貞操逆転世界に転生し数日前なんて感動のあまり嗚咽しちゃってたっけ?

これでボクもハーレム物主人公の仲間入りだ!!


「なんて思ってたのにな………」


男子であると周りから勝手にグイグイくる。

どの男子も消極的な性格がデフォだから尚更アピールのために。

なんてお決まり設定はあいにくボクには適用されないらしい。

女子が以上に多い外にわざわざ一人出かけても何も起きたりしない。


学園も同様。男の半分以上、いやほぼ全ては男子が怖いって理由でリモートで授業に参加してる中、敢えて通学しても見た目のせいか反応はゼロ。

極めつけに帰り道にでっかい建物にかけられたテレビに『30代女性、両親の留守を狙った男性へのわいせつに緊急逮捕』なんて流れる始末。


「こんな見た目で転生させて………絶対ぎゃふんと言わせるんだから」


以前より口調も女性っぽくなった気がする………。

地団駄なんて踏んだら戻れない一線踏み越えちゃう気がしたのでさすがにやめた。

異様にピンクが多い部屋に「お前には無理」って言われてる気がして瞼を閉じる。


「どうすればこんな見た目でも男って認知させてハーレムが作れるんだろう………」


男子なんて欲しくて欲しくてたまらないはずなのになぁ。

ここはラノベの中のような世界。

貞操逆転系の主人公みたいに振る舞えばモテること間違いなしだって思って直近読んだやつの主人公みたいに行動してみたのに………。


「………あれ?」

転生して数日、ここで何して暮らしてたんだっけ?


「ご飯の買い出しに学園の通学………あれ」


数日間の己の行動に振り返ってみてひとつわかったことがある。

どの行動にも共通しているところがひとつ。


「自分から関わろうって積極的に出てない………?」


振り返ってみればずっと受け身のスタンスだったような………?


「直近読んだ主人公の真似したらイケると思ったボクがバカだった………」


そのラノベの主人公もイケメンって描写がないだけで平凡な男性という描写だけは欠かさなかった。

どちらかというと強調されてたくらいだ

見た目女性っぽいボクとの決定的な違い。

同性としか見られないのにいきなり迫られるはずなんかない。

完全に盲点だった。


「はしゃぎすぎて大事なこと忘れていたかも」


自分から積極的に近づいていく方針に変更するしかないのはわかった。

それで、だ。


「どうすればいいかな………」


どうすれば自分が男だってアピールしつつこの世界で素敵なひと時が過ごせるのか。

出会い系アプリという便利アイテムはあいにくこの世界では開発すらされてなかった。

ナンパも脳裏によぎったものの慌てて頭から追い出せる。


「信じて貰えないのはまだいいけど、レズだって気味悪がられるかも」


最悪の場合、そのままリンチされる可能性すらある。

妄想が過ぎるかもなんて思うが男性が目的で家に侵入したりする女性の居る世界、そんな物騒なことが起きないなんて限れないんだ。


ハーレムどころか女の子と手も繋げないまま死んじゃうのはさすがに嫌だしね。

どうすれば積極的に自分が男だってアピールできてかつ安全に女の子と仲が深めることができるんだろう。


「………レンタル彼氏」


目を閉じて真剣に悩むこと数秒。

不意に一昔前に流行った女性向けゲームの設定が頭の中に浮かび上がる。

ゲームの主人公は女子でもちろんレンタル彼女だったが——————その逆バージョンならこの世界でいけるんじゃ………?

思いついたら試してみるのみ。

即行動に出すためSNSを立ち上げつらつら自分のしたいこと全てそこに書き込んでいく。


『レンタル彼氏、始めました!』

『あなたの彼氏ができたらやってみたいこと、されてみたいこと全てレンタル彼氏を通して叶えてみませんか?』

『興味がある方はぜひDMまでお願いします。見た目はこんなですがれっきとした男です。画像も載せて置きます!!』


「これで良しっと」


数枚だけ撮ってあったセルフィと特定されそうなところにモザイクかけた学生証も一緒に乗せて投稿した。

まあ、性別欄だけはしっかり乗せてあるから証明にはなったかな。


「あっ、女性っぽい見た目のメリット書いてない」


同性っぽい見た目で気負いの心配がないとかあなた好みの男性っぽく仕立て上げることもできるとか色々あったのに。

ま、まあ後からでも言えることだしいいかな。


「これが今できるボクの全力ってところかな………」


最善は尽くした。

なんて言っていいかわからないけど、八方塞がりの現状に自分で考えられる全力なのは明らか。

後は反応があるかどうか待つしかない。

これも上手く行かなかったらどうすればいいんだろう?

なんて今から悩んでも意味ないかな。


「不安に飲み込まれないように今日は早めに寝よっか」


自分の心に言い聞かせるよういつもより強く言い放って寝支度にとりかかることにした。

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