第5話 真彩、セクハラ?

【ハーモニー社・営業部 廊下】


営業部前の廊下を、前田と杉山、会話しながら歩いている。

すると、前から、真彩と優衣がタブレットPCを見て、会話しながら歩いて来る。


前田と杉山、社長である真彩に会釈する。

すれ違った後、真彩、振り向いて、前田に声を掛ける。


真彩「前田さん、体調、大丈夫ですか?」


前田、真彩の突然の質問に、驚いた顔をする。


前田「えっ?……あぁ、はい、大丈夫です……」


真彩「そうですか?……」


真彩、また歩き出す。


優衣、不思議そうな顔をして真彩を見る。


真彩と優衣の姿が見えなくなってから、杉山、直ぐに前田に話し掛ける。


杉山「ビックリしたなぁー」


前田「はい。ビックリしました。突然……て言うか、名前呼ばれたのでビックリです。いち社員の名前、覚えてくれてるなんて……」


杉山「社長って、マスク取ったら良い女だよな。あの目でじっと見詰められたら、俺、ヤバイわ……何か、魅力あるよな!」


前田(心の声)「あぁ、でも、パワハラ社長だからなぁ……俺、怖い女性、無理……」



【営業部1課】

   

デスクで仕事をしている前田と杉山。


社内アナウンスが流れる前に流れる音。

『ピンポンパンポン……』


(女性の声)「営業部の前田さん、社長室にお越し下さい。営業部の前田さん、社長室にお越し下さい」


前田、突然のアナウンスに驚き、背筋が伸びる。


前田「えっ……何で? 俺、何かしましたっけ???」

と言って杉山を見る前田。


前田、顔が引き攣り、びびっている。

パワハラを受けるのではないかと、不安な前田。


前田「何か、メチャ怖いんですけど……」

と言って、杉山に助けを求める前田。


杉山「(関西弁で)よー分からんけど、はよ行って来い!」


前田(心の声)「えぇー……パワハラ社長、怖いよー、行きたくねぇーよー」


前田、緊張が増し、顔色が悪くなる。



【社長室】


社長室をノックする前田。


社長室から真彩の声。

真彩「はい、どうぞー」  

 

前田「失礼します」

と言って、恐る恐る部屋に入る前田。


前田、緊張度がMAXとなり、少し胃が痛くなる。


真彩は自分のデスクの所で誰かと電話中だった。


真彩「Are you kidding?」

と言って、電話の相手と楽しく話しながら、前田にジェスチャーで、ソファに座る様に促す。


真彩「What do you mean ? Oh……I see」


真彩、眉間に皺が寄る。


真彩「……Hang in there ! I know you can do it !」


真彩、目を閉じる。


真彩「……OK. See you」  

 

そして、電話を切る真彩。


真彩、前田の顔を見て、

真彩「すいません、お待たせして。お聞きしたい事がありまして……あぁ、その前にワイシャツ脱いで下さい」

と言って、微笑む真彩。


前田、真彩の言葉に驚き、思わず

前田「えっ? 何でですか???」

と言って、警戒する前田。


真彩「上から二つ目のボタン、取れかかってるんで。時間無いんで早く脱いで下さい!」


前田、真彩の言葉に拍子抜けして、直ぐに

前田「……あぁ……はい……」

と言って、急いでワイシャツを脱ぎ、真彩のデスクの所に持って行く。


真彩のデスクには、ソーイングセットが既に用意されていた。


真彩、糸が通った針を持ち、取れかかっているボタンを縫い付け様としている。


前田(心の声)「ふぅ……セクハラされるのかと思った……」


真彩の作業を、立ってじっと見ている前田。  


真彩「このあと取引先と打ち合わせでしょ?」


前田「えっ?……あぁ、はい……」


真彩「身だしなみは大事です。前田さんはこの会社の看板背負ってるんですから!……」  


すると頭を下げて、

前田「……すいません……」

と言って、真彩の心遣いに恐縮している前田。


真彩、手際よくボタンを縫い付けている。


しばらくして、真彩、笑顔で、   

真彩「はい、出来た!」

と言って、前田にワイシャツを渡す。


前田「早っ。有難うございます……」    

と言って、真彩からワイシャツを受け取り、急いで着ようとする前田。


すると、『トントン』と誰かが社長室のドアをノックする。


前田「えっ?……」


前田、焦る。

ワイシャツのボタンを慌ててはめる前田。


優衣「失礼します」

と言って、秘書の優衣が部屋に入って来る。


優衣に背中を向けて、焦りながらワイシャツのボタンをはめている前田。


その前田をちらっと見る優衣。


真彩(心の声)「あぁ、焦るな、焦るな、ボタン、上下、ズレてますがな……(笑)」


優衣、前田の事は気にせず、

優衣「社長、先程言ってた資料です」

と言って、真彩に紙媒体の資料を渡す。


真彩「有難うございます」    

と言って、真彩、優衣から資料を受け取る。


そして、優衣、直ぐに社長室を出て行く。

その際、チラッと前田を見る優衣。


前田、ボタンのズレを直し、ズボンにワイシャツを入れる。


前田「ふぅ……」

と、安堵の声が漏れる。


すると、

真彩「前田さん……」

と、真彩が前田に話し掛ける。


前田「はい!……」


前田、ドキッとして、背筋が伸びる。

そして、恐る恐る、真彩を見る。


真彩「お聞きしたい事はですね……」



【営業部1課】

   

営業部1課に、前田に戻って来る。

前田、明らかに泣いた様な顔をしている。


前田の様子が変なので、杉山と石川光、心配顔で前田を見る。


杉山「大丈夫か? 何やった?」


前田「大丈夫です。何でも無いです……」


と言うと、前田、自分の鞄に、作っていた資料を入れる。


杉山「いやそんな訳ないやろ。目赤いぞ?!」


前田「あぁ、今から打ち合わせなんで……」


前田、泣いた顔を皆に見せたくないので、下を向いている。


前田「行って来ます」

と言って、通路に向かう前田。


杉山「おぅ、行ってらっしゃい。もし何か悩みとか、困った事あったら言えよ!」


前田「……有難うございます……」


前田、杉山に会釈する。


杉山(心の声)「えぇー、社長に何かされた???」


光(心の声)「あれは絶対、社長に何かされたなぁー……」


杉山と光、顔を見合わす。


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