第40話


 長い夢から目を覚ました時、まだ微かにボヤける視界の中で映ったのはどこかの建物の天井。



 ______ えーっと、ここどこ、?まだ視界は微かにボヤけるけれど、確実に外では無く中である事と同時に誰かの部屋らしき空間に居ると分かる。



 少しして何とか区別付くくらいの視界に戻った頃、辺りを見渡し分かったのはあたしの家ではないということ。え……まさか。



 確認するにはまず身体を起こさなければいけない。だが“何か”が布団越しではあるものの、確実に重みがあるのを直に感じる。その“何か”の方に布団から少しだけ顔を出し、恐る恐る横を見るとそこには自分の両腕を置きスヤスヤと眠る橘 遙人の姿がそこにはあった。



「………………っ、?!?!?!」



 え、待って。何がどうなって、あたしはコイツと居るどころか家に?!記憶を辿れ…あたし。



 あたしは今目線の先に居るこのクズ男、橘 遙人 にからかわれてカッとなり、彼にボロクソに言いたい放題ぶちまけて、帰ろうと歩き始めてそこからの記憶が全く無いため辿った所で思い出せるはずもなく。



 混乱する状況の中でもはっきり分かった事、それは今あたしが居るここはコイツの家だということ。無意識に額から冷や汗が流れ始める。



 ひい〜〜〜!あたし何してんのほんとに!こんな事してる場合じゃない!!未だ止まらぬ冷や汗を拭いつつも、冷静さを取り戻したあたしは覚悟を決め、まずは抜け出そうと行動を起こす。



 しかし、スムーズに事が上手く行くはずもなかった。何故ならばコイツの両腕どころか、全体重がのしかかっている為に身動きひとつ取れない。



 つまりコイツが起きない限り、あたしは抜け出す以前に1歩もこの場所から動けないということ。



 ふざけんなふざけんなふざけんな!!コイツが起きるまでここに居なきゃとかどんな拷問な訳?!それならいっそのこと、ここで安楽死した方がマシだ。



 この後どうなるかなんて一切気にもせず、深呼吸をし終えたあたしは、まずは両脚を曲げようとした時何かが両耳に聞こえた。




『栞…。どこにも行かないで。俺の傍に居て。』




 ____ え? 今なんて …… 。




 まるで愛を知らずに育った青年を彷彿させる様なセリフに、普段あたしのあまり鳴ることのない心臓に深く突き刺さると同時に大きく“ドクン” と鳴らした。



 分かりやすく反応してしまう己の心臓に絶句しつつも、“今のは空耳だ!”と脳内に司令を送り忘れることを願ったのち再び眠りの体制に入った。

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