カケテ
みんなが見つけ、追いかけているのは小さく輝く光と鈴のような音。
その小さな光は誰より速く飛び去ってく。
風のように大地を駆けるリプリオも、水が流れるより速く泳ぐマーイも必死になって追っている。この世界を駆け回る。
「ああ、もう埒が明かない!マーイとヴァイオレットは向こうからまわって!黒はあの光が真ん中に来るように道や影を書き換えて誘導して!緑はそこで大木にでもなって待ってなさい!」
リプリオの見事な指揮で全員が協力して小さな光を捕まえにかかった。
走る、走る。世界に風が吹くように。
巡る、巡る。世界に水が流れるように。
そうしてこの世界中を駆け回った末にその時が来た。
追ってくるマーイから逃げ、書き換えられた影に導かれ、その光はどん!と思いきり真ん中にそびえ立つ大木にぶつかった。それはほとんどリプリオの狙い通りだった。
「はい、捕まえた」マーイが陸に腰掛け、自分の手を器に小さな光を捕まえる。
「いたた……」「起きた?ねぇ、どうして逃げたの?」「だってみんながすごい勢いで追ってくるからびっくりして。だからそのまま逃げてて……」声に元気がなくなっていく。
「そうだったの。ごめんなさいね」マーイは光を優しく宥める。
小さい光は元気を取り戻し話し出す
「でもみんなに姿が見えてるってことはみんなが希望を捨ててないってことだよ。だって」
黄色い光はヒュンと一気に上へ昇ってゆっくりと降りてきた。
「希望の精霊、クレールだもん!」
その姿は、ガーベラの花で作られたワンピースに身を包んだ元気いっぱいの小さな精霊。話すと少し舌足らずで幼いが、とんがった耳と、その耳の上の短いツインテールが愛らしく、黄色い瞳がこっちを見つめる。
「みんなが捨ててない希望ってくれーるたちはきっと全員同じだよね。生まれたきっかけになった、神様にもう一度会いたいよね。いつかどこかで会えるってみんなが信じてるって事だよね。それはなんだか嬉しい。そうじゃなきゃくれーるはみんなと話せもしないから」
クレールの素直な想いを聞き、ぽつりと本音を最初に呟いたのは意外にもヴァイオレットだった。
「それは……そうよ、会いたい。でも私たちが今この姿な限り、会えないかもしれないじゃない?元々神様の力なんだから。それでも、そうじゃないといいなんて思ってしまうのよね」
「分かるわ、ヴァイオレット」次に口を開いたのはマーイだった。
「私だって会いたい。自分が生まれるきっかけになった人だもの。でも神様はそれを望んでなかったら?私達が会いたくても神様の気持ちは分からないじゃない。だから、同じ気持ちだといいなって、そっちに賭けるの」
そして、リプリオまでもが素直な気持ちを口にする。
「マーイやヴァイオレットの言ってること、分かるわ。同じことを考えたから。でもそれって気にしてても仕方ないじゃない。そんなの神のみぞ知る、よ。だからあたしは信じるのよきっと同じ気持ちだと、その希望を。だからクレールにも会えたんでしょ」
クレールも、他のみんなもリプリオのその言葉に頷いた。
クレールが僕の方に向き直り、語りかける。
「ねぇ、あなたは……白色さん、だよね?なんだかすごく懐かしい感じがするのはくれーるの気のせいかな?あなたは何になるの?」
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