第34話 君のために僕ができることを
「――虐めるのはそれくらいにしませんか,
「えっ?」
声をした方を振り向くとそこには車いすに乗った銀髪の幼き少女――透き通った白い肌にアメジストのような瞳に優しい笑みを浮かべる人物がいた。
「り,
「お久しぶりですね,
銀髪の幼き少女――
「これは
「
車椅子に乗る少女の言葉に
「――本気で言っておられるので?他の京都六家はあの事件以降,
「それはあくまで大人達だけです。それに,あの2人はそんなしがらみなど気にせずに頻繁に会っていたと思いますが?」
ニコニコと微笑む少女に
「
「そうですね。お久しぶりです,
僕が頭を下げると
「
「ハルの交流って本当にどうなっているのよ!?
「ふふっ,実は2年ほど休学して今年に復学しましたから」
「休学!?復学!?」
まあ,驚いて当然というか――
要するに既に学園を卒業して大学に進学していてもおかしくない。
――ただ,これには理由があったりもする。
「
「え,ええ……何度かパーティーで会った時に話は聞いているけど」
「実は2年生になった時に症状が悪化してね。休学していたんだけど今年になって復学することになったんだ」
そして,彼女の休学と共に兄上も休学することを決意――その間の2年間は僕がいた訓練校にOBとして色々と指導をしてくれた。
あと,彼女が今回の協力を引き受けてくれたことには他にも理由があった。
「お話は
今回の件で
変わりに彼等が
――というか,
「私の病気が完治したのも
「あ,頭を上げてください,
「――なるほど,
「納得して頂けましたか?」
「ええ。では,その件も含めて話を詰めましょうか。ただし――」
「
「ど,どういうことですか!?」
理由が分からないのか
「今回の件,私は乗り気ではなかったのだよ。ただ,
「ですが――」
「
抗議する彼女を静止して僕は微笑んだ。
「任せてもらってもいいかな?必ず何とかするから」
「ハル……」
この件は誠央学園に関する話,自分が交渉の場に立たないことが不満,もしくは申し訳ないんだろう。
「
そう言って置いていたベルを鳴らすと女子生徒がやってきた。
「
「わかりました,部長。じゃあ,
僕の顔をもう一度見ると
「――
薄っすらと微笑む
「ああでも言わなければ彼女はこの場に残っていたと思うが?それに,ここからの話は込み入った話になる……しばらくの間,誰も近くには通さないでくれ」
「「
何処からか声が聞こえて来た男性達がそう言うと彼は紅茶に口を付けた。
「――何人ぐらいと契約をしたんですか?」
「3名だ。他の社交部の部員にも契約しているのが何人かはいる。流石に私と違って1名だけしか契約はしていないがな」
僕は肩をすくめた。
あの事件が原因で僕達の世代は極端に人数が少ない――おそらく社交部のメンバーと契約出来ているのは数名だけだろう。
それに,契約そのものを好まない人達も多いからなぁ。
「話がそれてしまったな。それでは,本題を話そうか――と言いたいが,既に私の考えは決まっている」
「本当に
「残念ながらそれはできない。
「まずはその話をする前に支援策について話し合うとしよう。私の考えでは――」
「――
「
「いえ,これなら彼等も納得しますし,
僕が気になっていたのは最後の部分……この支援策を作った理由だ。
「
僕のツッコミに
「人間とは壮大な物語ほど禍根や怨嗟よりも興味を示す。滅ぼされた某国の王子がその国を滅ぼした聖女と結ばれるみたいに浪漫があると思わないかね?」
言いたいことは分かる――でも,最近思うことなんだが……
「まあ,要は僕が目立つのを我慢すれば問題ないということでしょうか?」
「そういうことだ。理解してくれればこの件はそれで支援策を打とう」
「ありがとうございます。それと,
「お気になさらないでください。みっくんにもお願いされましたので」
微笑む彼女を見て後日でも兄上にお礼を言った方がいいだろうと考えた。
「では,この件は終わりとして――本題を話そうか」
重い口調で言う
「今回の誠央学園の全ての事件――ある人物が関わっていると私は考えている」
「ある人物?」
僕だけでなく
「
その言葉を聞き僕は椅子から立ち上がり抗議をした。
「!?ちょっと待ってください!その言い方って――」
「
立ち上がり抗議しようとする僕を静止すると
「関わるといってもおそらく
「捨てたって……」
「はっきりとは分からない。だから,私個人の考えだと言った。
予想の話だとはいえこんな話を
彼女を外したのはそういうことだったのか……。
「
「――私の感だ。だが,それを否定できないこともいくつかあるのも確かだ」
「…………」
黙り込んで考えた――それが事実なら今の
だが,それが真実なら何故父親は
もしかして,彼女にも言えない重要なことが隠されているのだろうか。
「むむむ……」
「
「……はい。
「そういうことだ。そして,おそらくその情報を入手するのは不可能だ」
「まあ,相手は
おまけに政財界の重臣達とも深い繋がりがある。
調べることは容易にはいかないだろう。
「まあ,
「それはもう覚悟の上ですよ」
「そうか――出来れば君には姫様を選んで欲しかったのだが……」
苦笑しながら言われて僕も同じように苦笑してしまった。
「では,
「わかりました。それでは,
「気にしなくてもいい。また,気軽に立ち寄ってくれ。今日は聞けなかったが小説の感想も語り合いたいからな」
「……
立ち去ろうとすると僕に
「今回のお話,
僕は少し考えた……何故,彼等を助けようと考えたのかと。
おそらくだが,彼等を助けることは次いでだったのだろう。
交流試合に
――美しい太陽のような彼女に悲しい顔は似合わない……。
「僕の彼女ですから助けるのは当たり前ですよ。ただ,敢えて言うなら――」
「敢えて言うなら?」
「
「いえ,十分です」
僕の答えに満足したのか微笑む理世先輩に頭を下げると僕は今度こそ待たせている彼女の下へ向かったのだった。
~ 第1節 君のために僕ができることを 完 ~
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