22話 決着

消えた…次の瞬間、僕の眼前にその“敵”はいた。


その“敵”は僕の眼前で手を合わせた…瞬間、僕は透明な何かに押し潰されそうになった。


全身に力を入れて耐えるけど、だけど…

ベルフェゴールは悪魔王の中では非力だからだろうか、徐々に僕は押し潰されそうになった。


押し潰される…!その瞬間、由梨が言葉を紡いだ。


_______。


「暴食の力 第三…!」


…私が食べるのは霞君と“敵”がいるその空間!

2人の位置を逆転させる…!


_______。


気付けば、僕と“敵”の位置は入れ替わっていた。


「ッ…これはベルフェゴールの力…ですか。」


そう言って、“敵”はその透明な何かを操って押し潰されそうになっている自分を解放した。


「逆転させられるのならこれは意味ないですね。どうしま…。」


その言葉を待たずに僕は攻撃を仕掛けていた。


…触れさえすれば、業魔に任せなくても終わる!触れさえできれば…!


そう思考しながら“敵”目掛けて手を伸ばした。


でも、その手は透明な何かに触れた。



そこで僕は言葉を紡いだ。


_______。


「怠惰の力 第三」


瞬間、透明な何かを僕の手は通り抜けた。


そう、この力は触れた物体が発動してる効果を奪う力。


僕が奪ったのは透明な何かが発動している効果…、奪って分かった、この透明な何かは壁…だった。


どんな攻撃からも自分を守る…。


【防御壁】


防御壁が発動していた効果は反発…その効果を奪ったからこそ、僕の手は防御壁を通り抜けていた…!


そうして、僕の手は“敵”に触れた。


瞬間、僕は続けて超能力を使った。


「怠惰の力 第五!」



…欲を、罪を奪えば“敵”は戦えなくなる!これで…僕達の勝ちだ!



_______。


「残念。」


その言葉が聞こえた時には遅かった。


“敵”に触れた僕の手は、へし折れていた。


「ッッ…!!?!アぁああァあア!!」


痛みに悶えながら僕は由梨の元まで下がった。



「霞君!」


「…アぁあァ。」


…瞬きの間に霞君の腕がへし折れた。肘から骨が見える程、雑な折り方…。


そう思っていると霞君が口を開いた。



「あの…人の、欲と罪…奪え、なかった…。」


「え?」


_______。



「危なかったですよ…、本音を見せない為に真意を貴方達に悟られない為に発動しておいた所謂、“心の保護”をしておいてよかったです。」


「黙りなさい…。」


「どうしたんですか?そんなに怒って。賞賛してるんですよ?危なかった…と。」


そう言った瞬間、私は霞君に超能力を使った。


「暴食の力 第三」


私が食べたのは霞君の折れた腕周辺の空間。


逆転させる…、壊された腕を壊されなかった腕に逆転させる…。


_______。



「…え?」


痛みで悶えてた…でも、気付いたら腕の痛みは無くなっていて、見ると…腕は治っていた。


「なんで…。」


由梨が治してくれた?そう思って由梨の方を見ると、“はぁ、はぁ”と荒い息を吐いていた。


「慣れない事、するもんじゃないね…。」


そう言葉を零した由梨は力なく倒れて…観覧車から落ちていった。


「由梨…!!」


落ちていく由梨を助けに僕も飛び降りた。


空中で抱き抱えて、僕達は地面と衝突した。



_______。


「由梨!霞!…クッソ。」


「1人になったけど…どうします?戦いますか?」



…どうする、この力を使って勝てるのか?防がれるのがオチじゃないのか?それに…この力、自分でもう分かってる筈だ。10秒も保たない。


どうする…。




…………………!



信頼…していいんだよな、由梨。


失敗したら笑ってやるからな…。


そうして覚悟を決めて、俺は“敵”と向かい合った。



「戦うんですか?」


「あぁ。」


「貴方の攻撃力は脅威ですが、僕には当たらないですよ?まぁ、逃げに専念されるより戦ってくれる方がマシですけど。」


そう言って、今度はあっちから俺に攻撃を仕掛けてきた。



_______。


「傲慢の力 第五」



…超能力は常時発動しておく事は出来ない。ベルフェゴールを除いて…な。


こいつの防御壁もずっと発動してる訳じゃない。俺の最初の攻撃を防いだのも予め自分の周りを防御壁で囲っておいたんだ。


なら、こいつが攻撃する時は…?防御壁を利用して攻撃してくる…なら、今こいつは防御壁で守られていない…!



_______。


…僕の防御壁は攻撃に転じる一瞬だけ、僕の体を守らない…それがデメリットだけどそのせいで負けた事は一度も無い。僕自身の速度が誰にも捉えられないから。実際、ベルフェゴールの器の腕を折った時も僕の速度を捉えられていなかった。


だから今回も負けないと思ってた。



_______。


「ッッ!?!!?!?」


僕の目の前から男が消えた。最初の攻撃よりも更に早いスピード…。


…まずい、間に合わない…早く防御壁を…!


「もう、遅い!」


瞬間、俺の拳が“敵”の顔面に突き刺さった。


「ッッ!!!!」



そいつは途轍もないスピードで下に落下していった。


…ま、ずい!この…速度で衝突したら!


地面に激突する前に防御壁を展開できた……安心した、その瞬間……。


ベルフェゴールの器がベルゼブブの器を支えながら、そこにいた。


瞬間、ベルゼブブの器が言った。



「暴食の力 第二…!」



その瞬間、僕は暴食に喰われた…。


















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