第30話 真彩、倒れる

【ハーモニー社・大会議室】


朝から、大会議室で役員達を前に、また新たな改革案をプレゼンする真彩。

役員達と質疑応答で遣り合っている。


真彩の考えがぶっ飛んでいるせいか、年齢のいっている役員達は付いていけない状態。

半数以上の者が、真彩の言う事を理解していない。


ホームページ、スマホを駆使し、最先端の遣り方をと、言葉優しく、一所懸命説明している真彩。

しかし、最近の流行りの横文字に理解出来ていない役員達。

出鼻をくじかれている状態。




【社長室】


真彩、疲れた様子で社長室に入る。

そんな真彩を心配しながら、後に続き、社長室に入る優衣。


真彩「あぁー……疲れた……おっちゃん達、ここまで分かってないとは……」


真彩、応接ソファに座る。


優衣「ですね。もっと勉強して貰わないと……横文字の単語の意味も解って無かったから、ビックリです」


真彩「IT用語、もうちょっと知って貰いたいです。テレビのニュースでも使われるんだから。あぁ、と言って、人を責めちゃーダメですね……すいません……」


優衣「いや、責めたくなりますよ」


真彩、ソファから立ち上がろうとする。

しかし、目が回って、三半規管がおかしい状態。

フラフラしている真彩。

優衣、直ぐに真彩の体を支える。


優衣「大丈夫ですか? 社長」

と、真彩に声掛けする優衣。


真彩「あぁ……頭使い過ぎたみたい。頭痛くて……あと、生理痛でさぁー、お腹と腰も痛くて……」

と言うと、真彩、ソファーに倒れ込む。


優衣「わぁ……救急車呼びましょうか?」


真彩「呼ばないで! 単なる生理痛と頭痛だけなんだから。そんな事で救急車呼ぶなんて、ダメだよ」


優衣「あぁ……分りました……」


真彩、意識を失い、喋らなくなる。


優衣「えっ? 社長?……社長!……」


優衣、慌ててスマホをポケットから取り出し、操作する。

そして、履歴の最初に出て来る電話の相手と話をする。

相手は、直ぐに電話に出た。


優衣「ごめんね、お仕事中に……」


優衣、電話の相手に申し訳なさそうに言う。


優衣「マーちゃん、倒れちゃったの。救急車呼んじゃ―ダメって言うから、呼んでないんだけど……」


電話の相手が、真彩の症状を聞いている。


優衣「うん。頭痛と生理痛。今、意識無くなったところ。いつもの熱性けいれんだから大丈夫だとは思うんだけど……」


そして、電話の相手が、真彩を迎えに来る事となる。


優衣「うん……うん……はい、宜しくお願いします」


優衣、電話を切る。

優衣、真彩を見ながら、不敵な笑みを浮かべる。




【MZC社・営業部】


通話を終え、スマホの電源を切る悠斗。

急いで帰る用意をし、同僚に事情を言って、走り出す。




【ハーモニー社・社長室】


社長室のドアをノックする音に反応し、直ぐにドアを開けに行く優衣。


優衣「悠ちゃん、ゴメンね!」


悠斗「いやいや、電話、有難う!」

と言って、赤い顔をして、社長室に入って来る悠斗。


息が荒く、「はぁはぁ」言っている。


悠斗「で、どんな感じ?」


優衣「あぁ、あの後、直ぐに意識戻って、鎮痛剤飲ませたんだけど、起きれる様な状態じゃなくて、お腹と腰も痛いって言って、また寝ちゃった」


悠斗「そっか……」


優衣「会議が白熱して長引いたから、鎮痛剤飲むのが遅くなって……私がもっと気を付けるべきだった……」


悠斗「いやいや、そんな事、思わなくて良いよ。真彩が自己管理出来て無かったんだから」


優衣「でも、私、秘書なのに……」


悠斗「秘書だからって、もう、そんな事、気にしない、気にしない」


優衣「……」


悠斗「あぁ、ねぇ、車、入口につけたから。悪いんだけど、優衣ちゃん、真彩の鞄、持ってくれる? で、ドアも開けてくれる?」


優衣「分かった」


そして悠斗、寝ている真彩に話し掛ける。


悠斗「真彩、家に帰るぞ?!」


悠斗の言葉に、真彩、薄っすらと目を開ける。


真彩「えぇ?……未だ仕事が……」


呂律が回らず、朦朧とした感じで言う真彩。


悠斗「この体で無理だろ?」


真彩、悠斗を虚ろな目で見る。

そして悠斗、真彩をお姫様抱っこする。


悠斗「ちゃんと俺に摑まってんだぞ!」


真彩「……はい……」


朦朧としながら、小さい声で、頼りない返事をする真彩。




【ハーモニー社・通路】    


真彩をお姫様抱っこして、廊下を歩いている悠斗。

その後ろには優衣がいて、真彩の鞄を持っている。


エレベータの前で、真彩、急に、

真彩「下して?! 恥ずかしいから。自分で歩くから!」

と言って、お姫様抱っこから逃れようとする真彩。


悠斗「そうか?…‥‥」

と言って、真彩をゆっくり下ろす悠斗。


しかし、真彩、立とうとすると、貧血で、眩暈がして、よろけてしまう。

悠斗が直ぐに真彩を抱き寄せ、支える。




【エントランス】


真彩がお姫様抱っこされている、その様子を、エントランスに居る社員達が見て驚いている。


陰口を言う社員達。


社員①「やっぱり、体、弱っちいっていう噂は本当だったんだな……」


社員②「あぁ。キャシャな体してるしな……この会社、前途多難だな……社長があんなんじゃなぁ……」




【エントランス前・駐車スペース】


エントランス前の駐車スペースに停めてある悠斗の車に、真彩を乗せる悠斗。

優衣、悠斗に頭を下げ、車が見えなくなるまで見送る。




【高槻レオマンション・806号室】


真彩を立たせて、悠斗、ポケットから鍵を取り出し、二人、玄関に入る。


一旦、真彩を廊下に座らせ、靴を脱がす。

悠斗も靴を脱ぎ、背負っていた真彩の鞄を廊下に置く。


悠斗、簡単に真彩をお姫様抱っこして、真彩の部屋に行き、ベッドに寝かす。

その間、真彩は意識が朦朧としている。


真彩の場合、一度、熱性けいれんを起こすと、脳細胞に損傷が生じる為、一週間程度、頭が朦朧とした状態になる。

それ故、脳外科医からは、早めに薬を飲む様に言われていたのだった。


真彩「……有難う……ごめんね……」

と、素直に悠斗に言うと、真彩、安心してか、目を瞑り、眠りにつく。


悠斗「真彩、着替えないと……」

   

しかし、真彩、寝てしまい、悠斗が体を少し揺すっても返事がない。

寝息を立て、深い眠りに陥っている真彩。


悠斗「しょうがないなぁー……」

と言いつつ、悠斗、微笑み、嬉しそうな顔をする。


そして、真彩の顔をジーッと見詰める悠斗。


悠斗(心の声)「やっぱり真彩は可愛いなぁ……ずーっと見ていたい……」


真彩のおでこにキスをし、そして、唇にもキスをする悠斗。

頬をすりすりし、真彩の首に強く、キスマークを付ける悠斗。


悠斗(心の声)「ヤバッ……真彩を襲う大チャンスじゃん!……いやいや、病人を襲うなんてダメだろ、下種野郎だろ! 悠斗、気持ち、抑えろ!」


悠斗、興奮している自分の心を鎮めるのに必死な状態。

悠斗、独りで葛藤している。

しかし、ニヤッとする悠斗。

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