24話 正真正銘…これが始まり

意識が堕ちきる寸前、頭の中に声が響いた。



(小僧…変わるぞ。)



_______。


「ハハッ…これは予想外だ。君はたった1人の人間の為に命を掛けるようになったのかい?サタン……?」


そう、私の拳は抑えられていた。



「少し、勘づいていた…お前であることは…。だが、あり得ないと思っていた。お前がこの世界に出張って来るとは思っていなかったからな…。」


「我らが神からのご命令なんだ。私だってこんな世界に来たかった訳じゃないさ。」


「また、あの野郎の我儘を聞いているのだな…貴様ら“天使共”は…!」



そして、我は“元同胞”を蹴り飛ばした。



(サタン!お前何勝手なことを…!)


(黙れ。我が変わらなければ貴様はあのまま死んでいた…感謝してほしいくらいだな。)


(クソ…!てめぇ、勝手に変わったんだ…負けたら承知しねぇからな。)


(二度は負けん。)



_______。



…流石、元は天使の長だった…“ルシファー”、いや今はサタン…か。


器の体だから本来の力の半分も出せていないのに…よくここまで出来る…。


そうして私はサタンの元まだ跳躍した。


_______。


(サタン、1つ聞かせろ。)


(なんだ。)


(あいつは何者なんだ。さっき倒した筈の男じゃない。見ただけで分かった。中身が違う。)


(あやつは元…我の同胞で我を魔界に追放した張本人、現天使の長、“大天使ミカエル”だ。)


(は…?)



サタンの言っている意味が分からなかった。


大天使?ミカエル…?なんでこの世界に天使がいる?悪魔だけじゃないのか?そもそも天使はどうやって人間に寄生する?何も分からない。

天使だったとしても、さっき暴食の力で由梨が喰った筈だ。なんで戻って来れた?何も…俺には分からない。



俺が混乱しているその瞬間、ミカエルが戻ってきた。



「流石、腐っても実力は最強と言われたあの頃のまま…か。」


「ミカエル、貴様の目的はなんだ。何故今更我等を狙う。」


「さっきも言ったよね…我らが神からのご命令だよ。」


そして、ミカエルは一拍を置いて言った。



「七つの大罪をこの世界に閉じ込める。そしてこの世界事我ら天使で消滅させる。それが神からのご命令だよ…サタン。」


「………そうか。」



俺はサタンと入れ替わりで精神世界のような場所に飛ばされたが、その場所でこの会話を聞いていた。



…ゲートを閉じたのはこいつ…?


その思考に辿り着いた瞬間、サタンの声が響いた。



(十中八九そうだろうな。我らをこの世界に閉じ込めた愚か者は此奴だったようだ。)


そうしてサタンは一拍を置いて言葉を紡いだ。



(利害の一致…だな。我等七つの大罪は魔界に帰還したい…貴様ら人間は死にたくなどない、あやつを倒さねば、どちらも叶わぬ目的になる。協力してやるのは…今回だけだ。)


と…。



_______。


「悪いが…貴様らの目的は達成される事はない。この我がいる限りな。」


「はっ、前回無様に負けた悪魔の台詞じゃないよ。」


「貴様に二度も負ける事はあり得ん。」



そうして、我とミカエルは衝突した。



…我の今扱える力は…、これだけか。


【傲慢の力 第一  傲慢の力 第二】


他は…小僧の体力が足りない…か、まぁ。

この2つで充分だ。



_______。


肉弾戦を繰り広げながら、人間共の娯楽施設は更地になっていく。


そうして、我とミカエルの拳が衝突し…我等は衝撃で後方に吹き飛ばされた。


そして、睨み合った…その瞬間、我は超能力を発動した…。


_______。


「跪け…王の御前だ。」


「ック…!」



「10万年前からは成長しているようだな。片膝で済むか、ミカエル。」


「天使の長を跪かせるなんて…やっぱり貴方は傲慢だ。」


そうして、我の超能力2つを織り交ぜたその力に抗い、ミカエルは立ち上がった。



「…いつまでも私が貴方の下だと思うな…!」



「…誰が立っていいと許可した。平伏しろ…!」


「ッグ…!!」



「両手をつき、その不愉快な頭蓋を地に擦り付けろ…その姿が貴様には似合っている。」


「ふざ…けるな…!」


そう言ってミカエルは我の力を強制的に振り解き、立ち上がった。



「はぁ…はぁ。」


そんなミカエルに我は言った。


「今日は星がよく見えるな…ところで、貴様は星が好きだったなミカエル。」


「それが…どうしたの…!?」


「我から貴様に最初で最後の祝福だ。」



その言葉の意味を理解した私は上を見た。



降ってきていた…星、ではないがここら一帯を包んでしまう程の隕石が…!


私はすぐに駆け出した…!あれは防御壁では防げない!



私の防御壁は相手の敵意や殺意に反応してその攻撃を反発や反射をさせる防御壁…あの隕石を降らせたのはサタン…だけど、攻撃対象は私じゃなくてここら一帯の空間…そういう攻撃は私の防御壁で防げない…!



駆け出したその瞬間、言葉が響いた。



「ミカエル…だから言ったんだ。最初から器などではなく自分自身でやれ…と。」



「貴様は…!クソッ…!待て!」


そうして、急に現れた其奴はミカエルを掴んで、そのまま消えた。



ゲートを閉じた愚か者が複数人であることは気付いていた…!クソッ!ミカエルがゲートを閉じた愚か者だと気付いた時点で警戒しておくべきだった…。




この世界にいる大天使はミカエルだけではない…!



_______。


そうして、俺は自分の体に戻った。


雨が降り始め、上を向いていた俺は辺りを見渡した。…何処を見ても視界に映るのはただ1つ、死体の山…だけだ。


さっきまで賑わっていたこの場所は…とても静かな更地になっていて、俺は実感した。



【これが、戦争の始まりなのだと…。】








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