第36話 財界パーティー

【JWホテル】


JWホテルのパーティー会場前に居る真彩と前田。


クラシック音楽が流れ、目の前を通る人々、皆、品がって優雅である。

上流階級のパーティーだと想像出来る。


真彩は、伯父が来るのを待っている。


前田「あのー、その伯父さんって、怖く無いですか?」


真彩「えっ? 何でそう思うの?」


前田「だって、この前、社長、その伯父さんの事を、関西経済界のドンみたいな人って言ってたから、何か怖い系の人かと思って……」


真彩「あぁ、そっか、変な言い方しちゃったね。伯父さん、とっても良い人だよ?! 私の事、凄く可愛がってくれて、私の突拍子もない考えも、いつも良いね!……って褒めてくれる優しい人」


前田「へーぇ……」


真彩「だから、伯父さんからも経済の事、教えて貰ってたの。困った時とか、考えがまとまらない時とか、伯父さんに電話してアドバイス貰ってるし……」


前田「そうなんですか……それは心強いですね」


真彩「うん。だから、伯父さんみたいな人がバックに居てくれるから、こうやって何とか社長してる訳。私一人なんて、絶対無理だから……私は、皆さんの支えによって生かされてる感じ」


前田「そっかー……」


真彩、突然、「あっ!」と言う。


そして、

真彩「伯父さーん!」

と言って、中村幸久(58歳)に手を振る真彩。


前田、直ぐに真彩から離れる。


幸久が真彩の前に来て、

幸久「おおーっ、マーちゃん、今日は一段と綺麗だね」

と言って、真彩のドレス姿を見て微笑む幸久。


真彩「もう、伯父さんはホント、リップサービス、上手いんだから!」


幸久「いやいや、リッサービスなんて言わないよ?! 伯父さん、そんな適当な事を言う人間じゃないって、知ってるだろ?」


真彩「あぁ……じゃー……有難う!」

と言うと、真彩、幸久に微笑む。


幸久も真彩を見て、優しく微笑む。

そして、真彩と幸久、腕を組み、会場に入って行く。



パーティー会場内は、既に大勢の財界人、著名人達が場を楽しんでいる。 

会場内にも上品な音楽が流れ、広い会場には、高級な食材を使った料理が並べられている。


会場に入ると、若い男性達が真彩に注目する。  

  

真彩「伯父さん、どうしたら良いの? 私、こんなパーティー初めてだから……」


幸久「前にシカゴで、お偉いさん方が沢山来た、企業イベントのコンパニオンしただろ?」


真彩「あぁ……うん……」


幸久「あんな感じで良いんだよ。あの時、マーちゃん、向いてるなって思ったから……」


真彩「えぇ?……」


幸久「偉いさんに媚びる事なく、おっちゃん達の自慢話とか下ネタも臆することなく対応して、マーちゃんと喋った連中、皆んな楽しそうだった。銀座のママより話術、上だと思ったよ?!」


すると真彩、首を傾げて、

真彩「えぇー……ホント???」

と言って、幸久を見る。


幸久「ホント。だから、あんな感じで楽しく会話して、相手を喜ばせたら良いんだから!」


真彩「喜ばせば良いんだね。分かったよ」  

と言って、真彩、幸久に微笑む。

  

真彩、幸久と腕を組み、笑顔で挨拶回りする。

真彩の所に、御曹司や若い社長が次から次へとやって来る。


真彩、笑顔を絶やさず、誰とでも楽しく会話する。

真彩を離れた所から見ている悠斗。


悠斗(心の声)「真彩の社交力、凄いなぁ……半端ない。流石だな。周りの連中、嬉しそうな顔しちゃって……クソッ……」


悠斗、真彩をじっと観察していると、悠斗の目の前に人気女優の立石エレナ(28歳)が現れる。


エレナ「こんにちは!」


レナ、笑顔で悠斗に挨拶する。


悠斗「あぁ、エレナさんお久しぶりです」


悠斗、会釈する。  

 

エレナ「久しぶりね。社長さんは???」


悠斗「あぁ、あそこにいます」


悠斗、智之が居る方を指差す。


エレナ、悠斗に気があるので、色々と悠斗に話し掛ける。


悠斗も、社交力があるので、エレナを喜ばす言葉を言い、エレナを持ち上げている。


そして、しばらくすると、エレナが悠斗に、

エレナ「人が多いから疲れるね……ねぇ、ちょっと下のお店に行きたいんだけど、付き合ってくれません?」

と言って、悠斗を誘う。


すると悠斗、

悠斗「あぁ、良いですよ」

と、言って、エレナをエスコートし、会場を出て行く。



【ホテル・通路】


通路にある休憩場所では、真彩が椅子に座り、片足を前田の方に差し出して、足の裏を揉んで貰っている。


真彩「あぁーそこそこ。効くー!」


前田「ここ、生殖器の所ですよ? ひょっとして、生理不順・不眠じゃないですか?」


真彩「あぁ、不眠は、社長引き受けてからずっと。生理不順は……あぁ、遅れてるなぁー……」


前田「えっ? まさか? あの、ひょっとして妊娠してないでしょうね?」


前田、笑いながら冗談で真彩に言う。


真彩「あぁ……してたらどうしようね? 前田さん、パパになってくれる?」

と言って、前田の顔を見て微笑む真彩。


前田「またー、もうホント、社長のジョークには困ったもんです。いっつもドキッとさせられるんだから……そうやって俺の心を揺さぶるの、止めて貰えませんか? 俺、本気にしちゃいますよ?!」


