もしも学年一可愛い親友のカノジョを寝取ってしまったら

さい

第1話

 人にはみな誰にも言えない秘密が一つはあることだろう。

 俺こと黒宮優斗にもある。

 それは、親友の彼女とシてしまったということ。

 この先ずっと誰にも言えない秘密。

 言ってしまえば、俺の人生は終わることだろう。



「詩絵良のやつ、大声で喘ぐもんだから、下にいる母さんにバレそうになってさあ」


 朝、親友の辻島穂高と二人で高校に向かっている時にそんなことを言ってきた。


 いつものことだ。

 穂高には春ごろに付き合い始めた彼女がいる。

 彼女の名前は新庄詩絵良。

 学年で一番可愛い女の子だ。

 顔だけではなく身体つきも、頭も、運動もいいと完璧な彼女がなぜ穂高と付き合えたのか、俺からしたら謎だ。

 まあ、穂高はかっこいいし運動神経もいい。

 ただ、バカだ。


 今だって、穂高の声はみんなにも聞こえている。

 つまり、こいつは自慢をしているのだ。


「あんまそういうの大きな声で言うなよ」

「みんなが羨ましがるからか?」

「ちげえよ、新庄さんに迷惑だろ」


 本当にこいつはバカだな。

 けど、そんなところも俺は好きなのかもしれない。 

 穂高といると本当に落ち着く。


「お前も早く彼女作れよ。世界が薔薇色になるからさ」


 彼女か。

 できるものなら早く欲しい。

 できれば、穂高には悪いが新庄さんのような完璧な女の子が彼女になって欲しいものだ。

 まあ、俺には無理だけど。


 だから今、目の前に起きている現実に俺は困惑している。

 夢?

 そう思うのが一番楽になれるに違いない。

 現実か。


 俺の部屋のベッドの上には下着姿の新庄さんが顔を赤くして恥ずかしげに言う。


「私、初めてだから……優しくしてね」


 なんだ、穂高。

 お前嘘ついてたのか。

 新庄さんって処女だったんだ。

 じゃあ、今から俺は彼女の初めてをもらうんだ。


 心臓がドクンドクンと速くなっているのを感じる。


 もうすぐ一線を超えてしまうのか。

 ごめん、穂高。


 こんなことをしてしまえば、俺は穂高を裏切ることになる。

 

 理性などもうない。

 

 額から汗を流しながら、優しく新庄さんの口にキスをした。


 初めてのキスはいちごの味がすると聞いたことがあるが、無味だった。


 罪悪感に押しつぶされそうで死にそうだ。

 なら、最初からするなって?

 無理な話だ。

 目の前には絶世の美少女。

 手を出さない方がおかしい。


 キスを終えると、唾液が透明の糸の如く伸びる。


「穂高くんには内緒だよ」


 恥ずかしげにそう言う彼女を見て、俺の下腹部は限界を迎えていた。

 今すぐシたい。

 未知の世界へと行ってみたい。


「ああ、当たり前だ。内緒にするよ」


 ただ、ひたすら腰を振った。

 自分の欲望のままに。

 

 この日、俺は親友の彼女と初めてのセックスをした。


 緊張で気持ちいいという感情は出てこなかったが、なんだか大人の階段を登った気がした。


 憧れのセックスを、好きな人とする。

 これ以上の幸せがあるのだろうか!


 ごめんな、穂高……。



 今思えば、全ての始まりは俺が穂高よりも先に新庄さんと接点があったということだと思う。

 何よりも、二年生で新庄さんと同じクラスになってしまったことだろう。


 俺と新庄さんの出会いは、入学式初日。

 寝坊してしまった俺は、たまたま昇降口で同じく遅刻してきた新庄さんと出会った。


 先に話しかけてきたのは新庄さんだった。


「同じ赤色の上靴、一年生だよね?」


 少し焦りながらそう言う新庄さん。


 うちの学校は靴の色が学年を表している。

 赤が一年、青が二年、緑が三年だ。


「そ、そうです。俺は優斗です」

「私は新庄詩絵良です。あの、一人で遅刻するのは目立って恥ずかしいから一緒に行きませんか!?」


 少し恥ずかしそうにそう言う彼女をみて、俺は彼女のことが好きになってしまった。


「そ、そうですね!!」


 そもそも、俺がこうして彼女と出会っていなければ、遅刻をしていなければ彼女を寝取ることはなかったのだろう。

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