騙されることなかれ

@ShiranuiGin79

思想

善と悪、偽善と偽悪。この4つの要素で世界は出来ている。


 そのような考えを持ち始めたのは中学の頃だったか。しかし、こんなことを考えていることはそれこそ誰にも言えなかった。今にして思えば、思春期特有の考え方だと意味は分からずとも察していた。それにこんな考えを吐き出してしまえば簡単に世界から阻害されると本能的に感じていたのだ。そのような異物に優しい場所はないと。なんでこんなに自分に厳しく見える世界なのだろうか。ただ、そんな厳しい世界でいろんな思想にまみれてはいても分かりやすく四つに分かれていることで世界を知った気に僕はなっていた。そうすることで自我を保っていたのだ。


 こんなことを考え始めたのはいつからだっただろうか。以前より考えていた気もするが、おそらく意識をするようになったのは高校時代の世界史の授業だ。その授業の中で『性善説』と『性悪説』をやけに詳細に教えてくれる教師がおり、何気なく聞いていたのだ。しかし、その何気なく聞いていた情報が僕に影響を及ぼした。この考え方をより深く知ろうと考え、教師に聞くことが恥ずかしいと思った自分はネットで調べることで理解を深めていった。深めていったところで何の意味もないとは分かってはいたがこれだけでも自分の周りの世界は変えられると考えて考えていだのだ


 そして、それは実際に少しだけではあるが僕の周りの世界を変えてくれた。特に当時はスクールカーストという名の序列でも下の方にいたからこそ実感があった。立ち位置としては下位でも一軍と言われるクラスの中心人物たちとも仲良くやっていたとは思う。一方的な気持ちかもしれないがそれでもいじめられていたわけでもない。ありきたりな日常を過ごすことにより、平穏な生活をしていた。


 先ほども書いた通り自分はいじめられていない。そしていじめてもいない。ただ傍観はしていた。いじめを止めることもなく、やじるわけでもなく、先生に報告するわけでもない。他の生徒もほとんど同じだ。この立場はほとんどの人が体験したことあるのではないかと思う。しかし、その傍観者の中にはその状況から出演者に変わる者もいた。そして、その出演者たちは2種類に改めて分かれる。当然ながら『いじめるもの』と『いじめられる者』である。そして、このようなサイクルは高校への入学当時から存在していた。ただ、一貫して傍観者だったおかげだろうか。自分自身、客観的な立場としてこの状況を見ていた。まぁただ普通にどちらの当事者になるのも嫌だっただけだが。そも単純にこの得体の知れないグループの中に積極的に加わることが出来ないだけなのだけれど。自分自身にどのような影響が与えられるかもわからず、プラスにもマイナスにもならない可能性がある関係性と言うものに。自分も含め周囲の友人たちも関わりたくはなかったのだ。これは自分が幼い頃から変わらない。


 しかし、『性善説』と『性悪説』を知ったことにより、私の中でその行動が変わることとなったのだ。それは高校2年になってようやっと周りの気持ちを知ることにより周りに変化をもたらそうと言う少し傲慢であり、優越感にしたれる立場を目指すための行動である。ただ、気持ちを正確に慮るのは難しいと考え、『善』『悪』『偽善』『偽悪』でカテゴリー分けを行い、それぞれそのグループごとの対処法を考ることにした。


 そもそも性善説と性悪説のまどろっこしいのはどっちかに偏っていると考えてしまったことである。別に古代中国で考えられていた思想を否定をしているわけではない。あの時代はそれが正解だった。いや正解にしようとしていたのだ。しかし、現代と古代では当然ながら差が大きすぎる。特に情報量の違いは大きい。ネットがあったわけではないし、何なら遠くの人と話すことや文章を送ることにも苦労していた時代だ。マーケティングで言うところのサンプル数が少なかったのだ。しかし、人間の思考を知るためのツールとして、現代は便利すぎるものが多い。ラジオ、テレビ、SNS、YouTube、ブログなど、それぞれが個人の感情を発表できる場が多いため、この時代に存在したら、おそらく違う考えをしたのだろう。ただ、私もそういうツールには疎かった、他人の思想を知る事はめんどくさいと考えていたため必要としなかったのだ。いや利用はしていたが、そういう考えのもとにこのようなツールを利用していなかった。なんともったいないことをしていたのか。しかし何はともあれ今回をきっかけに、自分は他人の思想を知ることにより自分の生活をより充実させると言う考えのもと生活をし始めたのである。


 まず重要な事は先ほど書いていた目下の障害であるいじめと言うグループ単位の思想を排除し、自分への危険を確実に避けるための行動だった。ただこの行動の中でどちらかに自分が入ってしまうのは絶対に避けるべきことであり、第三者として介入する必要があった。難しそうに思えるが、先程のカテゴリー分けをしてみるとある程度算段はついた。成功目標は、単純に言えば、教室内でのいじめを消せばいいだけなのだ。

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