前田の言葉に真彩、微笑む。


真彩「えぇー、ダメ?」

と言って、甘ったれた声で前田に言う真彩。


真彩にとって前田は、既に兄ちゃん的な存在となっているので、ワガママを言える相手になっている。


前田もその事を分かっているが、前田としては、あわよくば、お兄ちゃんではなく、恋人の地位を望んでいる。


前田、急に、

前田「えっ、ひょっとして……」

と、言い出す。


真彩「んん?」

真彩、前田の顔を見る。


前田「あぁ……何でもないです」


真彩、前田を見ながら首を傾げる。


前田(心の声)「妊娠の相手は、あのカッコいい白人男性???」


真彩「?……ねぇ、何か変な想像してない?」

と言って、真彩、前田をじっと見る。


すると、

前田「あの、俺で良かったら喜んでパパになりますから! マジで!」

と、前田、ちょっと照れた感じで言う。


すると真彩、

真彩「えぇ? 子持ちでも良いの???」

と、前田の言葉に反応する。


前田「はい。自分の子として可愛がります!」


すると真彩、前田の言葉をスルーする。


真彩「あぁー、そこも効くー!」


真彩、痛そうにする。


前田「また適当に聞き流すんだから!……ここは胃です。まだ食欲無いんですか?」


真彩「あぁ……精神的なもんだろうね。こう見えて私、超繊細ちゃんなんだよね」

と言って、微笑む真彩。


前田「そんな事、とっくに分ってますよ!」


真彩「でも、前田さんもかなり繊細ちゃんだよね?」


前田「そうですよ。いつも人の目、気にして生きて来ましたから……」


真彩「じゃー、一緒だね……」


真彩、前田に微笑む。


前田、真面目な顔になる。


前田「あぁ、あのー、この後、もし良かったら俺の家に来ません? この前言ってたシーフードカレー、作りますから。材料、買ってあるんです」


前田、勇気を振り絞って、真彩を誘う。

断られるのを覚悟で、ダメ元で言ってみる。


すると、

真彩「あぁ、変わったスパイス入れるんだよね。食べたいなぁー……行く行く!」

と、軽いノリで返事をする真彩。


真彩の言葉に、前田、笑顔になる。


前田「えっ? ホントに?……やったー! 嬉しいッス!」


前田、大喜びする。



二人の横を、ゆっくり通り過ぎる悠斗とレナ。


悠斗は、真彩と同様に、聴力が人より長けている。


真彩達とは少し距離があったが、同じフロアでの会話は、意識を集中すると聴き取る事が出来る。


悠斗は、真彩と前田の会話を、ラジオの周波数を合わすかの様にし、聞き入っている。


それ故、悠斗の顔が強張っている。



【宝石店前】  


ホテルの下の階には宝飾店があり、その前を歩く悠斗とエレナ。


のんびりと、ウィンドウショッピングをしている二人。


悠斗「そろそろ会場に戻った方が良いんじゃないですか? エレナさんとお話したい人、沢山おられると思うので……」


エレナ「ふん……そうね。戻りましょうか……」


エレナ、不服そうな顔で悠斗に返事をする。



【パーティー会場】


悠斗とエレナ、賑やかなパーティー会場に戻る。


エレナと離れ、悠斗は、直ぐに真彩を探し始める。


すると、真彩、若い男性達に囲まれている。


楽しそうに会話している真彩。



【男子トイレ】


悠斗、男子トイレで用を足し終え、不動産会社・社長の内田雄介(29歳)と洗面台の所で手を洗いながら話している。


悠斗「で、誰ですか? 一目惚れした人って」


内田「あぁ、ハーモニー社の中村真彩さんです。もう、可愛くて、ハート射抜かれました」


悠斗「えっ?……そうなんですか……」


悠斗、顔が引き攣る。


しかし、内田は、嬉しそうな顔で、

内田「その辺の女優さんより魅力的ですよ。LINEで友達になったんで、早速デートに誘うつもりです」


すると、悠斗、咄嗟に、

悠斗「あぁ、でもあの人、恋人いるって言ってましたよ?!」

と言うと、

内田「えっ? さっき話した時、今、フリーだって仰ってましたよ?」

と、内田が嬉しそうに言う。


内田の言葉に、悠斗、顔が強張る。

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