19話 割り切るしかない…

路地裏で戦いが始まって数分…、私は迷っていた。この人を悪魔として滅して良いのかと…。



迷ってる暇が無いのは分かってる、このままじゃこの遊園地にいる人は私達3人を除いて多分…死んでしまう。



私はあの爆弾の解除方法なんて私は知らないから超能力でこの人を食べた方がいいのは分かってる…なのに、何か理由があるんじゃないかって、戦わないといけない理由があるんじゃないかってずっとこの人を殺さないで済む言い訳を探してる私がいる…。


そんな思考に頭が塗り潰された一瞬の隙にもう一発、目の前の女性の拳を受けてしまった。



「…ッ。」


そんな私を見て女性は言った。


「貴女、舐めてるの?」


「え…?」


「何で私に攻撃してこないの?避けてばっかりで…戦う気あるの?」


「それは……。」


「いいわ、貴女に戦う理由をあげる。」


「どういう…事?」


「私はね、死にたくないの。だから貴女を殺して生き残る。でもね…貴女に負けたとしても他に沢山の人が死ぬ…。私は1人で死ぬのが嫌なだけなの…だから他に沢山の人が死ぬなら今ここで死んでもいいわ。ここにいる全員の命を私が握ってるって考えたら…ゾクゾクしない!?」




……あぁ、駄目だ。この人は狂ってる。


悪魔を寄生させた人の中で、低確率だけどいる存在…悪魔を寄生させて欲望を抑えきれなくなる人。



この人はそのタイプなんだ…。



じゃあ、どうするの?私はどうしたらいいの?


殺すの?この人を?いや、目の前にいるのは人じゃない…もう、悪魔だ。




脅されているのかと思っていた。誰かを人質に取られていて仕方なく戦っているのか…そう思っていた。でも違った。自分の欲望に素直な悪魔…そのものなんだ、この悪魔は…。


それなら私がする事は1つ…。




_______。


次の瞬間、悪魔の周辺に夥しい数の蝿が現れた。


蝿は悪魔を囲うようにして、一斉に悪魔に向かって突撃した。



「なによこれ!気色悪い!!離れなさい!離れて!!!」



次第にその悪魔の声は小さくなっていく。




「…いや、いやよ。助けて…、お願い…。」


そう懇願する悪魔の声が蝿の中からする。



そんな声を私は無視して…超能力を使った。


「暴食の力 第二…。」


瞬間、蝿諸共ベルゼブブの胃の中に送られた。



_______。


…いつ使っても凶悪だと思う。


蝿を出現させたこの力は暴食の力 第一。


自身の眷属でもある魔界の蝿を召喚して使役が出来る力…。


_______。



悪魔だった…あれはもう人ではなかった。


頭ではそう理解出来るのに…心が否定する。


悪魔の最後の言葉を思い出してしまう。


助けを求めていたあの声が、昔の私に似ていたからだろうか…悪魔だと割り切って滅した筈なのに…何故か辛かった。


少し俯きながらそう思考していた…でも、割り切る事にした…。引きずってる暇がないから。


残りの爆弾を処理しないといけない…。


だから割り切る事にした。


そうして前を向くと、霞君が物凄い速度で建物と建物の間を移動しているのが見えた。


一瞬しか見えなかったけど、霞君は確かに少し血を流していた…だから、私は霞君の後を追うことした。



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