43話 後悔までのカウントダウン6

……全身がずっと押し潰されてるように痛い。

視界も歪んで…殆ど見えない。音もしねぇ…。


だけど、それでも…。




萌乃は殺させない…!


その一心で、俺は言葉を紡いでいた。



「まだ…抗うか、人間!!」


俺の超能力を振り解き…ガブリエルは叫んだ。



そんなガブリエルに俺は…。




「そんな叫、ぶな…よ。耳に、響く…だろ。」


そんな煽るような言葉を返した。




_______。


何故だ…我は何故目の前の人間にここまでの

憤りを感じている…?ただの人間だろう?

そして…何故尊敬の感情も感じている…?


いや…分かったぞ。



そうか…いや、そうだな。こいつはサタンの器だから…、そしてサタンに似すぎている…。

その2つの要因が我に憤りと尊敬を

感じさせているのか…。



_______。



…あぁ、私の力が…効かない。駄目だよ…。

このままじゃ業魔が……。


そんな思考を巡らせて私は…。



「私の事だけ考えて…!お願い!!」



そんな言葉を叫んで…同時に超能力を使った。




色欲の力 第一

自分の事以外考えられなくする。


この力を私は使った…なのに天使の足は

止まる事なく…業魔に向かっていく…。



……意思が強すぎる…、私に微塵の興味も

持ってない…。


そして、私はまた叫んで…。



「私の事だけ考えてよ…!!」


そんな私の言葉に天使は…業魔に向かって

歩きながら…。



「静まれ…人間。」


たった一言だけ…そんな言葉を吐いて、私は

声を出せなくなった。



_______。



我は人間の目の前まで辿り着いた…。

そして…我は言葉を紡いだ。




「我等天使には一体一体に特殊な力が備わっている…悪魔の超能力と同じ類のな…。」


一拍を置いて…我は言った。



「我の力は“啓示けいじ”“分身”“転移”だ。人間…。

聞こえていないか…、まぁいい。我は貴様を認めてやろう…そして2度と忘れぬよう、この手で葬ろう…!」


我はそう告げて…人間に剣を振り下ろした。






_______。


「………っな!」



我の剣が、目の前の人間に振り下ろされる事は

無かった…。


受け止められていた…手首を掴まれていた…。



動ける筈がなかった、まだ死んでいないのが

不思議な程のダメージを目の前の人間は

受けていた。


殆ど何も見えていないだろう…音もしていない

だろう…、なのに何故…!


まさか…!!



その狂気的な事実に気付いた時には遅かった。



「グッ……ハッ!!!!!」



我の腹部に…人間の拳が放たれていた。


殴られた衝撃で…我は数百m程吹き飛んだ。




「…サタンでも、超能力をそんな使い方は

していなかったぞ!!人間!」



吹き飛んで激突した建造物から我はそう

叫んだ…。



我がそう叫んだ瞬間、人間は既に目の前に…、いた。



そして…我と人間の拳がぶつかり合った。







幾度拳を交えたか…、数刻前まで栄えていた

この街は…戦場よりも酷い、地獄のような

光景に変容していた。



そうして…お互いが限界を迎え始め、互いに

最後の一撃を放つ…その瞬間。




【人間は力無く倒れた】




「最後の一撃を放つ前に…限界を迎えたか。」


そう言葉を零し…我は人間の心臓に剣を

突き立て…そして。




「………ッ。」


我も限界…か。人間にとどめを刺せない程に。

それでも…この人間は、我が殺す。


そして倒れた体を起こして…剣を人間に

突き刺そうとした瞬間、4つの強大な気配を

感じて…我は。



「…人間、次は邪魔がいない時に…な。」


そうして我は転移した。




_______。


「業魔…!」


業魔が…業魔が!私のせいで…私のせいで!

死ぬ…!


私は倒れている業魔に駆け寄って…、業魔を

抱き抱えた。



「業魔…駄目だよ、死なないでよ…。」


そんな言葉を吐いても業魔は動かない。



そんな瞬間…見知らぬ3つの声が響いた。




「貴女…業魔に何をしたの…!」


「業魔は殺させない…!!」


「お前は敵って事でいいんだな…?」




それと同時に…大罪の悪魔達のオーラをその

3人から私は感じるのだった。









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