36話 赤い過去
何を言っているの…?私が罪悪感を抱いてる?
そんな筈ない…確かに怒りは抱いている…。
自分で自覚できる程にまで怒りを抱いてる。
だけど…罪悪感、そんなの抱いてる訳…。
私は怒りを抱いているの…!罪悪感なんて私は
絶対に抱いていない…!
そう思考して…私は目の前の男性に再び
殴りかかった。
そんな私の攻撃を目の前の男性は簡単に避けて…、私の攻撃を意にも介さず喋り始めた。
「お前の攻撃には俺に対する怒りが顕著に現れていた…それは殴られる前から何となく分かってた。だけどまだお前の攻撃には迷いがあったんだ…それを知る為にさっきは殴られ続けた。
そして分かったよ…。お前は俺に対して…。
罪悪感を抱いている。」
そんな訳ない…、罪悪感なんて私は…!
貴方に怒りを向けているの…!
攻撃を避けられながら私は自分の過去を怒りの根源…自分自身の過去を思い出していた。
_______。
6年前…。
私はまだ悪魔と関わりなんて無い普通の学生
だった。
朝起きて…朝ご飯を食べて…学校に行って…、
授業を受けて…学校から帰って…、
夜ご飯を食べて…少し家族と話して…、
明日の事を想いながら眠る。
そんな普通の暮らしを送る普通の学生。
そして…あの日が来た。
私の誕生日…。家族が毎年祝ってくれるから、その年もとても楽しみだった。
だけど偶然その日に限って、先生の手伝いをしたせいで帰りが少し遅くなってしまった。
いつもなら18時位に家に着くのに…その日に
限って19時過ぎになってしまいそうだった。
急いで帰ろうと思って、電車から降りてすぐ
家族にもうすぐ家に着くよってメールを送り
小走りで家に向かった。
家に近付けば近づく程…何か鼻につく臭いを
感じていたが私は気にせず家に向かっていた。
そして、家に着いて…玄関の扉を開けると…、
家中がとても暗くて…サプライズかなって私は思ってた…、でもそんな楽観的な考えはすぐに
変わった。
リビングから変な音が聞こえた。
【グチャ…グチュ……ザシュ…。】
???何の音だろう…そう思ってリビングに
繋がる扉開けた私の視界に…信じられない現実が映った。
…信じたくなかった。これが現実だなんて私は認めたくなかった。そんな最悪の光景…。
家族は悪魔に殺されていて…今この瞬間に悪魔に食べられていた…。
そして、家族を食べている目の前の悪魔が…。
【私の実の妹だということも…。】
妹はすぐに私に気付いた。笑いながら私の方に歩いてきて…。
私はもう立っていられなかった。脚の力が抜けてその場に座り込んでしまった。
そんな状況を見て、妹は笑って…。
私を蹴り飛ばした。
あぁ…あアぁあアアァあ。痛い痛い痛い痛い。
そう思ってもこの現実は変わらない。目の前にいる悪魔は私の妹で…。
今…私を食べようとしている妹を私は憎めなかった…。
あぁ…私死ぬんだって、そう思った瞬間…、
妹の頭が破壊された。
…少し遅れて私の耳に銃弾の音が響いた。
……何か顔についた。なんだろうこれ…、少しベタベタしてる…だけど温かい、そしてとても
…とっても。
【赤い】
そこからの記憶は正直殆どない。覚えていない
…でも、後から聞いた話だと。
妹を殺したのは滅悪教の人間で…、私はあの後すぐに発狂して…保護された後も1日中…、
泣き続けたらしい。
だからなんだろうな…目は腫れてるし…、
喉も痛い…喋れないくらいに痛い。
精神病院のベットの上でそう思っていた。
一ヶ月…私は精神病院にいた。
退院した私は…家に帰った。家族と過ごしていたあの家に…。
でも、帰っても誰もいない…。
お母さんも、お父さんも、妹も。
【誰もいない】
思い出が沢山詰まったあの家はすぐに空き家になった。そうして私は住む場所を失った。
だから…親戚を頼ろうとした、だけど…
誰も私を受け入れてくれなかった。
そんな親戚達を私は見限って、家族の遺産を
受け取って、アパートを借り…生活し始めた。
遺産はとても少なかったからバイトを掛け持ちして…生活費を稼ぎながら過ごしていた。
それでもお金は足りず…私は。
【不特定多数の男と肉体関係を持った。】
最初は嫌だった…だけど、それでもお金を稼ぐにはこれしかなかった…だから、何人もの男性と肉体関係を持った。
そこから2年が経って…私は20歳になった。
その時にはもう、異性と体を重なる事に対して何も感じなくなっていた。
そんな時…アスモデウスと出会った。
そして私は寄生されて…ついに死ねると、
そう思ったのに…、私はアスモデウスの器としては最高だったらしく死ねなかった。
家族を失った私は早く死にたかったのに…、
死んだら家族に会えるのに…。
悪魔に寄生されても私は死ぬ事を許されなかった…。
そして私は色欲の力を使えるようになった。
だけど…、その力を得たせいで
私は止まらなくなった。
色欲の力で何人もの人を魅了して何回も
体を重ねた。
それでも…家族を失った私の孤独は…。
【埋まらなかった。】
そんな穢れた行動を繰り返し…今私はこの人と戦っている…この人に天使との戦争を諦めてもらう為…。
この人が戦う限り…。
もし、この人が天使に勝って…この世界が滅びなかったら…私は家族と会えない。
結局皆死ぬのに…何で争うのか分からない。
怒りを抱いているに決まってる…この人が戦うからまだ世界は滅びない…。
だから、私がこの人に罪悪感を抱いてる訳がないのに…。
そんな記憶を…思考を破棄して…。
私はずっと殴り続けている。
そんな私に目の前の男性は言った。
「諦めろ、お前の拳は俺には届かねぇよ。」
「黙ってよ…、黙ってよ!!」
そう言って、目の前の女性の攻撃は勢いを益々増していく。
「貴方が天使と戦い続けるから私は死ねない!諦めてよ…!どうせ皆死ぬんだからさ…、同じじゃん…。」
「それは違う。死んだらもう同じじゃない。」
「同じだよ!何も変わらない…、だから早く
諦めて滅ぼされようよ…!」
そんな私に目の前の男性はとても悲しそうに
ぽつりと呟いた。
「この世界が滅んで…死んだら、この世界で…作ってきた大切な思い出も一緒に死ぬんだ…。
人って意外と簡単に壊れるんだが知ってるか?
…大切な思い出が亡くなった時、人は…。」
俺は一拍を置いて言った…。
【自分を保てなくなるんだ…。】
と…。
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