第18話 放課後の約束


ぼんやりと先生の話を聞いていると、ふとスマホが震えた。画面をちらっと見ると、神野響からのメッセージだった。


(響からか……)


誰かに見られないように、こっそりと内容を確認する。どうやら放課後に遊びに行く話のようだ。


俺はすぐに二つ返事で了承し、どこで遊ぶかの返信を打つ。「この前のゲームセンター!」と返信が来る。


「おい、佐藤、スマホ閉まえ」

先生の声が響く。


「さーせん」

俺は軽く謝りながらスマホをしまった。

 



残す授業はロングホームルームとなると、担任の先生が黒板に「校外学習」と書きつけた。


「んじゃ、お前らー、今回は1年最初のイベント、校外学習の班決めなどするぞー」

 先生が言うと教室内がざわつき始め、期待と不安が交錯する雰囲気が漂う。


「よし、じゃちゃちゃっとくじ行くか」

 先生が言いかけたその瞬間、クラスメイトの男子が立ち上がる。


「いや、今回は自由に決めさせてくれー」

すると、それに影響されるように周りのクラスメイトたちも賛同の声を上げ始めた。


「仕方ないなー、んじゃ自分達で決めろー。1班5人だからなー、溢れたやつは容赦なくくじだからな」

担任は仕方なく了承しクラスの中に緊張感と興奮が広がり、班をどう決めるか話し合いが始まる。


周りを見渡すと、友達同士が集まって話し込んでいる姿が見える。


「悟、班組もうぜー」

響が笑顔でやってくる。


「いいぞ、あと3人どうする?」


「椿芽が若狭誘うみたい」

響は少し嫌そうな顔をしながら教えてくれた。


「そうか……ならあと1人、心当たりがある」


「いるのか?」


俺は少し後ろの席にいた鈴木に声をかけた。


「鈴木、もし良かったら班組まない?」


「お、いいのかい?佐藤くん」

 鈴木は嬉しそうに答える。


「むしろこのクラスで数少ない親しい人はお前しかいない」


「そうか、それなら」

 

「なんだ、鈴木か。鈴木なら安心だ」

 響がやってくる。


「ふっ……神野くんか」


2人はグータッチして、なんだか楽しそうだ。

 

「お前ら、なんか仲良いな……」


「「同じ性癖の同士さ」」

 2人は口を揃えて返す。


「お、おう……」

なんかちょっとだけ関わりたくない気持ちになった。


その時、椿芽がやってきて、


「ひーくん、連れてきたよ―」

 若狭さんを連れてくる。


「佐藤はギリマシとして、神野に鈴木か……」


「朱音ちゃん、何か問題ありげ?」

椿芽はちょっと困惑したように聞く。


「変態三人衆じゃないか」


「俺を巻き込まないでくれ……」

俺は思わず呟いてしまった。



教室がざわめき、先生の一声でようやく落ち着く。


「お前らーちゃんと班組めたか?」先生が声を張り上げて確認する。すぐに教室のあちこちから「出来たー!」と元気な返事が返ってきた。


「よしよし、全員組めたみたいだね。それじゃ、班のままで集まって席座れー。校外学習の説明すっぞー」


それぞれの班が少しずつ移動しながら、まとまって席に座る。班が決まってほっとした空気が漂い、俺たちの班も自然と輪になった。響と椿芽が隣に座り、若狭さんは少しだけ距離を置くように隣に座る。鈴木も座る。

先生は黒板に大まかなスケジュールを書きながら、校外学習で訪れる場所や班ごとの役割分担について説明していく。次々と決まる行程に、みんな小さく「おお」とか「まじか」とか反応しながら、少しずつ気分が盛り上がってきているのがわかる。


「よし、それじゃ校外学習は来週だから、楽しみにしとけ!」

先生は話を終え、黒板に最後の大きな丸印をつけた。


「そんじゃ、今日のロングホームルーム終わりー」


その言葉とともに、教室はまたざわつき始める。みんなの顔には次週の校外学習への期待が表れている。


授業が終わり、帰り支度をしていると、響が声をかけてきた。


「悟、ゲーセン行こうぜ」


「おっけ行きますか」


気軽に返事をすると、近くで聞いていた椿芽が少し恨めしそうな顔をする。


「えー、2人でまた遊びに行くの?」


その顔に少し笑ってしまいそうになっていると、椿芽が急に元気よく言った。


「私も行く!朱音ちゃんも鈴木くんもどう?」


「すまない、僕は部活があるから」

鈴木は少し申し訳なさそうに謝った。


「わ、私はいい……」

朱音はためらいがちに断るけれど、椿芽は食い下がる。


「む、朱音ちゃん予定はあるのかい?」


「い、いや、そういう訳では……」


「よし、行こう!親睦を深めるのも大事だぜ」


「……あ、あう……」


俺がそれを見て響に小声で話しかける。


「勝手に話進めてんなー」


「そうだな……」

響は少し諦めたように肩をすくめる。



「よーし!では4人で行きますぞ!」

椿芽は元気いっぱいに手を上げる。


「鈴木くん、またねー!」


俺たちは4人で教室を出た。

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