第76話

私は夏樹の話を止めたくなるのを抑え 、

彼のいう 〝 真実 〟 を最後まで聞く事にした 。




「 さっきお前の元母親が 今 美鈴の母親 つったけど

実は この前オレの元にその元母親である 沙織さん

から一本の電話が入ったんだ 。オレも最初はビビったし

、流石に恐ろしくて堪んなかった 。」




「 けど 、あの沙織さんがこのオレに電話をよこすなんて

余っ程何かオレに言いたい事があったのかと思って

恐る恐る掛け直したんだ 。そしたらな 、悪い 、

今から言う事聞いてもし狂わせたりしたらゴメンな 。

〝 あの子を返して欲しい 〟 って言ったんだ 。

一番最初の台詞がそれだった 。で 、こう言い始めた 。

私ね夫に浮気されて凄く病んでいたのよ 、そんな時に

ある人が支えてくれてね 。その方はきっと貴方も知って

いると思うけど 、美鈴ちゃんって言ったかしらね 。

彼女の父親なのよ 。 美鈴ちゃん母親を亡くしていて 、

父親と2人でずっと母親の居ない世界を暮らしてたって

思ったら今度は私が支えなくちゃって思ってね 。

でね 、そんな時にふと 帆夏が浮かんで来てね 。

でも帆夏はきっと捨てられたと思ってるわ … きっと 。

って言って 、最後にあの子を宜しくお願いします って

言われてオレはこう返したんだ 。その人に 。 」




返事する余裕がない帆夏はコクンとだけ頷いた 。

言いたい気持ちを抑えて 。口挟みたい衝動を抑えて 。

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